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Monday, March 21, 2011

13/03 最悪の事態回避へ懸命 福島第一原発事故

2011年3月13日

 福島第一原発は「炉心溶融」が起き、放射能が外部に放出される中で、「半径20キロ」の住民が避難するという事態にまで進んだ。炉心の損傷が大きければ、今後、放射能の大量放出という事態もある。異例ずくめの状況の中で、最悪事態の回避にぎりぎりの模索を続けている。

 12日、原発の建屋内で水素が爆発し、建屋が壊れた。問題はその爆発によって建屋の内側にある格納容器がどの程度損傷したかだ。

 枝野官房長官は「破損していない。爆発前後で放射能の出方に大きな変化はない」と発表した。原発全体が壊れたような爆発に見えたが、最悪の事態は免れたといえる。しかし、格納容器は、内部のガスを抜くために弁を開け、防護機能が失われている。油断はできない。

 原発史上最悪となった1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故では「30キロの避難」を余儀なくされた。原子炉そのものが爆発して核燃料が直接大気に露出し、長期間放射性物質が大気中に噴き上げた事故だ。

 79年の米スリーマイル島(TMI)原発の事故では、圧力容器内の水が減って、今回と同じく炉心溶融が起きた。しかし、格納容器もその内側の圧力容器も損傷せず、放射能の大量放出はなかった。

 福島第一原発は今回の事故で、チェルノブイリ、TMI事故に続き大事故のリストに加わる。TMIより大きな事故といえるだろう。

 広域避難はチェルノブイリを思い起こさせる。しかし、この事故と直接比較することはできない。

 それでも、これほどの避難が必要なのか。政府は「念のためという意味もある広域避難」と説明したが、それは指示を出した後だった。

 今後は炉心の状況、放射能データなどをもっと丁寧に説明すべきだろう。不十分な説明のまま、夜に避難指示をだすようなやり方では不信感が増すだけだ。

 東京電力は、格納容器内を海水で満たす措置を始めた。前例のない極めて異例の作業でリスクも大きいが、最悪事態を防ぐために採用した。これが奏功するかどうかわからないが、失敗も許されない。

 (編集委員・竹内敬二)

15/03 最悪の事態に備えを 福島第一原発事故

2011年3月15日

 極めて深刻な放射能放出が始まった。すでに福島第一原発の敷地周辺では高い放射線量が検出されている。事故は今後、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故と比較して語られることになる。

 同原発には1~6号機がある。2号機は格納容器につながる圧力抑制室が損傷して放出を始め、1、3号機も炉心で核燃料が水面から露出して危険な状態が続く。

 点検で地震前から原子炉を停止していた4号機でも爆発が起きた。水素を出す原因はプールにある使用済み燃料のようだ。もし水面上に露出していたら極めて強い放射線が作業を妨げるだろう。

 今や一列に並んだ4基の原子炉が同時に制御不能な状態に陥りつつある。

 最悪事態に備えなければならない。まずは放射能の放出の元を断つことだ。危険を伴う作業だが、人と土地の汚染を最小に食い止めるのは時間との闘いだ。日本がお金と時間をかけて蓄積してきた原子力技術を動員して東京電力を支えなければならない。

 被曝(ひばく)回避では初期の行動が重要になる。放射性物質は小さな粒子状になって風で運ばれて拡散する。見えない煙やちりのイメージだ。風向きに注意し、高濃度汚染の襲来を避けることが必要だ。

 避難では、子どもを最優先する。チェルノブイリ事故の経験では、幼い子どもは大人に比べ甲状腺がんになる確率が100倍以上も高い。「放射能からまず子どもを守る」を社会で共有したい。

 多くの人は信じがたい思いでニュースを見ているだろう。未曽有の地震と津波が原因とはいえ、日本は技術先進国の誇りと、被爆国の慎重さをもって原子力を開発してきたはずではなかったか。

 これは戦後、原子力をエネルギー政策の柱に置き、利用を享受してきた日本の歴史の一つの帰結だ。社会全体で受け止めなければならない。

 被災地は家も食糧もエネルギーも足りない。家族を失った人も多い。日本社会全体で支えることだ。日本社会の強さが問われる。(編集委員・竹内敬二)

18/03 最悪回避へ最終局面 福島第一原発事故

2011年3月18日

 福島第一原発の状況は、事態悪化をここで食い止めるか、放射性物質の大量放出に向かうかという剣が峰に立っている。自衛隊、警視庁なども活動に加わり、総動員態勢の様相もでてきた。

 使用済み核燃料は、炉心にある燃料ほどではないが崩壊熱をもつ。3、4号機の貯蔵(冷却)プールでは水の循環装置が故障して水温が上がり、水が減っているようだ。

 ここに放水や電源の復活でたっぷりの水が入ると、燃料は冷やされ事態は落ち着く。

 使用済み燃料は高レベル放射性廃棄物で、極めて強い放射線を出す。一部でも露出していれば、周囲は作業もできない状態になる。

 注水ができなければ水が減り、自身が出す崩壊熱で燃料が溶けるだろう。

 この後の予測は難しい。あえて最悪ケースをたどれば、溶けた燃料がプールの下にたまる。燃料中にはウランやプルトニウムがあり、核分裂が連続して起きる「臨界」が心配だ。ただ一緒に溶ける制御棒の成分が臨界を抑制するかもしれない。

 放水に目を奪われているが、1~3号機の炉心(圧力容器)も非常事態だ。

 内部の状況は不確かだが、長時間、核燃料が露出し、ある程度の燃料溶融(炉心溶融)が起きているとみられる。注水は待ったなしだ。

 消防ポンプなどで注水を試みてきたが、圧力容器の圧力は高く、水は跳ね返されて思うように入らない。

 ここで強い電源が復活すれば、原発の大事故を防ぐ守護神とされる緊急炉心冷却システム(ECCS)がやっと働く。高圧の注水で炉が落ち着く「再冠水」状態にしてくれるだろう。

 ただ、ECCSは大丈夫なのか。今回の地震と津波は、頑丈なはずの原発の設備をことごとく壊している。

 炉への注水がうまくいかなかったら――。核燃料は次第に溶ける。溶ける温度はセ氏2800度。どろどろになった状態で圧力容器の下部に落ちていく。周囲には鋼鉄の設備もあるが、1500度ほどでたいていの設備は溶ける。

 これは仮想の話ではなく、1979年の米スリーマイル島原発で実際に起きたことだ。燃料の70%が溶け、燃料の塊が下部に達したが、ここで止まった。まさに大惨事一歩手前だった。

 1~3号機の炉心をスリーマイル島原発の状況に向かわせてはならない。

 最悪シナリオは、溶けた燃料が炉の下部を溶かし、貫通することだ。この段階で止まるかも知れないが、近くにある圧力抑制室まで達してそこの水と接触すれば「水蒸気爆発」が起きる。

 その衝撃と圧力に、圧力容器の外側の格納容器はおそらく耐えられない。大量の放射性物質が大気に出て行く。

 福島第一の最大の問題は、三つの原子炉と二つの使用済み燃料貯蔵プールという「五つの異常事態」が、状況が不明のまま、同時に進行していることだ。深刻だが、今の段階で悪化を止めれば大量放出は避けられる。

 地震から1週間がたち、政府も危機感を深め、さまざまな放水活動が展開されるようになった。これまでは事業者である東京電力にまかせる形が強かったが、やっと社会の力を集める形がとられつつある。この動きを強めたい。(編集委員・竹内敬二)