5月19日付
港 宮古 釜石 気仙沼……。三陸沿岸の漁業は巨大津波で甚大な被害を受けたが、ようやく復興への動きが伝えられ始めた◆岩手県宮古市でタコ漁を再開した人、宮城県石巻市でカキ養殖業者へ稚貝の出荷が始まった、気仙沼市魚市場の復旧作業が進んでいる……うれしいことだ◆カキ養殖家でエッセイストでもある畠山重篤さんの寄稿(12日・本紙文化面)を思い出した。「我が家も今月末、カキ養殖の筏をつくることにした。石巻の万石浦にカキの種苗が残っていたのだ。早ければ来春水揚げできる」とあった◆畠山さんの住む気仙沼市の舞根地区は52世帯中、44世帯が流された。それでも「これだけ海に蹂躙されながら海に怨みをもつ人はいない」◆「私もその一人だ。海しか生きる場がない。これが漁民の発条だ」と氏の寄稿は結んでいる。三陸のリアス式海岸は津波の被害を大きくもするが、一方では森の養分が川を通して海に入り好漁場になる◆暴れた後は海の人々にきっと豊かな恵みのお返しがあると信じたい。
(2011年5月19日14時00分 読売新聞)
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