東京スカイツリーのおひざもと、東京都墨田区。地元の町工場の2代目、3代目たちが来月、「連合体」をたちあげる。仕事場で捨てていた廃材は財産だ、と再利用して商品をつくり販売する。「社会に配る」という意味を込め、その名も「配財プロジェクト」だ。
墨田区で60年余り前に創業し、5年前に江東区に移った「小高莫大小(めりやす)工業」。従業員10人の町工場が「ヒップウオーマー」という商品を開発し、ネットなどで売り始めている。
腹巻きの幅を50センチほどにして、腰からお尻の下まで覆う。1890円。
洋服の襟やそでの部分をつくって、アパレルに納める。端材がでて、流行の色からはずれた生地も使えない。すべて捨てていた。
だが、3代目の小高集(つどい)さん(39)は、知人たちから「もったいない。使えるじゃない」と言われていた。
昨年の3月11日、東日本大震災がおきた。被災した人たちが、寒さにふるえているのを知った。
「いますぐ、ぼくら町工場らしい支援をしよう」
そう思った小高さんは、仲間らに声をかけた。
捨てるはずだった生地を使い、ミシンをフル回転。アップリケもつけたヒップウオーマー600枚をつくり、被災地に送った。
改良を重ねて昨年6月、商品化した。半年で約80枚売れた。
配財プロ立ち上げの話が持ち上がったのは、2010年夏だった。
廃材は価値がないどころか、捨てるのに経費さえかかる。でも、町工場の経営者たちが集まり、デザイナーらを巻き込めば、廃材が宝に見え、価値が生まれるのでは、と考えた。
参加するのは、風船屋「マルサ斉藤ゴム」の3代目の斉藤靖之さん(36)。印刷がずれたり、つくる途中で割れたりした風船の破片。「捨ててしまうのに罪悪感がありました」
岩井保王さん(42)は「岩井金属金型製作所」の3代目。佐藤憲司さん(41)は、ウレタンを型で打ち抜く「サトウ化成」の、浜野慶一さん(49)は、板金加工「浜野製作所」のそれぞれ2代目だ。
ほかにも、めっき工場、木工所、ナット製造、など10人をこえる経営者が賛同。地元のデザイナーや工芸作家も加わる。