4月10日付
〈リーダーとは希望のディーラーである〉。ナポレオン皇帝の言葉とされる箴言の一つだ。トランプの札を配る親をディーラーと呼ぶため、「希望を配る人」と訳されることが多い◆「希望を扱う商人」という邦訳もあるが、あながち悪い意味ではなかろう。天と民、あるいは民と民とを結ぶ、「希望の特約代理人」といったニュアンスだろうか。いずれにせよ、政治のリーダーに今、求められるものをこれほど端的に示す言葉はない◆大震災から1か月の節目を前に、きょう10日、東京をはじめ12都道県の知事選などで投開票が行われる。未曽有の災厄が収まらぬ中、いや、進行中に実施される統一地方選挙である◆被災地の苦境を慮って、静かな舌戦だった。ただ、候補者名を連呼するだけの選挙カーが減ったのは良いとしても、“自粛”が投票率の低下となって表れるようでは困る◆震災の影響は、これから日本中のさまざまな分野でじわじわと、確実に顕在化してくる。災い転じて福となすほどのビジョンを示してくれる「希望のディーラー」が必要だ。1枚の投票用紙が、かつてなく重いものになるだろう。
(2011年4月10日01時07分 読売新聞)
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