5月15日付
「食べにきてくれないかな」。大好きなお菓子を校門に置いておけば、きっと小学4年の娘は帰ってくる。そう信じ、毎回ケーキやジュースを欠かさず、がれきの間や沼地を捜し回る母がいる◆全校児童の7割が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。今も父母たちは独自にわが子の捜索を続けている。当時、近くの北上川からあふれ出た津波は2階建て校舎の屋根を越え、避難途中の児童の列をのみこんだ。校舎は廃虚と化した◆幼稚園から高校まで、この震災では約6200校が被災した。建て替えや大規模復旧工事が必要な学校は200以上。その再建に教訓を生かすなら、目指す学校像は「防災拠点」にもなりうる堅牢 (けんろう) な中高層ビルかもしれぬ◆自家発電施設や仮設トイレ、簡易浄化槽などを備え、食料・毛布を備蓄して避難所の機能を併せ持ちたい。公共施設や病院、高齢者施設なども近接させれば「コミュニティ拠点」にもなる◆そこで充実させるべきは被災地ならではの「防災教育」であろう。災害から身を守る知識だけでなく、災後を生き抜く力を、子供たちに身につけてもらいたい。
(2011年5月15日01時11分 読売新聞)
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