Saturday, May 28, 2011

23/05 編集手帳

5月23日付 

 「お前がこんなに浪費家だったとは……。このままでは俺の財布まで空っぽになる」「少しやり繰りに失敗したからといって、横暴過ぎるわ」◆熟年夫婦のケンカにも似た声が、欧州共通通貨ユーロを使う国々から聞こえてくる。ユーロ圏では、ギリシャやポルトガルが借金で首が回らなくなった。わが身を削って仲間を支援せざるを得ないドイツなどが怒るのはもちろん、支援を受ける方も厳しい歳出削減を迫られて憤っている◆「ONE DAY IN EUROPE」という映画がある。同じ日の欧州4都市の出来事をつづったオムニバス作品で、一口に欧州と言っても、人々の言葉や気質、社会通念がいかに異なるかを教えてくれる◆欧州はそんな違いを抱えながら、国家の枠を超えて統合の道を歩んできた。互いに戦争を繰り返した苦い経験からである。その統合の象徴がユーロだった◆わが国では東日本大震災後、独身者の結婚願望が高まっているという。性格や考え方の違う2人が一緒によわいを重ねれば、危機が訪れることもある。問題はそれを克服する覚悟があるかどうか。ユーロ危機の教訓である。

(2011年5月23日01時07分 読売新聞)

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