2011年4月18日13時1分
枝野幸男官房長官の18日午前の記者会見は次の通り。
【冒頭】
私から1点報告する。経産省から東京電力に再就職がなされてきていた件に関して、原子力行政のあり方について今後、事故を収束し、その原因を検証した上で、体制や人材育成のあり方も含めて抜本的な見直しを行う必要があると考えているところだが、海江田経済産業大臣とも相談した結果、その結論を得る前の間においても国民の疑念を招かぬよう、原子力安全・保安院や資源エネルギー庁など経産省幹部の電力会社への再就職については、職員に対し自粛措置を講じることとした。電力会社に対しても、この自粛措置を周知して、協力を求める予定だ。詳しい内容は経産省大臣官房秘書課におたずねをいただきたい。
【東電の収束見通し】
――東電が原発事故の収束見通しを発表したが、この評価について、実効可能性の観点からどう考えるか。
「東電の皆さんのある意味ではプラントについての専門的な知識をお持ちの皆さんが、関係機関とも相談をした上で出してきた見通しなので、十分に実施可能性のあるものだと思っている。ただ、例えば今も時々余震が生じているし、またこの間、残念ながらしっかりとした態勢がとれない中での事態の悪化が何度かあったので、決して緊張感を緩めることなく、昨日示された見通しの通り、状況が好転していくべく、政府としても原子力安全・保安院や原子力安全委員会も通じて、状況についての把握、チェックと、それから昨日の収束に向けた見通しについてのステップの進み方についてのチェックを厳しく進めてまいりたいと思っている」
――避難地域の解除について、海江田大臣はステップ1での解除は難しいとの認識を示しているが、仮にそうなら、ステップ2に入ってからの解除をどう考えているか。
「ステップ1の段階においては、進行中においてはなかなか難しいだろうというふうに報告を受けている。また、ステップ2に入った段階においても、一つはそれぞれの地域における放射線量の状況がどうなっているのか。もう一つは、ステップ2の段階に入れば、当然一定の管理された状況に今以上にしっかりとなっていくわけだが、その時点における事態の悪化のリスクをどの程度評価するかということを踏まえた上で考えていかなければならないだろう。ステップ1を終了した段階からいろんな検討、調査には入るが、ステップ2をしっかりと成し遂げるというところが、一つの早い段階で帰っていただくことが可能な地域が出てくる可能性のある目標ということではないかと思っている」
――避難は半年から9カ月は続けないといけないという認識か。
「まさに避難をしていただいている地域、それからこれから計画的にお願いをする地域、いろんな状況があるので、当然、いま指摘を受けた期間は早い地域、相対的に条件のいい地域になる。なおかつ先ほど申しました通り、様々な状況がこの間、この6カ月なり9カ月の間、様々な今の段階で順調に進めばということでの見通しなので、それを覆すような事情が生じないことが前提になる。という意味では、大変な長期にわたるご無理をお願いすることになること、大変恐縮に存じますが、そういった見通しだ。ただ、こうしたことを進めながらも月単位の日数があるわけだから、逆に、今は基本的にそういう見通しだが、それをさらに前倒しできる余地がないかどうかということの努力は続けてまいりたい」
――住民は「また住める可能性があるのか、一生住めないのか」知りたいという声があるが、どう答えるか。
「それぞれの地域の放射線量、具体的に申し上げれば土壌などに堆積(たいせき)している放射性物質の量とその中身によるということになる。特に非常に原発に近い地域は、そうした調査まではまったくまだ手が付けられていない状況なので、一概に申し上げることは残念ながら今の段階ではできない。ただ、あえて踏み込んで申し上げれば、いま避難されている地域のすべてが帰れない、というようなことにはならないだろう。現状のまま収束させることができれば、時期はともかくとして、しっかりと戻って復興していただく、ということのできる地域は少なからずある。そのためにもこれ以上の悪化をさせない。一日も早く、相対的には減っている放射性物質の排出を早く抑えるということで努力をしてまいりたい。政府としては時期についてはズレがあるにしても、希望される方が元の地に戻って復興できるよう、そこに向けた努力はいま続けているという状況だ」
――松本官房参与がおっしゃる10年、20年は住めないという話はリアリティーのある話ではないのか。
「少なくともそういったことを具体的に判断できるような状況ではまったくない。周辺の、特に放射性物質の高いと思われる地域の土壌等をしっかりと調査をした上でないと、逆に言うと、見通しは立てられない状況だ。そして、それは原子炉からの影響が大きいだけに早く収束をさせた上でないと、土壌を調査しても、逆に言うと、それ以降も相対的に少ない量とはいえ、周辺地域に比べれば、それだけ多く累積をする可能が高い。そういった意味で、早く収束をさせたうえで調査をして、見通しを示したいという状況だ」
――20キロ圏内はどのような見通しを持っているのか。
「20キロ圏内については、まさにある段階、収束に向けて、つまり、6カ月なり9カ月の時期に向けて、遅くとも6カ月、9カ月先、ステップ2が完成された時点で順次、土壌等の調査を進めていく。できるだけそういったことを早い段階からできないだろうかと。そのことの上で見通しがある程度出てくるということだ」
【仮設住宅】
――仮設住宅の完成がすごく遅れている。今後避難するのにどこに行けばいいのかとの声もある。どう急がせるのか。
「仮設住宅は急がなければならない。これは資材調達の問題と、建築の場所を確保しないとならないことと、建築のための人手が必要だという三つの要素が必要だ。政府としては、資材の確保については相当程度関係事業者に協力を頂いて進めている。さらに強力に用地の確保等については自治体とも相談・連携しながら進めないとならない。これから鋭意、努力を進めているところで、被災者生活支援特別本部でしっかりとこうした状況、見通し等についてできるだけ詳細かつ具体的に報告するようにと指示しているので、そちらにおたずね頂ければより詳細な進行状況が説明されると思う」
【原発から20キロ圏内】
――長官の話を聞いていると、原発に極めて近い地域の住宅は松本参与が言ったように10年、20年住めないというのを可能性として否定しきれないと聞こえるが、政府として専門家から聞いている判断で、全くニュートラルなのかわからない状況なのか、ある程度そういう長期にわたって住めない可能性もあると聞いているのか。
「ニュートラルだ」
【水棺法による原子炉冷却】
――ステップ1で示された水棺について、長官は震災翌日の会見で、冷却手段で原子炉に水を満たす説明をした際、周辺の格納容器を満たすために10日くらいかかると。すでにこの段階で水棺について指摘していた。東電がやっと今回、水棺をステップ1で示したのは、東電の対応に遅れはなかったのか。
「私が発生初期の段階で言ったのは、もし圧力容器ですか、内側の方に破損等があって、そこから水が漏れてそれで燃料棒をしっかりと水につけて冷却をするということができない可能性があるという状況のもとで、どうやって水を注入して冷やすかという状況だった。そしてその段階ずっと今も1号機、3号機もそうだと思っているが、格納容器に大きな破損がないということはほぼ間違いないということが想定されている状況だったので、もし圧力容器の方に破損等があって水が漏れている状況だったとしても、圧力容器全体を水で覆ってしまえば燃料棒全体が水に浸される状況になるということの文脈の中で説明したと思う。従って、意図的に格納容器全体を水に浸すということではなくて、燃料棒を水にきちんとつけるということのプロセスの可能性として申し上げた。その後しっかりと冷やすために、いわゆる水棺ということについては専門チームのなかでは検討の一つの検討方向という報告は受けていたが、その後具体的に何らかの報告を受けていたものではない。昨日の、今後の見通しの中で報告されたものだ」
【東電への再就職】
――再就職についてだが、現在再就職している資源エネルギー庁長官はどうなるのか。内閣委員会で法改正にも言及したが、抜本見直し中で法改正による規制強化も視野にあるのか。
「今言ったように抜本的見直しを行う必要があると思っているが、それについては今原発の状況がこういう状況の中で、そこにどれくらいエネルギーを割けるのかを考えた時には、まずは行政的に出来ることとして自粛を職員に求め、それへの協力を関係電力会社に求めるということを経済産業大臣と相談してやったものだ。なおかつ、現に退職されて東京電力の顧問である方等については、直接的に自粛等を求める対象になりえないが、私は当然こうした政府の対応を見て、それぞれの個人の責任と判断で適切な対応をされるものという風に期待している」
【計画的避難】
――昨日福島に入り、計画的避難区域の対象になる自治体と意見交換した。前日には福山官房副長官も入った。連日、政府高官が現地に行く異例の対応だが、地元の理解はどの程度得られたと考えるか。また実際の指示を出すタイミング、見通しは。
「タイミングについては、今具体的な様々な詰め、福山副長官が受けて来た様々なご要望にどうお答えできるか詰めをしているところだ。地元のみなさんの理解については、それぞれの首長たちも住民のみなさんの安全と、従来の生活を守るという二つの命題の中で大変苦慮、苦労されている状況だと思う。それについては大変申し訳ないと思うと共に、そうしたことの中で我々は安全の観点からさらに理解を求めるべく努力をすることと、安全性を損なわない範囲で最大限地元のみなさんの要望にどう応えるかさらに努力して理解を求めていくところだ」
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