(4月21日付・読売社説)
東日本大震災の後、余震に加え、各地で誘発地震が続いている。
3月11日に起きた本震があまりに大きかったため、日本列島の地殻の状態が変わったと、多くの専門家が指摘している。
政府の地震調査委員会も、「いつ、どこで大きな地震が起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らしている。しかも、この状態は何年も続くかもしれない、という。
余震が続いている被災地はもちろん、他の地域でも、被害を最小限にとどめるための備えを再点検しなければならない。
この1か月余で、マグニチュード(M)5以上の余震は計400回を超えた。M7以上のものも5回ある。平時であれば、M5以上の地震は年に平均150回程度しか起きない。
多発の理由は、本震で日本列島が最大約5メートルも東の方向へ膨らんだことだ。これまでは太平洋側から西へと押され、歪(ひず)んでいた。
この歪みが本震の際に一気に解放され、これまで抑え込まれていた断層が活動しやすくなった。
特に心配されるのが、大津波の再襲来だ。本震の震源域付近は地殻が今も安定せず、割れて地震が起きる可能性が高い。このタイプの地震は、規模が小さくても大きな津波を発生させやすい、と複数の専門家が指摘している。
被災地域では、防潮堤が破壊されるなど、津波への防備が震災前より手薄になった。岩手、宮城、福島の3県では、海岸沿いで地盤沈下も広域に起きている。高台の地盤が緩んでいる所も多い。
復旧活動のため海岸沿いで活動する人が増えた。帰宅して生活を再開し始めた人もいる。緊急時の避難路を確保しておきたい。
被災地の外でも、栃木・群馬県境、東京湾など16地域で地震が起きており、気象庁などが監視を強めている。1万3000人の犠牲者が出ると想定されている首都直下地震の発生も懸念される。
首都圏では東日本大震災の本震の際にも、多数の帰宅困難者が出るなど多くの弱点が見つかった。対策を講じておく必要がある。
西日本も、地殻の変動と無縁ではない。気象庁によると、北海道から九州まで、各地の火山で地震活動が活発化している。
日本は地震、火山、台風などの災害の多発地域だ。脅(おび)えることなく、備えを万全にして、災害に強い国を築きたい。
(2011年4月21日01時01分 読売新聞)
No comments:
Post a Comment