5月27日付
〈藪の中〉の水かけ論かと思っていたら、何と一転、どんでん返しで、〈空騒ぎ〉と分かった◆東電福島第一原発の海水注入を巡る「言った」「言わない」の話。実は「注入中断」自体がなかったのだという。注水は同原発所長の独断で継続していた◆この1週間、国会で、新聞で、テレビで、あれこれ論議されたのは一体何だったのか。関係者はすべてピエロ同然になった。こんな重大な問題を「冗談じゃない」と怒ったり、「開いた口がふさがらない」とあきれたりしている◆「でたらめ」委員長となじられた内閣府原子力安全委員会の「まだらめ」委員長も「私は何だったのか」と苦笑する始末。官邸の鼻息をうかがって注水を中断した時間まで発表していた東電本店も政府も形なし◆いわば反乱した原発所長の独断を「妥当な判断」と東電副社長が擁護しているのも奇妙な話だ。「最大限の透明性をもってすべての情報を国際社会に提供する」とサミットで菅首相◆こんな訂正続きでは、信じてもらえるとは思えない。
(2011年5月27日13時51分 読売新聞)
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