Saturday, May 28, 2011

26/05 編集手帳 人間の一生というのはだいたい八勝七敗か七勝八敗である

5月26日付

 作家の嵐山光三郎さんがある随筆に書いていた。〈人間の一生というのはだいたい八勝七敗か七勝八敗である。年をとるにしたがって、勝率五割に近づいていく〉と◆山あり谷ありの人生だから、そうかも知れない。もっとも、実際の土俵では同じ「勝率五割」近辺でも勝ち越しか負け越しか、星ひとつの差が美酒に酔わせもし、悔し涙を流させもする。いつもの場所ならば、である◆負け越しの美酒は異例だろう。先の技量審査場所で3勝4敗に終わった幕下の荒鷲、垣添両力士がそれぞれ新十両、再十両に昇進した。八百長問題で幕内、十両の計17人が土俵を去り、空席を埋めるための非常措置だが、「運も実力のうち」という。めず臆せず堂々と、胸を張って土俵を務めればいい◆「勝率五割」で思い出す都々逸がある。〈渡る世間は丁目と半目、善いと悪いは一つ置き〉(作・長谷川伸)。「悪い」ことの続いた相撲界である。7月の名古屋場所が開催されるならば、是が非でも「善い」場所に◆…と書きかけて、考える。丁半の都々逸は、賭け事の好きなお相撲さんには読まなかったことにしてもらおう。

(2011年5月26日01時24分 読売新聞)

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