2011年4月18日(月)付
「かかあ天下」をもじった「かかあ電化」なる言葉が1955(昭和30)年ごろに流布したそうだ。一般家庭にも電化の波が広がり始めた時代、高度経済成長の曙である▼家庭の電化程度は次のようだったらしい。第7ランクは電灯だけ。第6はラジオがある。第5はトースター、電熱器。第4は扇風機に炊飯器。第3は電気洗濯機。第2は電気冷蔵庫。第1ランクの家にはテレビも電気掃除機もあった(『キーワードで読む戦後史』岩波書店)▼いまや「第1ランク」でないお宅を探すのは難しい。さらにエアコン、電子レンジ、その他もろもろが居並ぶ。洗濯機でも冷蔵庫でも昔は頭に「電気」とつけた。いつしか消えたのは、電気が空気のような存在になった証しだろう▼冬は寒く夏は暑い。この道理に抗(あらが)う利器エアコンが、家庭用電力消費の約25%を占めるそうだ。夜は暗いという天則を破る照明は約16%。思えば私たちは、自然の摂理を相手に多大な電気を使っている。ありのままに少し立ち戻れば、結構な節電が実現しよう▼電力不足の夏を案じつつ、空調一辺倒で影の薄かった「消夏法」を思い巡らすのはどこか楽しくもある。打ち水、緑陰、川涼み……。「緑のカーテン」の種をまいて育ててみるのも面白い▼どのみち温暖化の問題で、野放図な消費には赤ランプがついていたのだ。眉間(みけん)にシワより、目尻にシワで対処する方が、創意も工夫も湧くだろう。禍(わざわい)を転じて曙光(しょこう)となす知恵と意志が、私たちにはあるはずだ。
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