Monday, April 18, 2011

18/04 2号機プールから汚染水検出…4号機地下にも

 東京電力は18日、福島第一原子力発電所2号機の使用済み燃料プールの水から、高濃度の放射性物質を検出したと発表した。

 プールからあふれた水を受けるタンクから16日に採取した水を分析した結果、放射性セシウム134が1立方センチ・メートルあたり16万ベクレル、セシウム137が同15万ベクレル、ヨウ素131が同4100ベクレル検出された。東電は「圧力が高まった格納容器から漏れ出た放射性物質が溶け込んだ可能性が高い」と見ているが、プールの燃料棒が破損している可能性も否定できないという。

 一方、経済産業省原子力安全・保安院は18日、4号機原子炉建屋地下1階で汚染水が約5メートルの深さでたまっているのが見つかったと発表した。濃度は不明だが、4号機の復旧作業には汚染水をまず処理する必要があり、障害がまた増えたことになる。汚染水の水深について、保安院は同日午前中に「約20センチ」と公表したが、その後訂正した。

(2011年4月18日23時23分 読売新聞)

18/04 2号機原子炉建屋、米国製ロボットで調査


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福島第一原発2号機の原子炉建屋の入口の扉を開けるロボット=東京電力提供

 東京電力は18日、福島第一原子力発電所2号機の原子炉建屋に米国製の遠隔操作ロボット「パックボット」を入れ、内部の放射線量などの調査を行ったと発表した。

 同日午後1時40分から約50分間をかけて実施した。

 ロボットは米アイロボット社が提供。東電社員らが映像を確認しながら操作、マジックハンドで建屋入り口の扉を開けて進入した。2号機内部の調査は、燃料棒が完全露出する危機が起きた3月14日以降、約1か月ぶり。東電で放射線量のほか温度や湿度、酸素濃度などの分析を進めている。

 2号機は格納容器の圧力抑制室が損傷しており、東電が公表した事故処理の工程表では、約3か月後をメドに損傷部を密閉する計画。ただ、17日に行った1、3号機原子炉建屋の調査では、それぞれ最高で毎時49ミリ・シーベルト、同57ミリ・シーベルトと、人間の作業が困難になるほどの高い放射線量を測定した。2号機からは高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れ出しており、線量は1、3号機を大幅に上回る可能性があり、測定結果次第では、工程に影響を及ぼすことも考えられる。

(2011年4月18日21時53分 読売新聞)

18/04 1・3号機に空冷方式を検討、簡易に設置可能

 東京電力は18日、福島第一原子力発電所の1、3号機で、空気の力で原子炉を冷却する「空冷」方式を導入する方向で検討を始めたことを明らかにした。

 海水を引き込んで除熱する「水冷」方式に比べ、冷却効率は高くないが、簡易に設置できるのが特徴だ。「空冷」方式の導入は日本では初めてになる。

 導入が検討されているのは、フランスの内陸にある原発などで採用されている「エアフィンクーラー」。原子炉を冷やすのに使った水を循環させる配管の一部に多数の薄い金属板(フィン)を付けて表面積を増やし、ここにファンで空気を当てて配管ごと冷やす方式が一般的だ。原子炉建屋の脇に箱形の構造物を設置。この中に配管を引き出して、外気を送り込む方式が検討されている。

(2011年4月18日21時37分 読売新聞)

18/04 福島第一原発、汚染水移送先の止水工事が終了

 東京電力は18日、福島第一原子力発電所で、高濃度の放射性物質を含む汚染水の移送先となっている集中廃棄物処理施設の止水工事が終了したと発表した。

 同施設では地下の配管から水が漏れていることが同日明らかになったが、その後、漏れは止まり、汚染水の移送作業は準備が整い次第、始めるとしている。

 同施設は地下2階まであり、放射性物質が環境中に放出されにくい構造になっていることから、東電は高濃度汚染水3万トンの保管場所にすることにしている。水漏れが見つかったのは、地下通路にある扉の上部を通る配管。東電は、土のうやコンクリートなどで漏水を止める作業を進め、漏れを止めたとしている。移送は、経済産業省原子力安全・保安院の点検後、低濃度汚染水を使って施設の漏出テストを行った後、開始する。

(2011年4月18日21時33分 読売新聞)

18/04 震災・原発事故で首相、防止対策の甘さを陳謝

 菅首相は18日、東日本大震災に関する参院予算委員会の集中審議で、東京電力福島第一原子力発電所事故に関し、「非常用電源がダウンしたということは、予測の甘さがあり、それが一つの原因になったことは免れない。政府も十分に事前にチェックできなかったことについてはおわび申し上げたい」と述べ、事故防止対策の甘さを陳謝した。

 今後の原子力政策については、「(事故の)検証を経て、安全性を確かめることを抜きにして、これまでの計画をそのまま進めていくことにはならない」と述べ、見直しを示唆した。

 片山虎之助氏(たちあがれ日本)が「復興の道筋をつけたら首相を辞めるのも選択肢の一つだ」と退陣を迫ったのに対し、首相は「復旧・復興と、財政再建の道筋をつけられたら政治家として本望だ」と反論し、引き続き政権を運営することに意欲を示した。

(2011年4月18日21時01分 読売新聞)

18/04 関西電力3原発、緊急対策確認で立ち入り検査


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原子力安全・保安院が福井県美浜・高浜・大飯の関西電力3原発を立ち入り検査

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、経済産業省原子力安全・保安院は18日、関西電力が立てた原発の緊急安全対策を確認するため、福井県の美浜、高浜、大飯3原発の計11基を対象に、立ち入り検査を始めた。

 19日までの予定で、津波などで外部からの電力供給が途絶えても、原子炉を安全に冷却できるかどうかを調べる。緊急安全対策についての保安院の立ち入り検査は初めてで、今後、他社の原発も行う。

 福島第一原発は、非常時に用いる発電機が使用不能になるなどして原子炉の冷却機能が失われたが、関電は対策として、電力供給用の「電源車」計22台を新たに配置するなどした。

 この日の美浜原発の検査では、電力を確保するため、電源車にケーブルを接続する訓練などを保安院側が視察した。

(2011年4月18日20時41分 読売新聞)

18/04 東電の工程表、海外は一定評価も楽観戒め

 福島第一原発事故の収束に向けて東京電力が17日示した工程表について、海外では一定の評価をする声が聞かれる一方、楽観を戒める指摘も多い。

 米メディアでは、「東電が野心的な計画を提示」(ニューヨーク・タイムズ紙)など肯定的な受け止め方が目立った。中国の共産党機関紙・人民日報系列の国際問題専門紙「環球時報」は18日、「危機がいつ収束するかわからないというパニックの中にあった日本人の心を、ようやくわずかに落ち着かせた」と強調した。

 工程表で、放射性物質の放出を大幅に減らして安定した状態を取り戻すまで6~9か月としていることに関しては、実現性について慎重な見方も多い。

 ドイツのミヒャエル・ザイラー原子力安全委員は18日、DPA通信に対し、「依然として不安定な状態にあり、もし新たな建物の崩壊が起きたり多量の放射能の放出が起きたりすれば、工程表は非現実的となる」と語った。欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のギュンター・エッティンガー委員(エネルギー担当)の報道官は本紙に「東京電力が着実に工程表を履行していけるかどうかも含め、状況を注視していきたい」と述べた。

(2011年4月18日20時25分 読売新聞)

18/04 東電工程表、実施に相当の困難と班目委員長

 内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長は18日、東京電力が発表した事故収束への工程表について「相当のバリアがある」と述べ、実施には困難が伴うとの認識を示した。

 また「工程表の精査はできていないが、スケジュールありきで安全がおろそかになることは避けてほしい」と語った。

 班目委員長は「一番難しいのは2号機対策」とし、理由としてタービン建屋地下に高濃度の放射性物質を含む汚染水があることを挙げた。フランスから導入予定の浄化処理技術についても「本当に(高濃度の汚染水に)使えるのか、安全委員会側として承知していない」と効果に未知数の部分が多いことを挙げた。

(2011年4月18日20時19分 読売新聞)

18/04 福島1~3号機核燃料、保安院「溶融」と初見解

 経産省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は18日の記者会見で、1~3号機の核燃料が「溶融していると思われる」と述べ、内閣府の原子力安全委員会に報告したことを明らかにした。


 保安院はこれまで、核燃料の損傷が3%以上としてきたが、「溶融」との見解を出したのは初めて。

 保安院は炉心の壊れ具合によって3段階に定義されると報告。「炉心損傷」は、焼き固めた燃料(ペレット)を覆う金属の被覆管が壊れているが、燃料体の形は崩れていない状態。ペレットの一部が溶けだしている状態を「燃料ペレットの溶融」、溶けた燃料が下に落ちていくのを「メルトダウン(炉心溶融)」とした。

 その上で、「ペレットが溶融している」とした理由について、2、3号機は「ペレットが溶融して生じる放射性物質が高濃度の検出された」ことを、1号機は「水素爆発に至った」ことを挙げた。

(2011年4月18日22時47分 読売新聞)

18/04 Seawater radiation checks off N-plant to be widened



Tokyo Electric Power Co. will increase the number of locations it collects seawater samples from 10 to 16 to check levels of radioactive substances released from the Fukushima No. 1 nuclear power plant, it has been learned.

According to TEPCO, the decision adheres to instructions given by the Nuclear and Industrial Safety Agency, an organ of the Economy, Trade and Industry Ministry. Checks at the new locations will begin this week, TEPCO said.

Four of the new checking points will be set at locations about three kilometers off the coast, and two will be set about eight kilometers off the coast.

Seawater checks near the coastline have proved insufficient, TEPCO said. The company has been checking seawater at 10 checking points, with six located about 15 kilometers off the coast. The other four are located very close to shore, including one near the plant's south drain outlet. The Education, Culture, Sports, Science and Technology Ministry is also checking seawater, but at about 30 kilometers off the coast.

According to TEPCO, samples collected from the previous areas were inconclusive. There were not enough to study whether radioactive substances are spreading south and north from the nuclear plant. The new checking points will enable the company to study more accurately whether its measures to prevent radioactive substances from spreading in the sea are working, TEPCO said.

According to the science ministry, radioactive iodine-131 at a concentration of four times the maximum allowable level under the law, and cesium-137 at a concentration of two times the maximum allowable level, were detected in seawater samples taken 34 kilometers off the coast Friday. Both figures were the highest since the ministry began taking samples there since March 23, the ministry said.

Meanwhile, highly concentrated iodine was detected from kounago (young sand launce) caught April 1 in waters off northern Ibaraki Prefecture.

Fishermen have refrained from catching fish near the Fukushima power plant. However, TEPCO said it is planning to catch fish and shellfish near the plant and check their radiation levels to study how the seawater contaminated by radioactive substances is affecting the area's ecosystem.

(Apr. 18, 2011)

18/04 原発事故工程表 もう「想定外」は許されない(4月18日付・読売社説)

 東京電力が、福島第一原子力発電所の事故収束に向けての工程表をようやく発表した。

 6~9か月後には、事故の発生以来続いている放射性物質の漏出を食い止め、避難区域の解除を可能にすることを目指している。

 東電は、工程表を確実に実行に移すだけでなく、前倒しもできるよう全力を挙げるべきだ。

 工程表は、政府が東電に早急な取りまとめを指示していた。中期的な目標を明らかにすることが、国内外の不安を和らげるうえで欠かせないという理由からだ。

 工程表の公表は、福島第一原発が一時の危機的な状況から脱しつつあることを示すものだろう。

 実際、これまで原子炉建屋内などは放射線が強いため近づけず、破損状況が分からなかった。ロボットなどを活用し、徐々に把握することができるようになった。

 これを踏まえ東電は、収束までの工程について、今後3か月間をステップ1、その後3~6か月間をステップ2と位置づけた。

 ステップ1の最大の目標は原子炉の安定的な冷却だ。1、3号機の原子炉を水で満たし、冷却水を循環させて、本来の冷却機能を回復させることを目指す。

 ステップ2では、大気中への放射性物質の漏出を最終的に封じ込める。原子炉建屋をシートで覆うことを検討している。

 だが、この工程表通り、収束への作業が順調に進むかどうか。

 最も懸念されるのが、放射性物質による敷地内の汚染だ。拡大すると作業が難航する。周辺で大きな余震も続いている。

 こうした事態への備えも必要だ。今度こそ、「想定外」という釈明は許されない。

 この間、避難住民へも十分配慮してもらいたい。

 原発事故が収まるまでに、どのくらいの時間がかかるのか。我が家に帰れるのは、いつごろか。避難対象となった約10万人の周辺住民は、不安を募らせている。

 海江田経済産業相は、「6~9か月後を目標に、一部地域の方々には帰宅が可能か否か、お知らせしたい」と述べた。

 それにとどまらず、政府と東電は、作業の進展状況や避難地域の汚染状況についての情報を正確に、滞りなく提供すべきだ。

 帰宅後の復旧・復興策や、住民への具体的な支援策なども検討しなければならない。

(2011年4月18日01時08分 読売新聞)

18/04 激しい引き波、海底露出…釜石港の映像公表


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釜石港湾合同庁舎から撮影された3月11日の津波の様子。強烈な引き波で海底も露出した=海上保安庁提供
岩手県の釜石港を襲う津波、海底が露出するほどの激しい引き波

 海上保安庁は16日、東日本大震災が起きた3月11日に、釜石海上保安部が撮影した岩手県の釜石港を襲う津波の映像を公表した。

 映像は、釜石海保の入る釜石港湾合同庁舎から撮影。事務所から職員らが屋上へ逃げる様子や、津波が防潮堤を越えた後、海底が露出するほどの激しい引き波が起こり、岸壁の全体があらわになったり、漂流する貨物船が港湾内を行ったり来たりする様子などが映っていた。

(2011年4月18日18時51分 読売新聞)

18/04 ソフトバンクの携帯、緊急地震速報に対応へ

巨大地震
 ソフトバンクモバイルは18日、5月以降に発売する携帯電話とスマートフォン(高機能携帯電話)について、大半の機種に気象庁の「緊急地震速報」の受信機能を搭載すると発表した。


 これまでは1機種だけが対応していた。

 既に販売されている機種のうち「ガラパゴス 003SH」など7機種は、利用者が、各メーカーやソフトバンクのホームページでソフトウエアを更新して受信できるようにする。「iPhone(アイフォーン)」は今も専用アプリで受信はできるが、気象庁が発信した情報を転送するのに時間がかかりすぎて、緊急速報の役割が十分に果たせていないという。このため、アプリの提供先企業を支援して時間の短縮を目指す。

 NTTドコモとKDDI(au)は、現在発売しているほとんどの機種が対応している。

(2011年4月18日18時53分 読売新聞)

18/04 近事片々:東北新幹線は今東京からだと福島止まり…

東北新幹線は今東京からだと福島止まり。在来線に乗り換え仙台に向かう途中、車窓を絵巻のような風光が流れた。白石川堤の「一目千本桜」だ。ここで列車は低速になり、土手の人ともども旅客もひととき花の並木に思いを巡らす。

    ◇    ◇

 関東大震災でからくも難を逃れた俳人・小沢碧童(へきどう)の「災後句録」に<身に沁(し)みていのちがあるといふばかり>と。生地の東京・日本橋魚河岸の焦土を目の当たりにして詠んだ。

 いのちがある。昨日、陸前高田の高台で被災者が集い、まだつぼみの桜をめでた。眼前には津波に壊滅した街並み。「ふるさと」の合唱が流れた。

 この歌、被災地のあちこちで。復興のテーマ曲になった。

毎日新聞 2011年4月18日 東京夕刊

16/04 近事片々:「ペンと紙があれば」と声を上げ…

 「ペンと紙があれば」と声を上げ、被災地で不屈の発行を続けた石巻日日(ひび)新聞。その手書きの壁新聞が米ワシントンの博物館展示へ。明かりはロウソク。手にフェルトペン。着の身着のままで避難した人々を情報で支え、励まし続けた記者魂。

    ◇    ◇

 大槌。避難所に散る中学野球部員。「野球すっど」。監督の声が皆を集めた。空き地と1個のボールがあれば。ノックに長靴姿の好守。よみがえる笑顔。

    ◇    ◇

 東北路に桜色を点じゆく春の風。人をしのび、わが街を思い、花見をやろうと声が上がる。連帯と心の復興の花に。

    ◇    ◇

 <人なれて山あたたまる桜かな>          麦水

毎日新聞 2011年4月16日 東京夕刊

15/04 近事片々:世界に「ありがとう」

 サンキュー。シエシエ。カムサハムニダ。スパシーバ。メルシー。シュクラン。グラシアス……。声に出してみる。どの国の「ありがとう」の言葉にもぬくもりがある。

 人と物資と心を届けてくれた世界へ、ありがとう。

    ◇    ◇

 「希望新聞」も心の十字路。昨日の伝言板には「1日くらい外に出て一緒にリフレッシュしませんか」と福島の登山愛好者がハイキングの呼びかけ。「うつくしま」の風光を思う。

    ◇    ◇

 <わたくしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます>

 童話集の序文より、宮沢賢治

毎日新聞 2011年4月15日 12時51分

18/04 余録:東日本大震災の1週間後…

 東日本大震災の1週間後、神戸港から中国の天津に向かうフェリーは日本脱出を急ぐ留学生など中国人であふれ返っていた。ざわめきの中で間瀬弘樹さんは被災地の知人たちの安否を気遣いつつ、「今は私を待つ大地へ」と41歳の自分を励ました▲5日後にたどり着いたのは北京の西方約560キロ、内モンゴル自治区のクブチ砂漠に位置する恩格貝だ。91年以来、「日本沙漠緑化実践協会」がボランティアを募って植林を進めてきた。間瀬さんは駐在員として毎年3月下旬から7カ月半をここで過ごす▲砂漠に苗木を植える「緑の協力隊」の参加者には東北地方の人も多い。その面々と顔見知りの中国人スタッフが「あの人は無事かな」と気をもむ。村人たちも心配する。しばらくすると、津波で亡くなったり家を流された被災者の情報が入ってきた▲3月下旬に来るはずだった「緑の協力隊」は計画を取り消した。5月には来訪予定があるが、その後の派遣を断念したグループもある。300万本以上の木を植えて緑野を広げ、中国側から高く評価されてきた活動は最大の試練に直面している▲だが間瀬さんに迷いはない。未来のために砂漠に木を植える。それは黄砂による日本の環境汚染防止にも役立つ。この活動を始めた砂地農業の権威、故・遠山正瑛氏の口癖は「やればできる。やらなければできない」だった。その気概を受け継ぐ覚悟を決めている▲以上は国際電話で聞いた話だ。大震災と津波が今も広げ続けている無数の波紋の一つである。直接の被災者はもちろん、多様な厳しい試練の渦中にいるすべての人々に、心の底から声援を送りたい。

毎日新聞 2011年4月18日 東京朝刊

17/04 余録:先週行われたゴルフのマスターズ・トーナメントの…

 先週行われたゴルフのマスターズ・トーナメントの創始者、ボビー・ジョーンズは本業が弁護士で、ゴルフはアマチュアを貫いた。「名手たち」を意味する「マスターズ」を大会名にすることに反対だったという。ただの「招待大会」でいいと▲ベルギーの貴族が所有していた農園を切り開いた美しい18ホールと、世界最高峰の名手たちの競演が創始者の思いをよそに「マスターズ」を世界の4大大会に育て上げた。4大大会の中で一番歴史が浅いにもかかわらず、世界中のゴルファーが最も憧れる大会だ▲今年の大会は日本のアマチュア選手として初めて招待された東北福祉大2年の松山英樹選手が通算1アンダーの27位と健闘し、「ベストアマ」の表彰を受けた。同じ19歳の石川遼選手が3度目の挑戦で果たした決勝進出を1年目から達成した。歴史的な快挙である▲東日本大震災の当日は大学ゴルフ部の合宿でオーストラリアにいた。仙台に戻った松山選手ら部員を待ち受けたのは変わり果てた被災現場だ。こんな状況下でマスターズの招待を受けていいのか。大学には「ゴルフをしている場合か」というメールも届き、思い悩んだ▲「出場辞退か」との報道が出た翌日、一転して「ぜひ出てほしい」という電話やメールが大学に殺到した。これが松山選手の背中を押した。ゴルフで伝えられるメッセージにプロもアマもない。それを最高の舞台で実証した。天国のジョーンズも祝福しているに違いない▲石川選手らが14日からの国内開幕戦を戦う中、松山選手は16日、被災地でのボランティアを始めた。「名手」の誇りをひとまず胸の奥に封印して。

毎日新聞 2011年4月17日 東京朝刊

16/04 余録:「非常時」の夏時間

 ベンジャミン・フランクリンが早寝早起きをすすめたのは、「健康、富、知恵」を増進すると信じたからだ。その彼がパリに滞在中、日が昇ったのに寝ている市民に眉をひそめたのは当然だ。パリっ子たちはその分夜の生活を楽しんだ▲そこで彼は朝の活動を早めて太陽光を使い、夜のロウソクの無駄遣いを防ごうと呼びかけた。そのエッセーが夏時間のアイデアの起源という。夏の標準時を1時間進めようとの提案が生まれたのは20世紀初めの英国だった▲実際に夏時間を初めて導入したのは第一次世界大戦中のドイツである。続いてドイツと交戦中の英国でも採用されたが、何も「健康、富、知恵」の増進のためではない。戦時経済の下での燃料類の節約や労働時間の延長といった目の前の必要に迫られてのことであった▲こうみれば、今の日本の「非常時」ぶりも分かりやすい。東京電力の原発事故による夏の電力不足への対策の一つとして戦後占領期以来の夏時間導入が検討されている。すでにソニーが独自で就業時間を1時間繰り上げるなど、個別企業での夏時間の採用も始まった▲最近では温暖化対策として期待が高まっていた夏時間だが、一方で省エネ効果を疑問視する声も根強い。また過去の導入時の「早起き遅寝で、睡眠不足になった」とさんざんだった評判も気になる。肝心の昼の暑い盛りの電力節約にどうつなげるかの工夫も要るだろう▲江戸時代の「早起きは三文の徳」もあんどんの油代を節約できたからだった。終戦直後を思わせる「非常時」の夏時間論議だが、それを機に「健康、富、知恵」のための早寝早起きが増えるのも悪くない。

毎日新聞 2011年4月16日 0時03分

18/04 福島第1原発:4号機原子炉建屋も浸水 プール補強遅延も


無人ヘリが4月10日に撮影した福島第1原発4号機の原子炉建屋=東京電力提供
無人ヘリが4月10日に撮影した福島第1原発4号機の原子炉建屋=東京電力提供

 東京電力福島第1原発4号機の原子炉建屋地下1階に、放射性物質を含んだ水が約20センチの深さでたまっていることが18日、分かった。東電が17日発表した工程表では、同建屋は余震対策として使用済み核燃料プールの補強工事が必要としているが、建屋の浸水が確認され、工事には時間がかかりそうだ。

 4号機は3月15日に壁の一部が破損した。震災当時、原子炉内の工事で全燃料がプールに移されていたため、他号機より高い余熱で水素が発生、爆発したのが原因とみられている。プールには核燃料1331体を収めた約1400トンの水が入り、余熱で水温が90度まで上昇した。このため、コンクリート圧送車で冷却水を補給している。

 壁の破損は当初、建屋の表面のみとされていたが、後の調査でプールの重さを支える構造壁まで損傷が及んでいたことが判明。壁にかかる荷重を緩和し、耐震性を保つには、コンクリートでプールの底などを補強することが必要になっている。

 しかし、経済産業省原子力安全・保安院によると、16日から作業員が建屋に入って調査した結果、地下1階が浸水していることが分かった。使用済み燃料の一部が破損して放射性物質を含むプールの水が漏れるか、あふれた可能性があるという。4号機では、タービン建屋地下にも汚染水がたまっているが、より高濃度の2号機の汚染水処理が優先され、4号機の対策は未定という。

 一方、1号機の再爆発を防ぐために続けられている原子炉格納容器への窒素注入は、18日午前6時までに予定量を超える7100立方メートルの注入を終えた。しかし、同容器内の圧力がやや下がる傾向にあり、容器の一部に漏れがあることが分かった。保安院は、水素爆発の危険がなお続くため、今後も窒素注入を続行することが必要だとしている。【山田大輔】

毎日新聞 2011年4月18日 10時53分(最終更新 4月18日 13時57分)

18/04 東電、厳しい資金調達「2兆円いずれなくなる」

 東京電力は17日、今後6~9か月で福島第一原発事故の収束を図る工程表を発表したが、収束までの期間が長引くほど、原子炉を安定させるための設備費用だけでなく、賠償金の支払いなど必要な資金が膨らむ。

 事故が収束しても農業や漁業の風評被害などで賠償額がさらに膨らむ可能性がある。東電は、社債による資金調達が難しくなっており、政府は賠償策の枠組みを早急に決める必要がある。

 ◆創業以来の危機◆

 勝俣恒久会長は記者会見で「創業以来最大の危機」と述べ、経営が非常に厳しい状況にあるとの認識を示した。

 東電は、地震発生直後に、大手銀行などから約2兆円の緊急融資を受け、当面の資金繰りにめどをつけた。しかし、原発に代わる火力発電所やガスタービン発電の設備費用や、当面の原発の安定化の費用などで「手持ちの2兆円はいずれなくなる」(証券関係者)との見方が出ている。

 ◆資金負担◆

 福島第一原発の被災者への賠償金の仮払いが始まることで資金繰りはさらに厳しくなりそうだ。当面、1世帯あたり100万円(単身世帯は75万円)の仮払いだけで総額500億円かかる。避難の長期化でさらに複数回の仮払いが必要になる可能性が高まった。

 金融界では、「東電は今後1年間で、社債の償還や借入金の返済だけで1兆円強が必要」(大手証券会社)とみられている。東電の格付けは下がっており、新たに社債を発行して資金調達できるかどうか不透明だ。地震直後に2兆円の融資に応じた金融機関も政府保証なしに追加融資に応じることは難しそうだ。

(2011年4月18日09時55分 読売新聞)

18/04 1・3号機で高放射能、保安院「内部作業困難」


 経済産業省原子力安全・保安院は18日、遠隔操作できる米国製ロボットで東京電力が17日に調査した福島第一原子力発電所1、3号機の原子炉建屋内の放射線量を公表した。

 1号機は毎時10~49ミリ・シーベルト、3号機は同28~57ミリ・シーベルトと高い値で、西山英彦審議官は「作業員が立ち入って工事をするのはこのままでは難しく、何らかの方法で放射線量を下げたり遮蔽したりすることが必要だ」と述べた。保安院によると、1、3号機の原子炉建屋内で放射線量などの環境を調査したのは東日本大震災後に水素爆発を起こしてから初めて。

 3号機の調査は、17日午前11時半~午後2時に行った。温度は19~22度、湿度は32~35%、酸素の濃度は21%だった。同日午後4時~5時30分に行った1号機の調査では、温度は28~29度、湿度は49~56%、酸素濃度は21%だった。ロボットが撮影した3号機の建屋内部には多量のがれきが映っており、ロボットの前進も困難だったという。

(2011年4月18日13時52分 読売新聞)

18/04 asahi - 天声人語

2011年4月18日(月)付

 「かかあ天下」をもじった「かかあ電化」なる言葉が1955(昭和30)年ごろに流布したそうだ。一般家庭にも電化の波が広がり始めた時代、高度経済成長の曙である▼家庭の電化程度は次のようだったらしい。第7ランクは電灯だけ。第6はラジオがある。第5はトースター、電熱器。第4は扇風機に炊飯器。第3は電気洗濯機。第2は電気冷蔵庫。第1ランクの家にはテレビも電気掃除機もあった(『キーワードで読む戦後史』岩波書店)▼いまや「第1ランク」でないお宅を探すのは難しい。さらにエアコン、電子レンジ、その他もろもろが居並ぶ。洗濯機でも冷蔵庫でも昔は頭に「電気」とつけた。いつしか消えたのは、電気が空気のような存在になった証しだろう▼冬は寒く夏は暑い。この道理に抗(あらが)う利器エアコンが、家庭用電力消費の約25%を占めるそうだ。夜は暗いという天則を破る照明は約16%。思えば私たちは、自然の摂理を相手に多大な電気を使っている。ありのままに少し立ち戻れば、結構な節電が実現しよう▼電力不足の夏を案じつつ、空調一辺倒で影の薄かった「消夏法」を思い巡らすのはどこか楽しくもある。打ち水、緑陰、川涼み……。「緑のカーテン」の種をまいて育ててみるのも面白い▼どのみち温暖化の問題で、野放図な消費には赤ランプがついていたのだ。眉間(みけん)にシワより、目尻にシワで対処する方が、創意も工夫も湧くだろう。禍(わざわい)を転じて曙光(しょこう)となす知恵と意志が、私たちにはあるはずだ。

17/04 asahi - 天声人語

2011年4月17日(日)付

 ほころび、咲き、散っていく桜の姿は、他の花には抱くことのない想念を人の心に醸す。東京近辺の桜は数日前から落花がしきり。細かい光となって風に流れ、木によってはすでに残花か、もしくは葉桜に近い▼落花の名詩の多い中、〈昔去るとき 雪 花のごとし/今来たれば 花 雪に似たり〉という詩句がある。6世紀中国の漢詩だから桜かどうか分からないが、雪と花の対比が忘れがたい。去るときは雪。戻り来れば花。「別れの詩」という題ながら、季節にせよ人生にせよ、どこか春が巡る喜びが感じられていい▼みちのくを北上する桜前線は、今日はどのあたりか。各地で開花が人を励ましている。福島県いわき市久之浜では先日、津波で根が露出し幹も傾いた一樹が花開いた。耐えて咲くその姿は、東北の風土と気質を彷彿(ほうふつ)とさせる▼岩手県陸前高田市の寺にある避難所では今日、花見が行われるそうだ。がれきの街を見下ろしつつ、人々は開花を待ち望んでいると小紙が伝えていた。どんな言葉より、花の無言に励まされる心もあろうと思う▼詩人の大木実は、戦争が終わって命ひとつで復員してきた。祖国の土を踏んだ心情をうたった作を残している。〈もういちど はじめから/やり直そう/そう思った/さくらの花を仰ぎながら……〉▼被災した人には戦後の焦土にも等しいであろう眼前の光景。惨に耐えて咲く桜木を、心の荒野にそっと移し植える方もおられよう。雪が花に変わるときが、必ずくると信じたい。

16/04 asahi - 天声人語

2011年4月16日(土)付

 野口雨情が「青い眼(め)の人形」を発表したのは90年前である。〈青い眼をしたお人形は/アメリカ生(うま)れのセルロイド……〉。19世紀に米国で商標登録された新素材が、人工的な響きで異国情緒を添えた▼セルロイドは、セルロースや樟脳(しょうのう)など、植物系原料による世界初の汎用(はんよう)樹脂だ。日本でも明治後期から作られ、昭和の初めには世界一の生産量を誇った。詩人が「素材」に使った大正時代は、製造の技をわがものに、輸出が増えていく時期にあたる▼おもちゃ、筆箱などのセルロイド製品が、わが国の近代化を象徴する「化学遺産」に加わった。震災4日前のことだ。思えば、日本の輸出産業は幾多の天災や戦火をくぐり、しぶとく伸びてきた▼今回も、鉄鋼、自動車、電子部品といったお家芸の拠点が被災した。大きな世界シェアを持つ重要部品が途絶え、米国や韓国でも工場が止まったという。モノづくりの怖さと深さを思う▼燃えやすく割れやすいセルロイドは戦後、石油系の素材に代わられる。こうした技術革新や発明があるたび、日本は得意の分野や製品を乗り換え、存在感のある工業国になった。その名声と競争力、顧客をつなぐためにも、生産ラインの正常化が急がれる▼内需と外需がフル回転して、やっとこさの国難だろう。しかし、開国や敗戦による「断絶」が別の日本を生んだように、時代を画す混沌(こんとん)は目覚めの時でもある。輝くセルロイドの記憶とキューピーの笑顔を思い起こし、もう一度だけ世界を驚かせたい。

15/04 asahi - 天声人語

2011年4月15日(金)付

 亡き主人を迎えに渋谷駅に通う秋田犬の悲話を、「いとしや老犬物語」と伝えたのは手前みそながら本紙だった。昭和の初め、忠犬ハチ公の誕生だ。死因は寄生虫とされるが、がんも患っていたという。精勤10年。病身の忠誠はこの動物の才を語る▼生前に銅像が建ったハチほどではないが、この震災でも「奇跡の犬」が生まれた。沖に流された屋根の上から、3週間ぶりに救われたバン。飼い主と再会し、ちぎれんばかりに尻尾を振る姿に、「家族の絆」を思った▼何匹、何頭が津波にのまれただろう。人の生死と同列には語れないけれど、ともに生きた何人目かの家族である。愛犬を助けに戻って濁流に消えた人、家畜の世話のために避難を拒む人もいる▼やせこけ、放射能の中をさまよう犬や牛馬の姿に、啄木が詠んだ光景の貴さをかみしめる。〈路傍(みちばた)に犬ながながとあくびしぬわれも真似(まね)しぬうらやましさに〉。屈託のない犬と、あやかりたいと眺める歌人。今にしてみれば、夢のような退屈である▼生かされたペットには、仕事がある。愛する人の不在は埋められないが、小さな命は生きがいとなる。無垢(むく)に和み、食べさせ寝かせ、頼られることを支えに、再生への長旅に踏み出す方もおられよう▼「あなたは一人じゃない」といった励ましが、世界中から寄せられている。絶望の闇を抜け、この言葉の深さを誰かと確かめ合う日々が、被災者に訪れることを願う。その時あなたに寄り添うのは、一人ではなく一匹かもしれない。

18/04 枝野官房長官の会見全文〈18日午前〉

2011年4月18日13時1分

 枝野幸男官房長官の18日午前の記者会見は次の通り。

 【冒頭】

 私から1点報告する。経産省から東京電力に再就職がなされてきていた件に関して、原子力行政のあり方について今後、事故を収束し、その原因を検証した上で、体制や人材育成のあり方も含めて抜本的な見直しを行う必要があると考えているところだが、海江田経済産業大臣とも相談した結果、その結論を得る前の間においても国民の疑念を招かぬよう、原子力安全・保安院や資源エネルギー庁など経産省幹部の電力会社への再就職については、職員に対し自粛措置を講じることとした。電力会社に対しても、この自粛措置を周知して、協力を求める予定だ。詳しい内容は経産省大臣官房秘書課におたずねをいただきたい。

 【東電の収束見通し】

 ――東電が原発事故の収束見通しを発表したが、この評価について、実効可能性の観点からどう考えるか。

 「東電の皆さんのある意味ではプラントについての専門的な知識をお持ちの皆さんが、関係機関とも相談をした上で出してきた見通しなので、十分に実施可能性のあるものだと思っている。ただ、例えば今も時々余震が生じているし、またこの間、残念ながらしっかりとした態勢がとれない中での事態の悪化が何度かあったので、決して緊張感を緩めることなく、昨日示された見通しの通り、状況が好転していくべく、政府としても原子力安全・保安院や原子力安全委員会も通じて、状況についての把握、チェックと、それから昨日の収束に向けた見通しについてのステップの進み方についてのチェックを厳しく進めてまいりたいと思っている」

 ――避難地域の解除について、海江田大臣はステップ1での解除は難しいとの認識を示しているが、仮にそうなら、ステップ2に入ってからの解除をどう考えているか。

 「ステップ1の段階においては、進行中においてはなかなか難しいだろうというふうに報告を受けている。また、ステップ2に入った段階においても、一つはそれぞれの地域における放射線量の状況がどうなっているのか。もう一つは、ステップ2の段階に入れば、当然一定の管理された状況に今以上にしっかりとなっていくわけだが、その時点における事態の悪化のリスクをどの程度評価するかということを踏まえた上で考えていかなければならないだろう。ステップ1を終了した段階からいろんな検討、調査には入るが、ステップ2をしっかりと成し遂げるというところが、一つの早い段階で帰っていただくことが可能な地域が出てくる可能性のある目標ということではないかと思っている」

 ――避難は半年から9カ月は続けないといけないという認識か。

 「まさに避難をしていただいている地域、それからこれから計画的にお願いをする地域、いろんな状況があるので、当然、いま指摘を受けた期間は早い地域、相対的に条件のいい地域になる。なおかつ先ほど申しました通り、様々な状況がこの間、この6カ月なり9カ月の間、様々な今の段階で順調に進めばということでの見通しなので、それを覆すような事情が生じないことが前提になる。という意味では、大変な長期にわたるご無理をお願いすることになること、大変恐縮に存じますが、そういった見通しだ。ただ、こうしたことを進めながらも月単位の日数があるわけだから、逆に、今は基本的にそういう見通しだが、それをさらに前倒しできる余地がないかどうかということの努力は続けてまいりたい」

 ――住民は「また住める可能性があるのか、一生住めないのか」知りたいという声があるが、どう答えるか。

 「それぞれの地域の放射線量、具体的に申し上げれば土壌などに堆積(たいせき)している放射性物質の量とその中身によるということになる。特に非常に原発に近い地域は、そうした調査まではまったくまだ手が付けられていない状況なので、一概に申し上げることは残念ながら今の段階ではできない。ただ、あえて踏み込んで申し上げれば、いま避難されている地域のすべてが帰れない、というようなことにはならないだろう。現状のまま収束させることができれば、時期はともかくとして、しっかりと戻って復興していただく、ということのできる地域は少なからずある。そのためにもこれ以上の悪化をさせない。一日も早く、相対的には減っている放射性物質の排出を早く抑えるということで努力をしてまいりたい。政府としては時期についてはズレがあるにしても、希望される方が元の地に戻って復興できるよう、そこに向けた努力はいま続けているという状況だ」

 ――松本官房参与がおっしゃる10年、20年は住めないという話はリアリティーのある話ではないのか。

 「少なくともそういったことを具体的に判断できるような状況ではまったくない。周辺の、特に放射性物質の高いと思われる地域の土壌等をしっかりと調査をした上でないと、逆に言うと、見通しは立てられない状況だ。そして、それは原子炉からの影響が大きいだけに早く収束をさせた上でないと、土壌を調査しても、逆に言うと、それ以降も相対的に少ない量とはいえ、周辺地域に比べれば、それだけ多く累積をする可能が高い。そういった意味で、早く収束をさせたうえで調査をして、見通しを示したいという状況だ」

 ――20キロ圏内はどのような見通しを持っているのか。

 「20キロ圏内については、まさにある段階、収束に向けて、つまり、6カ月なり9カ月の時期に向けて、遅くとも6カ月、9カ月先、ステップ2が完成された時点で順次、土壌等の調査を進めていく。できるだけそういったことを早い段階からできないだろうかと。そのことの上で見通しがある程度出てくるということだ」

 【仮設住宅】

 ――仮設住宅の完成がすごく遅れている。今後避難するのにどこに行けばいいのかとの声もある。どう急がせるのか。

 「仮設住宅は急がなければならない。これは資材調達の問題と、建築の場所を確保しないとならないことと、建築のための人手が必要だという三つの要素が必要だ。政府としては、資材の確保については相当程度関係事業者に協力を頂いて進めている。さらに強力に用地の確保等については自治体とも相談・連携しながら進めないとならない。これから鋭意、努力を進めているところで、被災者生活支援特別本部でしっかりとこうした状況、見通し等についてできるだけ詳細かつ具体的に報告するようにと指示しているので、そちらにおたずね頂ければより詳細な進行状況が説明されると思う」

 【原発から20キロ圏内】

 ――長官の話を聞いていると、原発に極めて近い地域の住宅は松本参与が言ったように10年、20年住めないというのを可能性として否定しきれないと聞こえるが、政府として専門家から聞いている判断で、全くニュートラルなのかわからない状況なのか、ある程度そういう長期にわたって住めない可能性もあると聞いているのか。

 「ニュートラルだ」

 【水棺法による原子炉冷却】

 ――ステップ1で示された水棺について、長官は震災翌日の会見で、冷却手段で原子炉に水を満たす説明をした際、周辺の格納容器を満たすために10日くらいかかると。すでにこの段階で水棺について指摘していた。東電がやっと今回、水棺をステップ1で示したのは、東電の対応に遅れはなかったのか。

 「私が発生初期の段階で言ったのは、もし圧力容器ですか、内側の方に破損等があって、そこから水が漏れてそれで燃料棒をしっかりと水につけて冷却をするということができない可能性があるという状況のもとで、どうやって水を注入して冷やすかという状況だった。そしてその段階ずっと今も1号機、3号機もそうだと思っているが、格納容器に大きな破損がないということはほぼ間違いないということが想定されている状況だったので、もし圧力容器の方に破損等があって水が漏れている状況だったとしても、圧力容器全体を水で覆ってしまえば燃料棒全体が水に浸される状況になるということの文脈の中で説明したと思う。従って、意図的に格納容器全体を水に浸すということではなくて、燃料棒を水にきちんとつけるということのプロセスの可能性として申し上げた。その後しっかりと冷やすために、いわゆる水棺ということについては専門チームのなかでは検討の一つの検討方向という報告は受けていたが、その後具体的に何らかの報告を受けていたものではない。昨日の、今後の見通しの中で報告されたものだ」

 【東電への再就職】

 ――再就職についてだが、現在再就職している資源エネルギー庁長官はどうなるのか。内閣委員会で法改正にも言及したが、抜本見直し中で法改正による規制強化も視野にあるのか。

 「今言ったように抜本的見直しを行う必要があると思っているが、それについては今原発の状況がこういう状況の中で、そこにどれくらいエネルギーを割けるのかを考えた時には、まずは行政的に出来ることとして自粛を職員に求め、それへの協力を関係電力会社に求めるということを経済産業大臣と相談してやったものだ。なおかつ、現に退職されて東京電力の顧問である方等については、直接的に自粛等を求める対象になりえないが、私は当然こうした政府の対応を見て、それぞれの個人の責任と判断で適切な対応をされるものという風に期待している」

 【計画的避難】

 ――昨日福島に入り、計画的避難区域の対象になる自治体と意見交換した。前日には福山官房副長官も入った。連日、政府高官が現地に行く異例の対応だが、地元の理解はどの程度得られたと考えるか。また実際の指示を出すタイミング、見通しは。

 「タイミングについては、今具体的な様々な詰め、福山副長官が受けて来た様々なご要望にどうお答えできるか詰めをしているところだ。地元のみなさんの理解については、それぞれの首長たちも住民のみなさんの安全と、従来の生活を守るという二つの命題の中で大変苦慮、苦労されている状況だと思う。それについては大変申し訳ないと思うと共に、そうしたことの中で我々は安全の観点からさらに理解を求めるべく努力をすることと、安全性を損なわない範囲で最大限地元のみなさんの要望にどう応えるかさらに努力して理解を求めていくところだ」

18/04 東電社長、国会集中審議で陳謝 首相「原発政策を検証」

2011年4月18日13時55分

参院予算委で参考人として答弁する東京電力の清水正孝社長=18日午前11時50分、飯塚悟撮影

 東日本大震災をテーマにした参院予算委員会の集中審議が18日開かれた。東京電力の清水正孝社長が政府参考人として初めて出席。福島第一原発の事故について「放射性物質を外部に放出させる重大な事故で、大変なご迷惑とご心配をおかけしていることを改めて心からおわびしたい」と陳謝した。

 清水社長は一方で、東電の事故対応については「福島第一原発と連携を密にして復旧に全力をあげてきた。高い緊張感を持って対処した」と理解を求めた。

 菅直人首相は原子力政策のあり方について「安全性を大事にしながら原発を肯定してきたが、従来の先入観を一度白紙に戻し、なぜ事故が起きたのか根本から検証する必要がある」と語った。さらに「核燃料サイクルの問題を含め、必ずしもしっかりした体制がとれていない中で、使用済み燃料が(原発内に)保管されていたことも検証しなければいけない」と述べた。

 首相は東電が17日に示した事故収束への工程表については「どういう形で住民が従来の所に戻ることが可能になるか(一定の段階で)方向性が出せる報告書になっている。政府も全力を挙げて東電の作業に協力し、国の力でやれることはやっていく」と述べた。

 政権の震災対応については「すべて100%とは言えないが、政府が一丸となって取り組んできた。初動が不十分だという指摘はあたっていない。ほかの場合に比べても十分な対応ができている」と語った。

18/04 TEPCO says stabilization months away


TEPCO Chairman Tsunehisa Katsumata at a press conference Sunday

Tokyo Electric Power Co. Chairman Tsunehisa Katsumata said Sunday it would take up to nine months to stabilize the ongoing nuclear crisis at the Fukushima No. 1 nuclear power plant.

At a press conference in Tokyo, Katsumata said, "It will take three months to ensure that radiation leaking from the nuclear power plant is in a continual decline." He added it would then take another three to six months to significantly reduce these amounts.

Katsumata said the company's tasks include cooling the plant's nuclear reactors and storage pools for spent fuel rods; decreasing the amount of radioactive substances released from the power plant; monitoring radiation leaks and decontaminating radioactive substances at areas near the plant.

To reduce the amount of radiation leaking from the power plant--TEPCO's most important goal--Katsumata said it was crucial to prevent hydrogen explosions at reactors Nos. 1, 2 and 3.

"It is also important to prevent water contaminated with radioactive substances from the No. 2 reactor leaking to the sea," he said. TEPCO Vice President Sakae Muto added the company will secure places to keep the contaminated water.

However, Muto said TEPCO will not be able to remove fuel rods from the nuclear reactors within the nine-month period. The removal will be conducted in the next phase, he said.

Katsumata said TEPCO will "do everything possible" to secure the revenue to compensate people affected by the nuclear accident--residents near the Fukushima power plant, farmers and fishermen--by selling its assets, cutting salaries and taking other measures.

Katsumata said the company's safety and operations board will investigate the accident to determine whether human error played any role in the initial crisis.

Katsumata also said he is considering resigning from his post to take responsibility for the accident at a general meeting of stockholders scheduled for late June.

Following the TEPCO press conference, Economy, Trade and Industry Minister Banri Kaieda said he would be unable to declare the nuclear plant was completely safe until the fuel rods were removed from its reactors.

He also hoped to tell evacuees from certain areas whether they would be able to return to their homes within the nine-month period.

(Apr. 18, 2011)

18/04 New N-compensation body in pipeline

The Yomiuri Shimbun

The government is considering establishing an organization for paying compensation to victims of the nuclear accident at Tokyo Electric Power Co.'s Fukushima No. 1 nuclear power plant, according to sources.

Under the scheme, other electric power companies would also be expected to contribute funds to the organization.

The government had earlier reportedly been considering a plan to form a mutual aid system that would be part of a compensation scheme.

The new organization would have two roles: payment of compensation to people affected by the nuclear accident, and establishment of a reserve fund for possible future nuclear accidents.

Special legislation would likely be necessary to establish the organization. The government aims to decide the outline of the scheme by the end of this month.

The new organization would be modeled after the Deposit Insurance Corporation, which provides financial aid in the event of a financial institution going under, the sources said.

The new organization would have two accounts of money reserves. One is a special account for payment of compensation to victims of the nuclear disaster, to which TEPCO will mainly contribute. The other is a general account for compensation for possible future nuclear accidents, which not only TEPCO but also other electric power companies would pay into.

TEPCO would contribute hundreds of billions of yen to the special account from its retained earnings and other sources, and the new organization would give financial aid to TEPCO in the form of government-guaranteed loans from banks.

The new organization would also buy preferred TEPCO shares and the utility would pay back tens of billions of yen annually in the form of dividends for 10 to 15 years.

Under a law covering compensation for nuclear accidents, the government would also contribute 120 billion yen to 240 billion yen to the organization via TEPCO.

If the special account alone could not cover the compensation, the government would provide additional funds. Money in the general account to which electric power companies would contribute would be transferred to the special account for compensation payment under the government's plan.

The government began considering the new organization with a view to subsuming TEPCO's compensation schemes. By doing so, the government aims to avoid the worst-case scenario of electricity supply being interrupted due to TEPCO's financial collapse.

The government also aims to reassure the public concerning the payment of compensation by backing the scheme.

(Apr. 18, 2011)

18/04 Tourist numbers in freefall / Foreign visitors shun popular spots across Japan in wake of disaster


Usually thronging with tourists, Nakamise shopping street in Asakusa, Tokyo, was almost deserted Saturday.

From Hokkaido to Okinawa, the domestic tourism industry has taken a battering in the wake of the March 11 earthquake-tsunami disaster, with foreign visitor numbers in March plunging 50 percent compared with the same period last year.

According to a Yomiuri Shimbun survey, at least 80,000 foreigners have called off visiting Japan and canceled hotel bookings and tours since the Great East Japan Earthquake. Some foreign airlines have also canceled flights to this country.

Many business operators in domestic tourist spots have blamed their plight on damage caused by rumors about the ongoing crisis at the crippled Fukushima nuclear power plant.

"I've never experienced this before," said a 59-year-old employee at Suzuya, a souvenir shop in Asakusa, Tokyo, that opened during the early Showa era (1926-1989). She glanced down the normally packed Nakamise shopping street leading to Sensoji temple, but the street was almost deserted.

Suzuya's sales since the March 11 disaster have dropped more than 90 percent, and it is selling rice and vegetables to stay afloat.

The Noboribetsu hot spring resort in Hokkaido usually attracts about 200,000 overseas tourists per year, but more than 20,000 tourists--mainly from South Korea and Taiwan--canceled their reservations at hotels and inns in the wake of the disaster.

"The whole nation is being affected by rumors exaggerating the danger of visiting because of the nuclear plant accident," an official of the Noboribetsu Tourist Association said.

Okinawa Prefecture is nowhere near the Fukushima No. 1 nuclear power plant, but it saw more than 10,000 cancelations by overseas tourists in the weeks up until April 8.

In Tokyo, the number of non-Japanese taking Hato bus tours to sightseeing spots in the capital and surrounding areas has decreased to an average five people per day, according to Hato Bus Co.

The Tateyama Kurobe Alpine Route route through the Northern Japan Alps linking Toyama and Nagano prefectures was fully opened for the first time in 4-1/2 months Saturday, but has failed to attract its usual numbers.

One of the route's highlights is the Yuki no Otani (Great Snow Valley). Standing 2,390 meters above sea level and boasting 17-meter-high walls of snow, the area attracted 4,000 foreign tourists on its first day in 2010; this year the number was only 60.

Aizuwakamatsu, Fukushima Prefecture, is not designated as an evacuation zone but tourist numbers to the famous Tsurugajo castle, including non-Japanese, fell by 70 percent in the first half of April compared with the same period last year.

The city had just changed the tiles on the castle's roof to a red kind used at the end of the Edo period (1603-1867). "We've been looking forward to this moment, so it's a terrible shame [there aren't more visitors to appreciate the new roof]," said an official of the Aizu-Wakamatsu City Tourism Bureau.

The Matsushima islets in Miyagi Prefecture are designated one of the three most beautiful sights in Japan and usually attract hundreds of thousands of tourists from overseas each year.

The Hotel Matsushima Taikanso boasts a sweeping view over Matsushima Bay and was not hit by the disaster, but all its reservations from Taiwan and Hong Kong have been canceled up until autumn.

An aquarium will open and tourist cruises operating around the area should resume about Golden Week in May.

"I want [tourists] to come and see that we're fine," said Keiji Fukui of the Matsushima Tourist Association.

Accordingly, tourist spots across the nation are doing their best to attract tourists.

In Nikko, Tochigi Prefecture, the mayor has issued a declaration saying food and water in the town were safe, with an English version carried on the city's Web site.

In Beppu, Oita Prefecture, where about 10,000 foreign tourists have canceled hotel reservations, the city held an open forum. It invited foreigners working in the city to help think of ways to bring visitors back to the city Saturday, with one city official saying it wants to promote Beppu's safety on Facebook.

According to the Japan Tourism Agency, tourist agencies in South Korea and Taiwan have even started inspecting tourist spots far from the disaster-stricken areas.

A public radio broadcaster in Hong Kong on Saturday reported that about 70 people had left its shores for Okinawa and Hokkaido for the first time since March 11.

"I want to show my support for the Japanese people by traveling to Japan," one of the tourists was quoted as saying.

(Apr. 18, 2011)