Saturday, May 28, 2011

23/05 よみうり寸評

5月23日付 

 昭和18年(1943年)、大映京都の作品「無法松の一生」は稲垣浩監督、阪東妻三郎主演の名作だ◆この物語に欠かせない子役として沢村アキオ(本名加藤晃夫)が出演している。幼顔からもそれとわかる後の長門裕之。6歳で子役デビューし77歳まで一筋道の俳優人生を21日に終えた◆家系図をたどればそのまま日本映画史を語ることができるほどの映画一族に生まれ育った。父沢村国太郎、母マキノ智子、弟に津川雅彦、祖父牧野省三、叔母沢村貞子、叔父加東大介……。おしどり夫婦といわれた妻南田洋子は09年10月に亡くなった◆映画「太陽の季節」で共演して結ばれた愛妻。死なれて「すごい喪失感と失恋を久々に味わった」と言った。それから1年7か月、後を追うような死去◆喪失感の大きさがうかがわれる。おしどり夫婦の一方が先立つと残された方は大変落ち込むが、どちらかというと男性の方が立ち直りが遅いとも聞く◆日本映画史とともに生きた長門裕之逝く。同い年「昭和九年会」の悲しみは深い。

(2011年5月23日13時52分 読売新聞)

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