2011年3月29日19時24分
枝野幸男官房長官の午後4時からの記者会見の内容は次の通り。
【冒頭発言】
「原発事故に関する周辺地域のみなさんへの生活の支援について、被害の拡大防止策とともに、周辺地域の方々への避難措置など、緊急的な対応に全力で取り組んできた。被災者の方々、大変な環境のもとで生活されており、特に情報を正確・迅速に知りたいというニーズは極めて強いと認識している。この被災者の方々への生活支援、情報提供についてはこれまでも充実に努めてきたが、さらにこの体制を強化するべく、本日原子力災害対策本部のもとに原子力被災者生活支援チームを特別チームとして立ち上げ、海江田経産大臣をチーム長に、福山官房副長官をその代理に、松下経産副大臣を事務局長とし、その下に経産省を中心にして関係各省の事務方に結集をしてもらい、被災者の避難受け入れ体制、除染体制の確保、被災地への物資などの輸送補給、被曝(ひばく)にかかる医療の確保、環境モニタリングと情報提供など生活支援の充実に総合的に取り組む」
「今日午前中の会見で、半壊した被災者が国の定めた被害認定基準により避難所に入れないことがあるという情報がある、という指摘があった。改めて確認したが、国として住宅の被害認定結果によって、被災者が避難所に入居できないなどの基準は設けていないと確認した。それぞれの自治体において、被害認定結果にかかわらず、救助を必要とする人を適切に避難所に受け入れて頂きたいと考えるが、もちろんキャパの問題などあるので、生活支援本部の方で様々な支援を行って避難所に適切に必要な方が入って頂けるよう、さらに自治体との連携を強化したい」
【クリーンエネルギー】
――今日総理が参院予算委で、原発事故を受けて太陽やバイオなどクリーンエネルギー開発を日本の新たな柱にしたいと述べたが、復興ビジョンの柱になるのか。
「復興ビジョンをとりまとめるのは本部長たる総理であると思う。今、そこに向けた準備段階、助走段階の様々な検討をしているが、今回の被害などを踏まえたら、一つの大きな柱になるであろうという検討を進めているのは間違いない」
――原子力政策の見直しが一つの柱になるということか。
「いや、むしろ、太陽光やバイオであるとか、いわゆるクリーンエネルギーを強化していく、今回の被災の被害を乗り越えて未来に向けて希望の持てるビジョンを描いていく一つとして、クリーンエネルギーをさらに強力に推進していくということが、一つの大きな柱になりうるのではないかと検討している」
――玄葉大臣が閣議後会見で、エネルギー基本計画の見直しは避けられないと述べた。国民感情からして、核エネルギーは見直さざるを得ないのか。
「原子力発電所の計画、あるいは政策の基本的な考え方については、今日の午前中の会見でも言ったが、まずは今の事態を何とかこれ以上被害を拡大させないよう収束をさせていくということが、まずは全力をあげて取り組まねばならない課題だ。これが何とか収束できたあかつきには、当然今回のことについての検証も必要だと思っているし、そうした検証も踏まえて、その時点でしっかりと考えていかねばならない」
【各県の復興ビジョン】
――宮城県知事が県の復興計画基本方針を4月中にとりまとめたいと述べた。被災地との復興ビジョンとの連携ははかられるのか。
「今回、この復興に向けてまだ助走段階ではあるが、今回の震災の一つの大きな特徴は、被災地が非常に広範にわたっている。岩手・宮城・そして福島、さらには茨城や千葉でも被災している。あるいは青森でも受けている状況だ。もちろん、東京でも亡くなられた方がいた。復興という意味では、今言ったような地域が対象になろうかと思うが、相当それぞれの自治体ごとの意見や希望は当然復興にあたって重視しなければならない」
「それぞれの県ごとにおいても、何度か言ったが、仙台市のような政令市、大都市の海岸沿いの地域から、非常に小さな村の集落まである。それぞれ地域の事情や要望、希望は非常に多様性があるだろう、多岐にわたっているだろうということは、今回の震災の大きな特徴であろう。それをしっかり踏まえたうえで、国としてできることをしっかりやっていく、こういう視点が重要であるということは、この間復興に向けた助走段階での検討では出てきている」
【原発の津波対策】
――今日の参院予算委で菅総理が福島原発事故で、津波に対する認識が大きく間違っていたのは否定しようがないと述べた。全国で稼働中の原発について、津波への安全性はどう認識してるか。
「当然、今回の事故を受けて全国の原発の安全性の確保については、今しっかりとチェックし、必要な施策があるならそれを実施させるということについて、経産省において早急な検討を進めている。そう遠くない段階で、まず第一弾としての考え方は示せるのではないかと思う」
――完全に安全だとは言い切れないのか。
「従来の想定を超える、従来の対策では十分ではなかったという事態が発生している中、しっかりともう一度改めてチェックをしなければならない状況にある。それを鋭意進めさせているところだ」
――過去に仕分けで事業仕分けでスーパー堤防が対象に。堤防の重要性、今後の堤防の強化についてどう考えるか。
「まさに今回の津波の規模と被害の状況、それに対してこれまでの防災対策として行われてきたさまざまな施策の効果は、これはしっかりと検証しないとならないと思う。その検証を踏まえ、どういった形で津波に対しての防災を充実させるのかは、まさに今回の被害をしっかりと検証したうえで打ち出していかねばならないと思っている」
――女川原発は最高9.1メートルの津波を想定して被害を免れた。一方で、1メートル前後しか想定していない原発もある。国として一定の津波基準を設けるよう指示する考えはあるか。
「今、具体的にまさに様々な事態にどんな事態が生じても、事故につながらないような対応策というのは、それぞれの原子力発電所の置かれている状況、事情によってもとるべき施策は違いがあると思う。そうしたことを含めて全国の原発の状況についての再確認と、さらに今回のことを踏まえて必要な施策があれば、それについての検討を進めていく」
【原発作業員の労働環境】
――原子力安全・保安院が昨日の会見で、福島原発の最前線で働いている人の過酷な労働環境を明らかにした。
「本当に原発の現場において、様々な対応・作業にあたっていただいているみなさんには大変な危険のなかでの作業でもあるし、過酷な条件のなかでの作業ということで本当に頭の下がる思いだ。政府としても、あるいは東電を通じても、まずそうしたみなさんの様々なバックアップというかフォローアップについてはこの間も指示をしてきたし、我々自身のできることについてはやってきたつもりだが、必ずしも十分ではない」
「当然のことながら、事故の拡大を防ぐことが優先されざるを得なかったという経緯もあるが、それにしても長期にわたっているので、さらにこれを強化したい。特に国としては、交代しうる方については交代しながら、この間も海保、国交省だったかの船なども出して、そこで休息がとれるような状況を部分的ではあるがやった。さらにこれを強化し、できるだけ多くのみなさんに交代で対応できる部分については、交代で対応してもらう。当然現地における様々な物資などについても対応する。それから交代で休息をとってできるような状況については、できるだけそれのサポートをする」
【新年度予算】
――新年度予算が参院で否決されたが、事実上、成立する見込みだ。
「政府としてはベストのものという思いで国会に提出した予算案なので、それがこういう形ではあるが成立することは前向きに受け止めたいと思っている。同時に今回は国会での審議の途中で、歴史的にも過去に例のないような大きな災害に直面している状況なので、むしろ予算を成立させていただき、そのうえで震災に対する対応をしっかりやっていくというさらに大きな課題が目の前にあるので、そちらに向けて努力を明日以降してまいりたい」
【与野党協議】
――総理が復旧・復興の補正予算に関して、何を優先するかは与野党で議論したいと述べた。マニフェストの見直しも含めた協議はどうするか。
「まさに総理が言った通りで、まず最優先で復旧復興にあたらなければならない。そこには相当なエネルギーを要するということは間違いないことで、最優先でやらなければならない大きな仕事、大きな課題を最優先にして、その上で、その財源やそこに振り向ける様々な資源、お金以外のことも含めて、必然的に議論のなかで固まってくるものだと思っている」
――野党との協議はどうなるのか。
「具体的には各党間の協議なので、党の側ともご相談しながら組み立てていかなければいけないと思っているが、この間も震災に対する救命、救援、あるいは原子力発電所の対応についても、政府のみならず、与党のみならず、野党の皆さんからも様々な有効なご提言をいただいたり、あるいは有意な情報をお寄せいただいて、そのことが政府としての対応に生かさせていただいているので、その延長線上でさらに様々な機会を通じて野党の皆さんの知恵や情報を十分に生かせるような対応を与党と相談をしつつ組み立ててまいりたいと思っている」
【閣僚の増員】
――閣僚数を増やして野党に入ってもらうという話もあったが、現状は。
「様々な経緯のなかで、いったんは保留になっているというか、ペンディングになっているという状況だと認識している。今後、もし可能であるならば、そういったご相談ができる状況があれば、そういった相談をさせていただければ、政府としてはありがたいということだが、まさに与野党間で一致できることからやっていくことが必要だ」
【特例公債法案】
――本予算の財源の特例公債法案は成立の見込みがない。成立に向けてどう考えるか。
「これから復興に向けた補正予算をはじめとした様々なご相談をさせていただかなければならないということも含め、これは国会に出している法案についての扱いなので、党が中心になって、この部分に限って言えば、様々、野党の皆さんとご相談をしていただくことになろうと思う」
【福島第一原発】
――福島第一原発について、東電に任せても有効な対策、抜本的な対策がとれていないのでは。
「原子力発電所の対応については、政府としても万全の態勢は組んできている。結果的にまだ収束の方向に向かう状況になっていないのは大変残念だし申し訳ないと思っている。決して東電に任せているということではなくて、制度的には東電が事業主体だったり、様々な主体であることはあるが、政府としては細野首相補佐官、時には海江田経済産業大臣が東電に出向いて東京電力とのコミュニケーションをできるだけしっかりとさせ、なおかつそこにしっかりと政府としての考え方などを伝えながら進めてきている」
「政府としても原子力安全委員会、あるいは原子力安全・保安院のみならず、一部批判もあるが、様々な専門的な知識をもっている方の知識も借りながら対応策について政府としての姿勢、方針をしっかりと示しながら、東京電力に対して、直接政府ができない部分については強く指示をしながら進めてきている」
【日米協力】
――原発の対応について。日米両政府で合同連絡調整会議を設置し、その下に課題ごとの検討作業チームを設置するのか。
「この間、アメリカ軍、NRC(原子力規制委員会)などアメリカの関係する機関の皆さんには物の面ではもちろんだが、様々な知見、知識含めて協力いただいている。これについてはほぼ連日、日本政府の側の関係者とアメリカ側の関係者の皆さんとコミュニケーション、ディスカッションの機会をしっかりともって、専門家レベル、あるいは我が方では福山副長官や細野首相補佐官なども含めてしっかりとコミュニケーションをとっていることは間違いない。チームがどうこうなっているというよりは、そうしたことのなかでいろいろ多岐にわたる様々な議論をしている。そうしたところでの議論を踏まえて、我が国と政府としての対応を参考にさせてもらったり、その場の議論を踏まえて様々なアメリカからの支援もそこからつながっているという部分も生じている」
――今後、どういうサポートを期待するか。
「アメリカには日本にはない知見や経験があるから、それを踏まえた日本にはない能力をもっている部分もあると思っている。どこということに限らず、この事態の収拾と国民の安全確保に向けて、アメリカ側の知識、経験、能力の点で活用させてもらえる部分については最大限生かさせてもらいたいと思っているし、アメリカ側からもそうした大変ありがたい姿勢を示してきてもらっていることについては大変感謝している」
【税と社会保障】
――総理は一体改革について改めてスケジュールを検討したいとの認識。与謝野大臣はスケジュール通りということで、閣内で認識が一致していないのではないか。
「決して矛盾をしていることを2人が言っているわけではなくて、一方で一体改革については、今回の震災があったからといって高齢化や少子化が待ってくれるわけではない。従って、本来のスケジュール通りできるならばそれが望ましいことだ。特に担当大臣である与謝野大臣としては当初の計画のスケジュールを踏まえながら様々な作業を進めていただく。これは一方で当然のことだろうと思っている」
「しかしながら、まさに総力をあげて取り組まなければならない震災と原子力事故に政府全体としては直面しているわけだから、スケジュール通り進めたいということの一方で、そのことが震災、事故対応に遅れをきたすことがないように優先順位はしっかりとその都度見ながら進めていくということで、総理は後者の方の趣旨を言ったんだと思う」
――震災が長期化するなかで、6月の実現可能性はどうみるか。
「簡単ではないだろうというのは当然のことだろうと思っている。ただ一方で、だからといって震災対応や原子力発電所事故対応に影響を及ぼさない部分については当初の目標があるわけだから、それに向けた作業はできるだけ進めていただくことも一方ではきちっとしておかなければならないことではないかと思う」
【被災者の雇用支援】
――被災者の雇用について、来週中に支援策をまとめるということだが、どう考えるか。
「短期の話と長期の話と両面をしっかりと考えていかなければならない、対応していかなければならないと思っている。まずは短期の問題については、なかなか現に事業そのものができない地域が多々ある。そうしたことのなかで、一方では例えば仮設住宅の建設をはじめとして、震災に対する対応で何らかの仕事をしていただかなければならない、していただくことが必要な部分がある。そうしたことを進めていくうえでは現に震災によって仕事が失われている方々が少なからずいるわけだから、当然、その部分について配慮、考慮をする形で物事を進めていくということは当然必要なことだと思っている」
「一方で、大きな被害を受けた地域については、中長期的にそこで復旧、復興をしてそこで暮らしていくうえでの将来的な雇用の確保ということは復興計画をつくっていくうえでも大きな柱、重要な視点として考えていかなければならない」
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