被災地を何とか応援したい。そう思う人は、多いだろう。
ボランティアのように現地に直接足を運ばなくても、普段の生活の中でできる支援策がある。被災した地域の産品を買うことだ。
毎日の食卓に載るコメ、野菜、魚介類。全国に知られた銘酒、銘菓、工芸品。東北や北関東の特産品は数多い。
こうした物品の購入は、消費を通じて地元産業を元気づける復興支援と言えよう。「バイ(買う)東北」の輪を広げたい。
震災から1か月が過ぎ、壊滅的な被害を受けた被災地の一部企業が再建に向けて動き出した。
きっかけの一つとなったのは、岩手県の蔵元が「自粛せず、東北の酒を飲んでほしい」と訴えたネット動画だった。50万件以上の視聴があり、注目を集めた。
宮城県石巻市にある老舗の笹
ささ
かまぼこ店には、全国から約1万通の励ましの手紙が届き、営業再開を後押しした。
地域に雇用と所得をもたらす地元企業の復活は、被災地に勇気と活力を与えるだろう。
「応援消費」の動きは、全国に広がっている。百貨店やスーパーが農産物セールを開催し、ホテルや居酒屋は東北地酒フェアに取り組んでいる。
被災県のアンテナショップを訪れる人、社員食堂のメニューに東北産の食材を取り入れる企業も目立つ。一過性にせず、息の長い取り組みにすることが大事だ。
東北は、観光資源も豊富だ。旅行に出かけて応援する手もあろう。仙台空港は13日、国内線の一部が運航を再開した。東北新幹線も月内に全線開通の見通しだ。
仙台の七夕まつりなど、東北3大祭りは予定通り開催される。旅行業界は多彩なツアーを企画し、需要を喚起してもらいたい。
応援消費が盛り上がる一方で、原発事故の風評被害などが尾を引き、被災地の農産品は大きく値崩れしたままだ。
小売業者など売り手側が「消費者に受け入れられない」と、被災地の青果物の仕入れを敬遠しているためとみられる。
物産フェアがにぎわうのはいいが、販売量はそう多くはない。生産者が望むのは、通常取引で販売量や価格が正常化することだ。
消費者も、風評に惑わされず、自分の目で商品を見定め、冷静に行動することが必要であろう。
(2011年4月23日01時28分 読売新聞)
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