Monday, March 21, 2011

21/03 個人投資家が「日本応援買い」 長期に構える層動く

 「日本売りではなく、日本の応援に回りたい」。原子力発電所から放射性物質が漏れ出し、投資家が半ばパニックに陥った15日午後。日経平均株価Xが1000円超の急落となるなか、40歳代の男性投資家は以前から注目していた製造業の主力銘柄に買いを入れた。日本企業の持つ底力を見失ってはいけない。そんな期待の買いだという。




 「売りは外国人に任せて、私は買いでいく」。11日の地震直後、週末のツイッター。株安におびえる多くのつぶやきに混じり、個人投資家の「日本買い宣言」が相次いでいた。

 「私は保有株を手放すつもりはない。(もし急落すれば)絶好の買いの機会だ」。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は米同時テロが起きた2001年9月、ニューヨーク証券取引所が1週間の休場後に再開する直前、こう宣言した。米国では当時、こうした動きを「愛国者の買い」とも呼んだ。

 日本では、米国のように投資について開けっ広げに語ることを慎むから、バフェット氏のような株買い宣言は出にくい。しかし、日本の投資家も冷めているわけではないようだ。一人ひとりは少額の個人も、束になれば大投資家になる。

 個人投資家にも2通りある。1カ月や1日単位、ときには秒単位で投資収益を追う投資家と、期間を気にせず長く構える投資家。両者はおのずと異なる行動になる。株価が急落するとき、前者の多くは慌てて売らざるをえないが、後者なら買いに向かえる。

 原発ショックの15日。東証1部の売買高は過去最高の57億株に膨らんだ。昨年の一日平均売買高の2.7倍だ。投げ売りばかりが話題になるが、反対側には買い手がいる。「証券営業を通さない買いが来ている」(国内銀行系証券)。日ごろは動かないが、ここぞと思えば買いに動き出す個人などの投資家層が、この日、動いていた。

 阪神大震災直後の円高・株安の経験を思い起こす市場関係者は多い。ただ、その年末に株価水準は戻ったし、円高も次第に収束した。超円高の経験があって、その後の輸出企業のグローバル展開が進んだ面もある。当時、日本経済にのしかかっていた不良債権X問題も過去の話だ。

 震災当日の日経平均採用銘柄の予想株価収益率(PER)を比較しても、阪神の16年前は82倍と高かったが、今回は16倍。企業の足元の収益力はしっかりしている。ネット上で連帯する日本応援団の買いは、悲観一色が果たして正解なのかとみる、合理的な判断の買いともみえる。

 今回の被災範囲は広域で、電力不足と物流の混乱が長期化すれば、日本経済への多大な影響は必至。何より原発事故を食い止めなければならない。少子高齢化や財政赤字、原油高など、構造的な問題が立ちはだかることもまた事実だ。

 不確定な要因があまりに多い今は、楽観と悲観どちらにも傾き過ぎるのは禁物かもしれない。ただ、不良債権問題が深刻化した03年春、リーマン・ショック後の08年秋、さらに09年春と、株価の底値圏で買い向かったのは個人投資家だった。

 そして今回。思わぬ急落に損失を被った個人投資家も多いとみられるが、その一方で、長期で構える個人投資家が、すでに動き出したことは間違いない。


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