福島第一原発の事故炉を封じ込める道筋が大きく揺らいだ。
1号機で、炉の燃料棒が溶けて下に落ちるメルトダウンが起こっていたらしいと、東京電力が認めた。圧力容器からも、その外の格納容器からも、大量の水が漏れているようだ。
このままでは、格納容器を燃料上部まで水で満たす冠水方式を進められない。
東電は4月中旬に出した工程表で、冠水方式をとれば3カ月ほどで炉を安定して冷却できると説明していた。
目算は大きく狂った。原発の深刻な事態が収束するまで「6~9カ月」という見通しにも、黄信号がともった。
なによりも、まず1号機を抑え、次に別の炉を、という期待をしぼませたことは大きい。
メルトダウンがわかったのは作業員が原子炉建屋に入り、水位計を調整して水面の高さをわかるようにしたからだ。
炉の中でおきていることを、信頼度の乏しいデータから推し量るしかないのが、原発事故の恐ろしさだ。
事故炉の封じ込めは、姿の見えない敵を相手に闘う難作業の連続だ。自動カメラやロボットで近づいたら、予想と違う状況だったということもありうる。
現行の工程表は、炉を冷やして止める手だての柱を、冠水方式にしている。
事態収拾にあたる技術者は他の方策も考えていたが具体化は遅れ、冠水方式に期待した作戦を進めていた。そのため、今回のように見直しを迫られたとたん、周辺地域はもちろん、国内外にも大きな落胆と不信を芽生えさせてしまう。
新しい工程表では、いくつかの有力シナリオを併記してほしい。今の方法が頓挫したら、直ちに次善の手を打てる構えで臨むべきだ。最悪の場合もこんな手がある、ということまで率直に語るべきではないか。
どんな方法をとるにしても、圧力容器の底にたまった燃料はこれから何年も冷やし続けなくてはならない。
気になるのは、冷やすために注いだ水が汚染してふえる一方だということだ。汚染水が施設外に漏れ出さないようにためる場所をふやす必要がある。たまった水を浄化しながら、循環させて冷却に使うといった方法も急いだ方がよいだろう。
そして、メルトダウンした燃料という新たな厄介ものを最後にどう処理するか、という重荷も背負い込んだ。
当面の目標にする冷温停止の先にも、この大きく重たい課題が待ち受けている。
No comments:
Post a Comment