Saturday, May 28, 2011

27/05 編集手帳 Road map

5月27日付 

 結婚披露宴では来賓も緊張するらしい。ある披露宴で実際に述べられた祝辞より。「新郎新婦のお二人が幸せな家庭を築いていかれることを、私は疑って信じません」◆固く信じ合い、隠し事をすることなく、手を携えて苦難を乗り越えていく――「統合対策室」を設けて原発事故にあたる政府と東京電力も新郎新婦の関係に似ていなくもない。世間から何かスピーチを贈るとすれば、「あなたがたの発表を、私たちは疑って信じません」となろう◆これまで「あった」と発表してきた海水注入の中断は、じつは「なかった」という◆原子炉を冷却する注水を中断したか、しなかったかは、火災のさなかに消火栓を閉めたか、閉めなかったかに相当する重大事である。その事実関係が2か月半もたって二転三転する。発表の何を信じたらいいのだろう◆手もとの『英和笑辞典』(研究社出版刊)には、【mirage】(空中楼閣)を解説して〈つづりがmarriage(結婚)に似ており、意味もほとんど同じ〉とある。これほど意思疎通の悪いご両人である。例の「工程表」が空中楼閣と疑われても仕方がない。

(2011年5月27日01時25分 読売新聞)

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