4月14日付
大リーグ・アスレチックスの主砲、ホセ・カンセコ選手がレンジャーズに移籍したのは1992年9月である。試合中、いわゆるウエイティング・サークル(次打者席)にいるところをベンチに呼び戻され、トレードを通告された◆日本でも驚きをもって報じられたから、ご記憶の方もあろう。球団側に急ぐ事情があったらしいが、よりによって選手にとっての“戦場”で告げなくても…と、気の毒に思わぬでもない◆何ごとにも頃合いがある。戦力として疑問が生じた場合でも、“戦場”にいる人の進退は軽々に扱ってはならないだろう◆原発事故の対応や、統一地方選の敗北をめぐり、菅首相の責任を問う声が民主党内で音量を増している。首相も“戦場”の人には違いない。情報開示の遅れや不要なパフォーマンスなど、手腕が心もとないのも事実だが、手術中に執刀医を交代させるにも等しい党内抗争はもっと危険だろう。すべては、放射能を封じ込め、「フクシマ」を「福島」に戻してからの話である◆手ごわい原発相手の試合に勝利が見えたあとならば、トレードや解雇を通告する時間はいくらでもある。
(2011年4月14日01時07分 読売新聞)
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