東京電力が、福島第一原子力発電所の事故収束に向けての工程表をようやく発表した。
6~9か月後には、事故の発生以来続いている放射性物質の漏出を食い止め、避難区域の解除を可能にすることを目指している。
東電は、工程表を確実に実行に移すだけでなく、前倒しもできるよう全力を挙げるべきだ。
工程表は、政府が東電に早急な取りまとめを指示していた。中期的な目標を明らかにすることが、国内外の不安を和らげるうえで欠かせないという理由からだ。
工程表の公表は、福島第一原発が一時の危機的な状況から脱しつつあることを示すものだろう。
実際、これまで原子炉建屋内などは放射線が強いため近づけず、破損状況が分からなかった。ロボットなどを活用し、徐々に把握することができるようになった。
これを踏まえ東電は、収束までの工程について、今後3か月間をステップ1、その後3~6か月間をステップ2と位置づけた。
ステップ1の最大の目標は原子炉の安定的な冷却だ。1、3号機の原子炉を水で満たし、冷却水を循環させて、本来の冷却機能を回復させることを目指す。
ステップ2では、大気中への放射性物質の漏出を最終的に封じ込める。原子炉建屋をシートで覆うことを検討している。
だが、この工程表通り、収束への作業が順調に進むかどうか。
最も懸念されるのが、放射性物質による敷地内の汚染だ。拡大すると作業が難航する。周辺で大きな余震も続いている。
こうした事態への備えも必要だ。今度こそ、「想定外」という釈明は許されない。
この間、避難住民へも十分配慮してもらいたい。
原発事故が収まるまでに、どのくらいの時間がかかるのか。我が家に帰れるのは、いつごろか。避難対象となった約10万人の周辺住民は、不安を募らせている。
海江田経済産業相は、「6~9か月後を目標に、一部地域の方々には帰宅が可能か否か、お知らせしたい」と述べた。
それにとどまらず、政府と東電は、作業の進展状況や避難地域の汚染状況についての情報を正確に、滞りなく提供すべきだ。
帰宅後の復旧・復興策や、住民への具体的な支援策なども検討しなければならない。
(2011年4月18日01時08分 読売新聞)
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