2011年4月11日21時41分
枝野幸男官房長官の11日午後4時10分の記者会見の内容は、次の通り。
【新たな避難区域設定】
「本日は、震災発生から1カ月ということで、この後午後6時前から総理によるみなさんへの発表と記者会見があるが、それに先だって2点重要な、みなさんの関心の高い件について報告したい」
「まずは、原子力発電所周辺地域の避難のあり方の見直しについて。この間、周辺地域の放射線量などに関する情報が順次積み重なってきた。そうしたデータの分析に基づいて、周辺地域の避難について新たな決定をしたところだ。なお、当該地域のみなさんにあらかじめ申し上げたいが、今回の方針の決定は今すぐに緊急の避難行動をお願いするものではない。長期にわたって周辺地域におられることの健康上のリスクを考えて方針を固めたものである。現在、福島県および関係する市町村と具体的な相談をしており、具体的にどういう段取りでどういう対応をとって頂くのかについては、安全性を前提としつつ地域の事情を踏まえ、自治体のみなさんとのご相談に基づいて具体的に住民のみなさんにご指示をお願いするので、そのことをあらかじめ申し上げたい」
「まず『計画的避難区域』を新たに設定することとする。これは半径20キロより外側の区域のなかで、気象条件や地理的条件によって発電所から放出された放射性物質の累積が局所的に高くなっている、積算の放射線量が高くなっている地域がある。こうした地域に半年、1年と居住を続けた場合には、積算の放射線量がさらに高水準になる恐れがある」
「そこでこうした地域を新たに『計画的避難区域』とする。その基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)の緊急時被曝(ひばく)状況における放射線防護の基準値、年間20~100ミリシーベルトという基準値を考慮して、事故発生から1年以内に積算放射線量が20ミリシーベルトに達する恐れがある、こうした地域を指定をしたいと考えている」
「具体的には福島第一原子力発電所から20キロメートル以上離れた地域のうち葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部、南相馬市の一部が該当する。この区域の住民のみなさんには大変なご苦労をかけるが、別の場所に計画的に避難してもらうことが求められる。計画避難は、おおむね1カ月をメドに実行されることが望ましいと考えるが、最初に言った通り、当該市町村と福島県と密接な連携をとって、できるだけ混乱などの少ないような段取り、やり方を今それぞれの自治体ごとに詰めさせて頂いているので、そうした自治体のみなさんとの調整を踏まえたご指示をお願いするので、いますぐ直ちに行動にうつる必要はないことをご理解下さい」
「次に、現在『屋内退避区域』となっている半径20から30キロメートルの区域について、そのうち、ただいまの『計画的避難区域』に該当しない地域について。発電所の事故の状況が、まだ最終的に安定をしているものではない。最初の数日間あるいは1週間程度の状況と比べては、相対的には安定の方向に向かっていると思うが、今後なお状況が悪化をする可能性については否定できない。その際には、緊急的に屋内に退避頂いたり、あるいは避難をしてもらうことが求められる可能性が否定できない状況にある」
「従って現在の『屋内退避区域』のうち、先ほどの『計画的避難地域』に該当しない区域については、『緊急時避難準備区域』とする。具体的には、福島第一原子力発電所から20キロ以上30キロメートル以内の広野町、楢葉町、川内村、そして田村市の一部、南相馬市の一部が該当する」
「この区域のみなさんには、常に緊急事態が生じた時には屋内に退避をしたり、避難してもらうその準備をしておいて頂くことが必要だ。従って特にお子さん、妊婦さん、要介護者、入院患者の方などはこの区域に入らないようにすることが引き続き求められる。また原則的には、緊急の事態が生じた場合には、屋内退避そして自力での避難が出来るようにされることが求められる。そうした意味では緊急時において、自力での避難などが困難であるなどの状況をお持ちのみなさんにはぜひあらかじめ避難をされることが望ましい。こういった状況は変わっていない」
「なお、こうした地域から避難をされているみなさんについても、避難指示などに基づいて避難をされているみなさん同様の政府としての支援、あるいは将来の補償の対象になるのだということは念のため申し上げたい。大変ご苦労おかけするが、当該地域では保育所、幼稚園、小中学校および高校は休園、休校してもらうことになる。勤務などのやむを得ない用務を果たすために区域内に入ることは妨げられないが、先ほど言った通りその場合も緊急の際は屋内退避、さらには自力での避難ができるようにされたうえで立ち入られるようお願いしたい。この区域における対応についても、当該市町村、福島県および国の密接な連携をとって、その具体的な段取りなどについて改めてそれぞれの地域ごとにご指示、ご連絡をするので、今の段階ではそうした指示が出るまでの間、新たな行動をとるよりもその指示をお待ち頂きたいと思う」
「なお、この計画的避難区域および緊急時避難準備区域の設定のありかたについては、発電所からの放射性物質の放出が基本的に管理下における状況になったと判断される時点で見直しを行う。また、それまでの間も当該区域におけるモニタリングをさらに強化し、それらを集約分析を続けることで見直しなどの検討に資するものとしてまいる」
「詳細はこの後、福山官房副長官からブリーフして、記者のみなさんに詳細をご説明する」
【復興構想会議】
「もう一つ。本日午後、持ち回り閣議によって、東日本大震災復興構想会議の開催について、閣議決定をしたので報告をする。未曽有の大災害である東日本大震災を受け、この国難といってもいい状況から復興を目指すのは並大抵なものではない。しかしながら被災地の方々だけでなく、オールジャパンで力を合わせてねばり強く取り組むならば、必ずや克服できる課題であると考えている」
「そのために、それぞれの地域で住民の皆さんのご意見をふまえながら具体的な復興計画を策定していくことと並行して、被災者の方々が希望を持ち、国民全体で共有できる大きなビジョンを描くことが極めて重要であると考えている。この大きなビジョンを描いて頂くために、有識者からなる復興構想会議を立ち上げることはすでに総理から発表しているが、この会議では、従来の枠にとらわれず、歴史的評価にも耐えうるような大胆かつ骨太の復興ビジョンをつくってもらいたいと考えている」
「このような会議の性格から、会議の人選にあたっては、被災地である東北地方ゆかりの方を軸に全国からの英知を結集する。災害復旧・復興への熱い思いと連帯感をお持ち頂ける。情報発信力に秀で、専門領域の中から新しい日本を見据えられる。この3点を特に重視して人選を行った。委員の方が15人、特別顧問が1人となる」
「このうち、議長は五百旗頭真さんにお願いする。ご承知の通り、我が国を代表する政治学者であり、また、阪神淡路大震災の復興を後押しし、現在も『ひょうご震災記念21世紀研究機構』副理事長として21世紀の新しい街づくりなどの研究活動をリードされている。こうした経験を生かしてぜひに、とお願いしたところだ。また、同じく阪神淡路大震災の復興に尽くされた世界的な建築家である安藤忠雄さん、政治学者で関東大震災、阪神淡路大震災からの復興の過程に関する研究もなされている御厨貴さんに議長の補佐をお願いすることとした」
「このほか、お手元の通り、各界の著名な方、被災自治体の首長のみなさん、あるいは東北学の第一人者のみなさん、あるいは東北の水産業などについて取材・調査をこの間積み重ねてきたみなさん、東北の被災地の地域事情に詳しい方と、まさにオールジャパンの専門家、有識者を網羅したメンバーになっている。さらに哲学者の梅原猛さんに特別顧問となって頂き、節目節目で大所高所からのアドバイスをお願いする予定だ」
「なお、さらにこれらの方々では広範な地域が大規模に被災した今回の震災からの復興については全ての分野をカバー出来ていないことから、各分野について、さらに専門的な視点から掘り下げた検討をおこなっていただくために、気鋭の学者の方々などからなる検討部会を置き、専門的かつ多角的な検討をお願いしたいと思っている。メンバーはお手元の通り19人お願いしているが、今後、場合によっては議論の途中でさらに加わっていただくことも可能性としては想定している」
「復興構想会議は今月中にとりまとめる予定の復興基本法案のなかで法令上位置づけることを考えているが、それまでの間はこの閣議決定に基づき開催することとする。第1回会合は今月14日午後2時から総理大臣官邸で開催することを予定している。復旧の段階から単なる復旧にとどまらず、将来を見据えた創造的復興を目指していきたいと考えている。復興構想についてはできるだけ早急に示して頂く必要があるので、夏ころまでには、できれば6月末をメドに基本的な提言をまとめてもらいたいと考えている。政府としては会議からいただく提言を受けて、速やかに復興基本方針に反映させ、一丸となって復興に取り組んでいく」
「なお、福島第一原子力発電所、および第二原子力発電所の事故により、被災している地域の復興に関しては、事故の推移も見つつ、その状況を踏まえながら、改めて別途集中的に検討する体制を予定をしている。この復興構想会議はお手元の通り、佐々木官房副長官補を室長とする『被災地復興に関する法案など準備室』が事務局を担当する。人選などの詳細については、内閣総務官室に問い合わせてください」
【原子力経済被害担当相の新設】
「さらにもう1点。原子力発電所事故による経済被害対応本部の設置について申し上げる。先ほど開催された原子力災害対策本部で菅総理より、本日付で政府一体となって原発事故による経済被害についての対応の枠組みの検討などを行うため、原子力発電所事故による経済被害対応本部を設置する旨の方針が示された。本部長は内閣の担当大臣として、原子力経済被害担当大臣を置き、先ほど総理より海江田経済産業大臣に辞令が交付されたところだ。本部の構成員などは資料の通りだが、併せて本部の事務局として内閣官房に原子力発電所事故による経済被害対応室を設置した」
「さらに原子力損害の賠償に関する法律第18条の規定に基づき、原子力損害の範囲の判定指針の策定などを行う原子力損害賠償紛争審査会を文部科学省に設置するための政令を本日午後の持ち回り閣議で決定した。詳細については内閣官房の原子力発電所事故による経済被害対応室にお問い合わせください。原子力発電所事故による避難をされている方、様々な経済的被害を受けたみなさんに対する対応をこうした体制で万全を期していきたい」
【新たな避難区域設定その2】
――新たな避難区域の設定について。20キロ圏内はどうなるのか。また、計画的避難区域は実態は20キロ圏内と同様の形になるのか。さらに警戒区域の指定はするのか。
「警戒区域の指定については午前に申し上げたとおり、色々検討しているが、現時点では決定していない。それから20キロ圏内については、これは避難指示という状況は変わらない。今回の計画的避難区域は、20キロ圏内の避難区域とは異なっている。なぜ避難をいただくかの事情が異なっていて、原子力発電所に近い地域の20キロ圏内については、事故そのものの当初、ある短い時間に、大量の放射性物質が出ている、そのことに備えての20キロ圏内の避難をお願いしているが、それに基づいて、それが原因になって一定のかなり高い放射性物質が地上などに残っている可能性もかなり高い地域だ」
「原子力発電所が安定すれば、また詳細な土壌モニタリングなどをすることが出来るが現状ではこちらには基本的には立ち入らないでくださいという状況だ。今回、計画的避難区域に設定したのは、長期間にわたって将来地域にお住まいになるということについての安全性を考慮したものなので、一切立ち入らない、立ち入れない、ということが望ましいということで指示している20キロ圏内とはそうした意味ではかなり意味が違っている状況だ」
――実態としては20キロ圏内と同様、人がいずれは住めなくなるということか。
「必ずしもそれは、そういうことには必ずしも確定しない。いったん計画的に外に出てもらう。当該地域の中は20キロ圏内のように基本的には一切立ち入らないでください、立ち入る場合も今、検討準備しているが、一時立ち入りという相当準備をして、という状況が20キロ圏内については想定されている事態だが、計画的避難区域については、これはもちろんそのなかでもモニタリングによって放射線量の程度はきちっと詳細を詰めて、この間も来ているが、一時的な立ち入りなどについて、20キロ圏内と同じような扱いとは基本的には想定していない」
――計画的避難地域については、現地点での避難先や自治体からの声は。
「まず一点は、これは市町村によって状況が若干異なっていることもある。基本的にはきちっと受け入れ先とのマッチングは国のほうとして汗をかかせて頂く中でしっかりとした受け入れ先、しかも一定期間長くなる、1日2日とか1週間とかいうレベルを想定していないので、そうしたことについても住民を含めて、さほど申し上げたとおり、一時的に中に入ることについては、20キロ圏内とはだいぶ事情が、状況が違うので、そうしたこととの兼ね合いをどうしていくのか」
「中にそこそこまとまった工場があるとか、畜産業の方についてどう対応するのか。このあたりを自治体との相談は詰めを始めているところだ。この間はこれまで蓄積されたモニタリングの数値などの分析によって、どうした地域はどのような地域が今回計画的避難区域という方になったが、こうしたことが必要なのか。そしてそれ以外の20~30キロの区域についてはどういう対応が安全性の観点から必要なのかについて、専門的な分析をもとに主に調整してきた」
「そして昨日ぐらいからこうした考え方、自治体の皆さんともかなり具体的な話をしているが、できるだけ当該地域で、特に畜産業、工場などがあるなど、できるだけ従来の生活の基盤を動かさない中でできるだけ安全性を確保したいという要望が強く出ている。その点については当初から我々もそれを最大限できるやり方、なおかつ安全性を確保するやり方をとりたいと思ってきているので具体的なやり方について、調整をしている」
――放射性物質が管理される状況とは、何を指すのか。
「原子力発電所からの放射性物質が、全くゼロにはおそらくならないだろうと思うが、無視できる程度に低い水準まで下がって、それが安定している状況というのが基本だと思っているが、詳細はさらに詰めて、準備をしておかなければいけない」
――計画的避難区域について、首相からどんな指示あったのか。
「総理にはこの間、モニタリングの状況も分析も途中経過含めて適宜報告を入れている。基本的には安全性を最優先して考えてほしいと。その上で市町村の皆さんと意思疎通、情報交換を進めながら物事を進めてほしいという指示は受けている」
――それぞれの区域の対象人数は。
「後ほど、副長官のほうからブリーフィングするが、その時に準備ができれば報告する」
――長期にわたるということで避難範囲を広げるのは理解できるが、基準を下げる理屈が分からない。
「副長官のブリーフでも一定程度説明できる。さらに言えば、経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会にも尋ねてもらえれば、国際的動向や今の点についての専門的な分析については報告いただけると思う」
――一時帰宅については。
「これもできれば実施したい。実施するにあたっても、できるだけ早く行いたい。正確には、一時帰宅というよりも一時立ち入りという表現をしたほうが言葉の受け止めとしては正しい。まさに安全性をどう確保してどういうオペレーションで進めれば安全性確保した中で要望に応えられるのかというのも実務的な詰めを急いでいる」
――緊急時避難準備区域の設定の狙い。
「現在の20~30キロについては、基本的には屋内退避をお願いしたいと申し上げてきた。ただ、屋内退避であれば外にいるよりも放射線によって受ける影響は小さいが、それであっても長期間にわたれば影響は累積されていく。従って、屋内退避のままでいいということにならない。長期間にわたる累積が問題が起こる可能性がある地域については計画的に出てもらうことになるというのは屋内退避とは状況が異なっている」
――「管理できる状況」の見通しは持っているのか。
「いま、まさに、東京電力などと具体的にどれぐらいの見通しで事態の収束に向かうのかということについては、関係者に出来るだけ説明が出来るようにということの検討を急がせているところだ。できるだけ早く、もちろんあらゆる事態を想定しながら進めなければならない状況だが、一定の見通しの状況はできるだけ早く示したい」
――1カ月以内にできるような検討段階にあるのか。
「これをまさに期限を切って、はっきりとしないことをえいやっと言って示せる性格のものじゃない。まさに事実としてどれぐらいの可能性でいつ収束させられる可能性があるのかという事実の問題で、政治判断の問題でない。従って、いつごろ出せるということについても、出せるようになったらできるだけ早く。ただその作業を急がせているということだ」
――根拠法は何か。
「広い意味で、原子力災害対策特措法に基づく指示だ。今日の段階で指示を出しているわけでないが、この方針で具体的なオペレーションが固まったら指示を出すということだ」
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