2011年4月6日22時58分
枝野幸男官房長官が6日午後4時40分から行った記者会見の全文は次の通り。
【冒頭発言】
「本日午後、『被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム』の第2回会合が開催された。この会合に置いては、被災地等における安全、安心の確保対策が決定された。早急に被災地等における犯罪、震災に便乗した犯罪の予防取り締まり、避難所における防犯対策相談への対応、流言飛語への対応などを関係省庁が緊密に連携して推進することとした」
【避難指示】
――年間被曝(ひばく)限度量の引き上げについて、午前中の会見で「別次元の安全性を確保する」と語った。基準を幾つも設定するのか。
「若干、午前中の答えは問いとうまくかみ合ってなかったかもしれない。引き上げというよりも、今50ミリシーベルトからは避難をして下さいと。10ミリシーベルト以上になりそうなところは屋内退避をして下さいと。これがまさに緊急時の、突然大量の放射線物質が出る恐れがある時の退避の基準として、そういう意味では50ミリシーベルト以上になりそうなところはそこから避難して下さいというのが基準。それと、今20ミリという話がでているのは、むしろ一時的に大量の放射性物質が出るということについては50を基準でやっているが、しかし当該地域に長期にいることによる蓄積された、累積された放射線量についてどのあたりの線のところで安全性が確保されるのかについては、むしろ50に比べてより低い数値が必要ではないだろうかということでの検討で20というのが出てきた」
「で、1(ミリシーベルト)というのは原子力発電所等の平時における周辺においても、まさに安全性を非常に強く考慮したあるいは原子力発電所の安全確保のための非常に高いハードル、目標として1ミリシーベルトというのが置かれてこれまでもきているなかで、現実にそこで生活されているみなさんの健康への影響の可能性との関係で、どれくらいの線が安全性をしっかりと確保できる線なのかということについては、国際機関の最新の知見もあるので、今専門家のみなさんに最終的な詰めをしてもらっている」
――「1ミリシーベルト未満は安全だ」と国民にアナウンスしておきながら、その基準を変更すれば安全性の信頼が揺らぎかねない。
「むしろ意識としては、(年間被曝限度量ではなく)今50ミリシーベルトを超える放射線量になる可能性のあるところは避難して下さいという指示を出している。それを、20ミリシーベルトに蓄積された累計の放射線量になる可能性のあるところをどうしようかと検討しているところ。そういう意味では(基準値を)引き下げている。平時における原発の安全性について、高いハードルをかけるという意味での1ミリシーベルトという基準がある。そういう意味では、いくつもの基準があるなかで今この局面においてどの基準値が一番安全性の観点から、それぞれ実際に当該地域のみなさんはまさに生活の拠点であるところで生活したいという希望もある。しかし、安全性も確保しないとならない。そのなかで、どの線なら安全性が確保されるのかということを専門家のみなさんの知見を前提に調整しているということだ」
【汚染水放出】
――福島第一原発の汚染水を海洋放出している件だが、放出の判断が東電任せになったのではないか。
「東京電力からの申し出を踏まえ、まずは原子力安全・保安院、そして政府として原子力安全委員会にもおたずねして、そういう意味では原子力災害対策本部として一機関というか構成する原子力安全・保安院と、第三者機関だが広い意味では政府の原子力災害対策本部を事実上構成している安全委員会の専門家のみなさんの意見も踏まえて、政府として了としたということだ」
――放出の相談は東電からどの段階で政府に話があったのか。
「これは原子力安全・保安院と東電との話のなかで、政府にということでは一番最初にきているので、原子力安全・保安院の方におたずね頂ければ。私のところには原子力安全・保安院での検討、それから原子力安全委での検討を踏まえて、会見で報告する少し前ぐらいにこういうことで安全委員会も了としているということで報告があって、安全性というか相対的な安全性の観点から、やむを得ない措置であるということで了とした」
――海洋政策担当の大畠国土交通大臣に事前の連絡はあったのか。
「それは大畠大臣なりにお伺いして頂ければと思うが、事前の連絡が(鹿野)農水大臣になかったということは、海洋担当にもなかったと思う」
――東電や原子力安全・保安院の対応はどう見ているのか。
「これは東電、保安院にとどまらず、政府として私ももっと目配りをして関係機関に対しての連絡、あるいは相談についての確認をするべきであったと思っている」
【避難指示その2】
――確認だが、年間被曝限度量は現行の1ミリシーベルトを20ミリまで引き上げるという話ではない、ということでいいのか。
「まず一つは、何も今決まっているわけではない。ただ、私が午前の会見の時に、若干質問の意図とずれていたかもしれないが、言ったのは今50ミリシーベルトになりそうなところは避難して下さい、別のところにうつって下さいということで20キロ圏内の方には外に出て頂いている。50ミリシーベルトというひとつの、短い期間で大量の放射性物質が出る場合の基準がある。それにもとづいて50ミリシーベルトを超える可能性のあった地域、20キロ圏内のみなさんには大変ご不便をおかけしているが、外に出て頂いている状況だ。今、さらに問題になっているのは、一時的に50ミリシーベルトのような大きな放射性物質が出る可能性があるわけではないが、ジワジワと累積された放射線量が高まっている地域があって、こうしたみなさんの安全性をどうやって確保していくのかということが、大きな課題の一つになっている。そのなかで、この場合に、一時的に大量の放射性物質が出ることの場合の安全基準としての50ミリシーベルトと同じでいいのかといえば、違う考え方もある。あるいは、国際機関でもより最新の考え方、知見もある。専門家のみなさんに、そうしたケースについてはどういった基準で、例えば退避、避難をして頂くことをすべきかということを検討頂いている」
――累積で20ミリシーベルトを超えた場合、避難地域を拡大する方向で検討しているということか。
「まず具体的な数字自体が固まっているわけではない。様々な専門家、安全委員会と保安院のみなさん中心に、さらにはそれ以外の放医研(放射線医学総合研究所)の先生などにも意見を頂いて安全性の技術的な面での相談というか検討をして頂いているところ。確定的にどの数字でどうしようかということが今決まっているわけではない。ただ、そうした検討をしていると。そうした検討のなかに、確かに20という話も出てきているので、今朝ほどのおたずねはそういうことなのかなということで答えた」
【海洋汚染】
――魚介類の安全について、消費者団体などは「市場に出回っているものがすべて安心だと認識するために政府としてより網羅的な態勢で観測をやって欲しい」と訴えている。
「サンプリングポイントについては、この間も順次流出がされているという段階から順次拡大をしてきている。さらに、昨日も2カ所サンプリングポイントを追加するということを、文部科学省の方で実施している。さらには、近隣の周辺のかなり詳細な、より具体的な海流等の流れ等を把握して頂くための観測ブイの投入等も文科省というか海洋研究開発機構において観測をし、それの拡散帰着予測を進めることにも着手している。さらに、これは海産物に限らないが、できるだけの能力、その分析の能力を最大限活用し、できるだけ多くの農産物、海産物について、計測して安全性を確認するための、これは最大限の努力を進めているところだ」
――海産物そのもののチェックについては、引き続き漁協がやるというシステムなのか。
「具体的には農林水産省と文部科学省でご相談頂き、どういうやり方が最も効果的で、安全性を確認できるのかということについては詰めながらやって頂いている」
【避難指示その3】
――福島県飯舘村が乳幼児と保護者を、政府の避難指示とは別に独自に避難させる方針を決めた。
「まず、先ほど答えた通り一瞬で大量の放射性物質が出るというケースではなくて、長期間にわたって放射性物質が一定程度出る、それが累積されて健康への影響の可能性を判断しないとならない。こういう事態、状況に現時点でなっている。それについての対応は、いま鋭意専門家のみなさんにも入って頂き、検討分析をしているところ。こうした専門家のみなさんのご意見も踏まえ、今のところ1日、2日で出ないとならないという状況にあるわけではない、という前提の上で今できるだけ詳細な分析をしている状況だ。ただ、当該可能性のある地域のみなさんにとっては、大変不安なことだろうという風に思うので、自治体の独自の判断として、そうした判断をされた自治体があるということは大変そうした意味では大変申し訳ない。出来るだけ早く、政府として保安院や安全委含めて専門家のみなさんの、国内の英知を結集した形で、ここまではご苦労ご不便をおかけする。ここからはこういうことで安全ですということについて、明確な姿勢、指針をだしていきたい。そうしたなかで、年齢等による線を引くのか引かないのかについては、これ専門的にいま検討して頂いている。具体的に、何らかの方向性がでているわけではない。そのこと含めて、それが必要かどうかも含めて、できるだけ早く結論をだしたいと思う」
――こうした自治体に対して政府は何らかの支援はするのか。
「すでに屋内退避地域が避難を希望する場合について、早い段階から特に病院などの患者などについては対応してきたところから始まって、当然のことながら周辺地域の市町村に対する支援として、自主的な判断で避難する皆さんの受け入れとか生活支援について政府として村と相談して適切に対応したい」
【海洋汚染その2】
――政府の海洋汚染に対する危機感は薄かったのではないか。
「観測ブイの投入は昨日決めて実施に入った。まさに流出させるという判断と前後して行っている。むしろ、反省すべきは東電と保安院の調整の始まった早い段階から、こうなる可能性があるということで政府内の関係部局が想定した準備を進めておけば判断がなされた段階で速やかな対応ができたのではないんだろうか。その場合には、説明もより丁寧な説明もできたのではないだろうかということで、決定する前の段階から、準備に入るということが必要だったのではというのは反省している。海洋汚染に対する危機感はむしろ危機感が強かったからこそ、出来るだけ早く、昨日のようなことが必要であるならば、実行にうつすべきであるという判断が全体にあった。つまり、この間、どこから漏れているのか分からない、今回流出させることになったものと比べれば27万倍、高い濃度の水が現に漏れ続けていた。何とかこれを食い止めなければならないし、これを長期にわたって続けることのないようにしなければならないという緊急性のある深刻な状況を踏まえて、たまり水をどこかにキープして海に流れないようにしなければならないということが緊急性が高かったということがあったから、そこに向けた、もしそういった水が今朝ほど止まったとしても、いずれこのままいけば、いろんなところにたまっている水があふれて海に出てしまうことになる。そうなってしまってから慌てて水を抜いてということで後手に回る。そういったことにならないように非常により高度の水をキープする場所を確保するということを急がないと、ここまで流れ続けてきた高い水が流れ続けることになりかねないという強い危機感があったから、逆に丁寧な手順を怠ってしまったと反省している」
【原発被害補償】
――法に基づかない自治体独自の判断でも、政府から指示を受けている自治体と同様の補償は受けられるのか。
「これについては当然のことながら、原発事故に起因して取らざるを得なかった措置であるならば、もちろん国の避難指示あるいは屋内退避の指示があったところは当然だが、例えば、いま屋内退避区域の方で外に避難している方もそうだし、今回の飯舘村の判断もそうだが、原発に起因してやむなく対応したことに対する損害に当然含まれる。当然の事ながら、東電による補償や政府としての支援の当然の対象になる」
【電力制限】
――政府として企業側に求めたい節電の具体例はあるのか。
「まずは政府としては、第一にはそれぞれの自主的な判断、相談の中で、それぞれの事業、業種に応じて、一番事業に影響を与えない形での節電の工夫をしてもらうことが最優先だ。節電のお願いはせざるを得ない状況だが、そのことによる様々な影響、特に産業経済に与える影響を小さくするためには、それぞれの企業あるいは業界の中で、一番合理的というか影響の少ないやり方をそれぞれ判断してもらうことが一番重要だ。それぞれの事業の種類ごとによって、事業所の立場、状況によって、いろんなやり方があって、むしろ政府からこういうやり方がある、ああいうやり方があるといって押しつけのような形でやるよりも、それぞれの一番やりやすいやり方の中で協力いただきたいということで、まずはそういったお願いをしていくということが一義的に先行して行われるべきだ」
【原発事故対応】
――福島第一原発で、原子炉に対する「石棺化」の検討状況は?
「原発の状況を収束させるための手段については、複数の手段を同時並行で検討するとともに、同時並行で準備を始めている。それについてどれぐらいの可能性かということを数字で申し上げるのは逆に無責任である。いまあらゆる方法を同時並行で検討と準備を進めながら、最も迅速かつ効果的な方法をある段階で選択するということになる」
【汚染水放出その2】
――汚染水放出の現場からのアイデアは、実施以前の4月3日よりも前に官邸側に伝えられたことはないということでいいのか。
「官邸のすべての方について把握しているわけでないが、私はそうであったので、いま思うとその時点で関係省庁、あるいは関係各国との事前の相談とか報告とかの手配がどうなっているのかというようなことを私が指示すべきだったと反省している」
【原子力安全委】
――原子力安全委員会の顔が見えないなどの批判が出ている。十分機能しているのか。
「今回の事故については事態がある程度収束すれば、その時点で第三者的に客観的に様々に検証してもらい問題点あれば改善するべくしてもらいたいと思っている。ただ、安全委員会が外から見えにくいことについては、この間特に、事故発生当初は、まさに日々というよりも分単位で状況が変化する中での対応だった。安全委員会の専門家にある意味では情報の共有と分析を同時並行で保安院などともしてもらい、意見をもらうというオペレーションが数日、あるいは1週間程度続いていた。逆にその間、安全委員会としての動きという形で見えなかったのはある意味当然だろう。事態がある程度落ち着いて、時間単位とか半日単位とかという段階になったら、安全委員会としての独立した見解をその都度出してもらうことになっている。その上で、今回の対応が100点満点だったのかどうかということについては事後的に第三者に政府も含めて検証いただく必要がある」
【汚染水放出その3】
――海への放出について(政府・東電の対策)統合本部にいる細野首相補佐官には情報が上がっていなかったのか。
「その点については確認はしていないが、これも確認して、その点の共有については万全を期さなければいけない」
【公務員制度】
――公務員人件費5%削減の報道について、民主党の岡田幹事長が完全否定したが、政府として検討しているのか。
「いま少なくとも私の所に報告が上がるようなレベルではない。把握していない」
【日米2プラス2】
――2プラス2の開催時期を遅らせる可能性はあるのか。開催場所は東京を検討しているのか。
「いま日米間の事務レベルで、震災もあったので、そのことも踏まえてどうするべきなのか、どうできるのかということについては実務レベルでの話は始めているが、何らかの政治判断をしているわけではない」
――総理訪米に震災の影響はあるのか。
「これについても、震災前の予定は予定としてあるが、変更するなどの決断、判断をしているわけではない」
【復興構想会議】
――復興構想会議のメンバーなど進み具合は?
「申し訳ないが人事についてのことなので、当日発表する段階で発表する」
――福島は原発を抱え、他県と事情が違う。別の会議体ということも考えているのか。
「福島については原発事故による影響と復興については、時期もそうだが、様々な意味で他の被災地とは異なった事情がある。従って、もちろん福島県内でも原発とは関係ない復興の部分があるし、広い意味では、今回の復興会議においても原発の事故ということも一定の考慮には入っていくんだろうと思うが、ただ、この原発被害地の復興ということについては、何らかの形でしっかりと対応できるような態勢を考えなければならない。つくらなければならない。具体的にどういう作り方をするかというのはいま詰めている」
【普天間問題】
――長官は「震災前後ではあらゆる問題について変わってくる」と指摘していたが、普天間問題についてもそうなのか。
「私が言った通り、あらゆる問題について震災の前と後で前提となっている社会状況が大きく変わっている。だからといって、あらゆることが震災の前のことが全部かわるわけではない。震災の前と後で同じものもかなりたくさんある。ただし前提となっている社会状況が大きくかわってるということについては、あらゆることについて当てはまる」
――普天間問題について再検証する考えはあるか。
「今の時点で、そういったことを考えているわけではない」
【首相質疑】
――総理には記者団のぶら下がり取材に応じる考えが全くないのではないか。総理に、再開する気持ちはあるのか。
「私からは、できるだけ震災対応などに影響を及ぼさない範囲で国民に総理から直接様々な総理から発すべきメッセージを発されることが望ましいと思いますということは申し上げている」
――総理の考えは?
「それについて別に返事をもらっているわけではない」
【細野氏発言】
――細野首相補佐官がテレビで原発収束の見通しを「数カ月」と語ったが、本来は総理や長官が言うべきことではないか。
「番組は見ていないが、起こしたものを拝見し、会見でも言ったが、細野補佐官の元でいくつかの選択肢のオペレーションをみてもらっている。その中のある一番オーソドックスと思われるようなオペレーションでうまくいった場合にはこういう見通しだという趣旨で言ったと思っている。その限りでは一種技術的な説明をした。ただ、全体として、ほかの選択肢でより早くできる可能性はないのかとか、あるいはより安全なやり方でより時間がかかるケースを選択することはないのかとか、そういったことを含めて、現時点で具体的にではいつ頃収束させることができるのかという目標を設定できている状況ではない。そこのところを若干、誤解を招くような発言ぶりであったという点については本人にも留意するよう申し上げた」
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