Saturday, April 23, 2011

22/04 よみうり寸評

4月22日付 

 自分の家、自分の土地であって、そうでない。きょう22日午前0時から〈立ち入り制限〉の表示が〈立ち入り禁止〉に変わった◆福島第一原発から20キロ圏内に〈避難指示〉が出た日から着の身着のまま、もう40日以上も避難所生活の人たちは、避難指示区域が〈警戒区域〉に変わったため許可なしには帰ることもできない◆白樺しらかば 青空 南風……あの故郷ふるさとへ帰ろかな 帰ろかな――。「この歌を歌って今回ほど共感と喝采をもらったことはない」と〈北国の春〉の歌手千昌夫さん◆この春ほどだれもが〈故郷〉を強く意識した春はなかったのではないか。壊滅的に姿を変えた故郷、去ることを強制された故郷、避難所で遠く思う故郷◆そんな折、避難所を訪れた菅首相。「早く原発を抑えてくれ」「早くうちへ帰らせてくれ」「もう限界」と怒号に包まれた。ボタンのかけ違い、間の悪いパフォーマンスを見るようだった◆「全力をあげる」。最高指揮官の胸を打たない言葉を聞き、むなしい振る舞いを見るたび悲しくなる。

(2011年4月22日13時57分 読売新聞)

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