Saturday, April 23, 2011

21/04 リビア介入―「人道のため」忘れるな

 カダフィ政権に反乱が起きたリビアが混迷している。国際社会が軍事介入に踏み切ったが、収束への道筋はみえないままだ。このまま戦闘をエスカレートさせてはいけない。

 英米仏を中心とする多国籍軍がリビア政府軍を攻撃して1カ月になる。反体制派への報復・虐殺を阻止するための人道的介入のはずだったが、その限界が見えてきた。いったん勢いづいた反体制派に対し、政府軍が巻き返している。

 西部にある第3の都市ミスラタは、2月末から政府軍に包囲されている。無差別砲撃や狙撃で連日、多くの犠牲者が出ており、水や食糧も不足している。狙撃兵が市街にひそみ、外出もままならないという。「このままでは皆殺しにされる」という声は痛ましい。

 多国籍軍を指揮する北大西洋条約機構(NATO)は、政府軍の戦力の約3割を破壊したと発表した。だが、反体制派の部隊への誤爆も相次ぎ、首都トリポリへの空爆で市民が巻き添えになったという情報もある。

 戦闘が長期化するほど、人道危機が深まる。政府軍が攻勢をかければ、阻止しようと多国籍軍も爆撃をエスカレートさせる。この悪循環を断ち切らなくてはならない。

 行き詰まりをうけ、英国は軍事顧問団を反体制派の拠点ベンガジに派遣する方針だ。連絡調整や後方支援にあたり、直接の軍事作戦や訓練にはかかわらない、としている。

 軍事介入を認めた国連安全保障理事会の決議は「外国軍によるリビア占領はいかなる形でも除外する」として、地上軍の派遣を禁じている。顧問団は直接には戦闘に加わらぬというが、当初の決議の枠を超えて内戦にてこ入れを図るなら、安全保障理事会の新たな決議が必要だ。

 なし崩しに軍事行動が変質すれば、正統性を欠いたイラク戦争の二の舞いになりかねない。

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