5月25日付
「失敗から目を背け、隠そうとしたり、なかったことにしようとしているうちは、同じ失敗を繰り返す。新たに別の失敗も生む」◆〈失敗学〉の提唱者で東大名誉教授の畑村洋太郎さんが著書「失敗学の法則」にこう書いている。その畑村さんを政府が東京電力福島第一原発の「事故調査・検証委員会」の委員長に起用した◆〈失敗は成功の母〉とは、だれもが頭では知っている。が、いざ大失敗をすると、うろたえて隠したり、目を背けたり、過小評価などをしがちだ。原発事故も例外ではあるまい◆巨大地震と津波を「想定外」とした最初の逃げ口上に始まり、海水注入をめぐる「言った」「言わない」騒ぎ、今ごろ核燃料メルトダウン(炉心溶融)の報告◆などなど、政府と東電の情報発信は遅い、あいまいで世界にも不信を広げた面が少なくない。失敗学の経験と手法を生かし畑村委員会に徹底検証を望む。調査は深く広くどこにも聖域はない◆政府も東電も積極協力が肝要。この期に及んで資料隠しなど無論無用だ。
(2011年5月25日13時50分 読売新聞)
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