2011年3月13日
福島第一原発は「炉心溶融」が起き、放射能が外部に放出される中で、「半径20キロ」の住民が避難するという事態にまで進んだ。炉心の損傷が大きければ、今後、放射能の大量放出という事態もある。異例ずくめの状況の中で、最悪事態の回避にぎりぎりの模索を続けている。
12日、原発の建屋内で水素が爆発し、建屋が壊れた。問題はその爆発によって建屋の内側にある格納容器がどの程度損傷したかだ。
枝野官房長官は「破損していない。爆発前後で放射能の出方に大きな変化はない」と発表した。原発全体が壊れたような爆発に見えたが、最悪の事態は免れたといえる。しかし、格納容器は、内部のガスを抜くために弁を開け、防護機能が失われている。油断はできない。
原発史上最悪となった1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故では「30キロの避難」を余儀なくされた。原子炉そのものが爆発して核燃料が直接大気に露出し、長期間放射性物質が大気中に噴き上げた事故だ。
79年の米スリーマイル島(TMI)原発の事故では、圧力容器内の水が減って、今回と同じく炉心溶融が起きた。しかし、格納容器もその内側の圧力容器も損傷せず、放射能の大量放出はなかった。
福島第一原発は今回の事故で、チェルノブイリ、TMI事故に続き大事故のリストに加わる。TMIより大きな事故といえるだろう。
広域避難はチェルノブイリを思い起こさせる。しかし、この事故と直接比較することはできない。
それでも、これほどの避難が必要なのか。政府は「念のためという意味もある広域避難」と説明したが、それは指示を出した後だった。
今後は炉心の状況、放射能データなどをもっと丁寧に説明すべきだろう。不十分な説明のまま、夜に避難指示をだすようなやり方では不信感が増すだけだ。
東京電力は、格納容器内を海水で満たす措置を始めた。前例のない極めて異例の作業でリスクも大きいが、最悪事態を防ぐために採用した。これが奏功するかどうかわからないが、失敗も許されない。
(編集委員・竹内敬二)
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