(4月17日付・読売社説)
先進国と新興国が、東日本大震災を世界経済の新たな懸念材料とし、連帯して日本復興を支援する姿勢を打ち出した。
大震災に直撃された日本経済の停滞が長期化すれば、世界経済にとってもマイナスだ。各国が危機感を共有し、日本の早期復興に期待したと言えよう。
日米欧と中国などが参加し、ワシントンで開かれていた主要20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明を採択して閉幕した。
声明のポイントは、大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故が、中東・北アフリカの政情不安とともに、「世界経済とエネルギー価格の不確実性を増した要因」と指摘したことである。
金融危機を克服した世界経済は4%台の成長が続いている。しかし、日本経済は当面、景気減速が避けられない。早期復興で経済を再建できるかどうかが、世界経済の先行きを左右する。
このところ、原油価格は急騰している。中東情勢と原発事故で火力発電の依存が強まると、価格が一段と高騰する恐れもある。
声明が「日本国民との連帯」や「いかなる協力も提供する」と明記した背景には、日本リスクに対するG20の懸念がうかがえる。
為替相場の無秩序な動きを防ぐ協調も声明で再確認された。円相場は大震災直後に急騰し、日米欧の協調介入で円安に反転しているものの、一進一退の状況が続いている。円相場の安定を維持することが肝要だ。
一方で声明は、日本の経済と金融部門が基本的には「強靱 (きょうじん)である」との認識を強調した。
日本はこうしたG20の期待に応え、世界経済の不確実性を取り除く必要がある。政府はまず、遅れている今年度第1次補正予算案の編成と成立を急ぎ、復興への確かな道筋をつけるべきだ。
原発事故の影響で、日本の農産品などに対する輸入規制の動きが諸外国に広がっていることは看過できない。
日本が今回、各国に冷静な対応を求めたのは当然だ。風評被害を防ぐためにも、原発事故を早期に収束し、正確な情報発信を続けていかねばならない。
世界経済の不均衡是正に向け、G20が相互に監視する「参考指針」で合意したことは前進だ。監視対象国などを詰め、実効性ある指針の運用が求められよう。
(2011年4月17日01時22分 読売新聞)
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