2011年5月12日14時55分
枝野幸男官房長官の12日午前の会見全文は次の通り。
【冒頭】
「北方対策担当相としての立場になるが、ビザなし交流にかかわる後継船舶の船名が決まったので報告する。北方四島との交流事業に使用する新たな船を来年度の供用開始を目指し、現在建造中だ。完成は来年1月の予定だ。この船の名前を一般公募し、選考委員会で検討してきたが、この度、『えとぴりか』に決定した。これが船の完成予定図だ。えとぴりかは、北方四島及び周辺に生息する海鳥で、アイヌ語の『えと』、くちばしという意味。『ぴりか』、美しいという、つまり美しいくちばしというのが語源だそうだ。この新しい船で、来年度以降の交流事業の一層の活性化に期待している。今年度のビザ無し交流は明日13日から実施の予定だ」
【普天間移設】
――米上院軍事委員長や理事らが、普天間飛行場を辺野古に移設するとした日米合意を、日本の政治状況の変化や財政悪化によって非現実的になったとして、嘉手納への統合を検討するよう国防総省に提案した。日本政府は辺野古移設の方針に変わりはないか。
「指摘の提言については米国の上院議員の皆さんが議員としての見解に基づいて行った提言と承知している。政府間では昨年5月に日米合意が結ばれていて、日本政府としてはこの日米合意を着実に実施するという方針に変わりはない」
――嘉手納統合案は政府で検討した経緯があるが、さらに検討する考えはないか。
「少なくとも現時点で米政府と日本政府それぞれの執行機関同士においては昨年5月に日米合意がある。執行機関としては、この両国の執行機関同士の合意に基づいて、一方で我が国の政府としては沖縄の負担を速やかに軽減するとの考えのもとでこの合意を着実に実施するという方針に変わりはない」
――長官は4月28日にレビン氏らと官邸で面会したが、この話はあったのか。
「基本的に外交関係の話の内容について、詳細に話すべきではないかと思うが、指摘のような話はなかった」
――レビン軍事委員長は米軍再編に対する影響力が強い。今後米側が再検討を始めた場合でも、日本政府としては立場を変えないという理解でいいか。
「2国間の政府同士の日米合意がある。大変これは重たいものだ。仮定の質問にお答えするべきではない」
――沖縄も辺野古案には反対している。それでも辺野古移設を見直さない理由は。
「大変実力者で立派な方だと承知をしているが、米国議会の議員の方が議員という立場でおっしゃった意見だ。当然、どの国の議会においても様々な意見があるのは当然だが、国家と国家の関係では、執行機関、執行行政府同士の合意がある以上、それは大変重いものだ。日本政府としてはこの合意を着実に進めていく。それにあたっては沖縄の基地の負担軽減について全力を挙げていく。この姿勢について、この合意が現時点で有効に前提になっている以上は、こう申し上げるのが当然だ」
――レビン氏らは東日本大震災の財源のために日本の財政にも配慮すべきだと指摘している。莫大(ばくだい)な金をかけて代替案を進める必要があるのか。
「まずアメリカ政府の見解とか意見ではなく、議会の中には様々多様な意見がどの国にもある。民主主義の国であれば。大変重鎮の重要な力のある方の意見ではあるが、そういうことが前提だ。そうしたことの中で、東日本大震災の影響についてご配慮を頂いていることについては感謝を申し上げるが、その内容について、直接コメントする立場ではない」
【福島第一原発】
――昨日3号機で高濃度の汚染水が流出したが、どういうタイミングで諸外国に通告したのか。
「昨日の朝、3号機の竪坑閉塞(へいそく)作業中の作業員が水の流れる音を聞き、周辺を調べたところ、3号機タービン建屋の海側にある電源ピットに水が流入していることが分かった。近傍の海水面にも泡だっている部分があり、何らかの経緯で海水に排水が流出している可能性がうかがわれたもので、直ちに流入している水と近傍海水をサンプリングして放射性物質の濃度を分析したところ、いずれにおいても高い濃度の放射性ヨウ素及びセシウムが検出された。並行して海水流出経路の確認と、コンクリート注入の止水作業を行って、昨日の夕方18時45分には海への流出が止まったことが確認された、と報告を受けている。2号機のたまり水が4月初めに海に流出した上に、今回再度放射性物質が海に流れ込む結果となったことは大変遺憾であり、地元の方々、漁業関係者、近隣諸国などには重ねてご心配とご迷惑をおかけしたことをおわびを申し上げたい。具体的な状況の報告は、統合対策室の方で担当し、そこと外務省でやっているので、統合対策室の方の会見でおたずね頂きたい。なお引き続き、海水のモニタリング結果を注視し、放射性物質の放出が止まっていることについてのチェック、確認、環境への影響の確認をして参りたい。現在のところ、放水口付近の放射性物質の濃度は高くなっているが、その外側の部分、放水口から30メートルぐらい離れたところでは濃度は高くはなっているが基準値の2~3倍程度というところにとどまっていて、この間千倍、1万倍を超えるようなものが外に出て、それがかなり周辺部分でも高い濃度で広がっているが、この間の取水措置の効果が表れているのか、それとも時間の経過とともに値の数字が高くなっていくのか、しっかり監視して参りたい」
――タービン建屋の地下では先週から汚染水の水位が上がった。汚染水の管理は十分対応できていたのか。
「現在、なぜこれが流出することになったのか、流出の経路、原因について早急に調査をするよう指示している。コンクリートをしっかりと打ち付けることで止水をしたという状況なので、やはり原因等をしっかりと認識をして、今後のこういったことが起こらないような対応は必要だろうと思っている」
――今後、梅雨の時期になる。大雨で放射性物質が流れ出ることが想定されるが、雨対策は考えているか。
「雨対策も当然含まれるんだと思うが、いずれにしても冷却等のために相当の量の水を使っている状況が継続している。そのことによって生じた大量の汚染水の処理、それを環境に流出させないための対策は現在進めている工程表においても大変重要な要素で、順次その作業を進めている」
――1号機で水位計を修理したところ、圧力容器や格納容器でほとんどの水がたまっていないことが分かったが、格納容器に水漏れがあったのでは。
「指摘の通り、昨日、1号機の圧力容器の水位計のうち一つの系統について、校正作業という作業を行ったと聞いている。その結果として、これまで燃料棒の中間付近までの水位を示してきた計器が、その数字を見る限りでは燃料棒下部以下の水位を示す結果となっている。本日以降、他の複数の計器の校正も行うことにしているが、これらの結果も勘案しながら原子炉の状態について再度評価していくことが必要であると認識している。計器の方に不具合があるのか、それとも指摘のようなことがあるのか。水の量を増やすと冷却がさらに進んで、全体としての冷却が進んでいるという状態は、長期にわたって続いている状況だ。そうした意味では炉の状態は、ある意味で安定をしている状況なので、ただ、この計器の数字はそれとある意味で矛盾をする部分があるので、しっかりと状況を確認し、状態の再評価をして参りたい」
――原子炉の冷却には水をためる方法をとってきたが、冷却方法の見直しの必要性は考えていないのか。
「少なくとも、いまただちに採りうる策としては水を注ぎ込むことで冷却をするという以外の直ちに採りうる効果的な方法というのは私は承知していない」
――INES評価でレベル7になってから1か月。放射性物質が放出されている現状と、総放出量が明確になっていないことについての見解は。
「まず、これはもちろん、福島の周辺の住民の皆さんはもとより、国内の多くの皆さん、世界の皆さんに大変ご心配をおかけしている状況が続いていることは大変遺憾に思っている。ただ、一方で、急激な悪化、さらなる悪化を防ぎながら収束に向かっていくという方向に向けては、当初の予想された通り、様々な困難はあるが、一歩一歩前に進んでいる状況で、できるだけこの歩みを着実に進めてまいりたい。放射性物質の放出量の総量の把握については、これは技術的なことだが、私が承知をする限りでは、そもそもが放出時点における様々な原子力発電所における計器その他が十分に機能していなかったということから、いずれにしても推測で把握するしかないという状況が前提になっていると、私は認識している」
【賠償の枠組み】
――原発事故の賠償スキームの決定の日程は。
「今日の夕方にも総理にも出席を求めた関係閣僚会合を開催しようという調整をしている」
――賠償資金の確保のための電気料金の値上げが焦点になっている。政府は東電のスリム化が第一条件だと強調してきたが、電気料金の値上げは行わずに資金の確保はできるのか。
「賠償額全体がまだ残念ながら見通しすら十分に立てられない状況だ。確定的なことは申し上げられない。しかしながら、基本的に電力料金の値上げによらずに賠償の資金を出す。そのためのスキームをつくったつもりでいる」
――将来的にも上げずに、長期にわたってまかなえるスキームをつくるということか。
「そのつもりでスキームをつくってきた。ただ、一方で、国としての責任もある。いわゆる賠償については東京電力にしっかりと責任を果たして頂く。一方で、国としてはこれ以上の被害を拡大させないことについて、あるいは生じている被害をできるだけ小さくする。例えば、できるだけ早く戻って頂くとか、事業を行っている皆さんの状況についてであるとか、土壌の改良であるとか、こうした周辺住民の皆さんをはじめとする国民の皆さんへの影響をできるだけ拡大させない、あるいは小さくするということについては、これは別途、国の責任でしっかりと進めていく責任がある。今後もそれについては強化をしてまいりたい。結果的にこういった被害の拡大を抑える、影響を小さくするという政府の努力が効果を上げれば、その分だけ損害額が小さくなる。賠償額が小さくなる。こういった形で国としての責任をしっかりと分担して参りたい」
――電気料金の値上げで賠償額に充当しないと言ったが、そもそも原発が止まった時点で発電コストが高くなることに伴う値上げは考えられないか。
「それについては、現時点で確定的なことを申し上げる段階ではないと思っているが、これも全体の経営努力等の中でできるだけ吸収して頂くことが前提になっている」
――株主の責任や金融機関の債権カットは求めていくのか。
「気を付けないと、民・民の関係なので直接求めていくことが政府としてできるのか、望ましいのかということについて課題はあるが、報告を求めることについて確認をしている。そして、今度のスキームは自動的に政府が支援を続けるというものではない。金融機関等の協力のあり方とかについて着実に進まなければ、それはそれで支援をどうするかということは、途中の段階でもいろいろ判断するつもりでいる」
【ビザなし交流】
――ビザなし交流は返還に向けた環境整備としてはマンネリ化しているとの指摘も出ている。改めてビザなし交流の意義は。
「ビザなし交流によって一定の理解等が深まることというのは、一定の効果があることだろうと思う。ただ、さらに4島返還に向けたエネルギーを高めていく、効果を高めていくことのためにはさらなる工夫も必要だろうという風に思う。私自身、担当大臣になってから特に国民的な問題意識の共有が大変重要だろうということで、できるだけ若い人たち、特に教育の現場などで、それも教科書に1行載ればいいとかそういう話ではなくて、実際に多くの子供たちが北方四島の問題、歴史的な経緯等について具体的な知見を深められるような工夫がないか等について、事務当局といろいろ相談しながら一歩ずつだが前に進めている状況だ」
【東電賠償枠組み】
――土壌改良の費用について東電に対して求償する考えはあるか。
「これはまさに最終的にいずれ考えないとならないが、特に国民の皆さんに対する影響を小さくするということについては国が直接的に国の責任として行っていく部分は多い。現にこの間もそうしたことについては一歩ずつ進めてきているところだ。今後もそうした努力は国として直接、避難をされている皆さんと周辺の皆さんの安全を確保するということのためには東電との賠償等を待たずに対応していく部分は少なからずある」
――交付国債について、最低でも5兆円になるとの報道もあるが、国債の割り当て規模は盛り込むことになるのか。
「全く考えていない。なぜならば、これから第三者委員会を送り込んで、まさにどれくらいの資産状況にあって、どれくらいの経費の節減ができるのかを見極め、なおかつどれくらいの損害額になるのかが、これは相当な時間がかからないとはっきりしない。そうしたことを踏まえながら、適宜必要な対応をしていくことになる」
【普天間移設】
――レビン氏の提案は米政府にあったが、日本政府にこの提案の連絡はあったのか。
「少なくとも私のところに報告はない」
――日本政府が日米合意の見直しを米側に提起する考えはあるか。
「いま日本政府としては、沖縄の基地の負担軽減を進め、沖縄の皆さんの理解を求めながら、昨年5月の日米合意の着実な実施に向けて努力をしていくのが、今の時点の日本政府としての考え方だ」
【メア元日本部長】
――メア氏がアメリカの民間会社に再就職した。使用済み核燃料の再処理業務に従事していることが明らかになっているが、受け止めと、昨日官邸にも来たがどんな説明をしたのか。沖縄関連の発言について政府として確認をとったのか。
「まずメア氏が民間人としてどのような仕事をしているのかについて、日本政府として、少なくとも私は承知をしていないし、そのことを承知する立場でもない。昨日、メア氏が官邸を訪問したということは聞いたが、どこに何しに来たのか確認したら、前田内閣参与がメア氏と旧知の間柄で、訪日したメア氏が旧知の間柄である前田参与を訪問をしたということだと報告を受けた。単にあいさつに来たに過ぎないとは考えるが、いろいろと臆測を呼ぶので今後はより慎重に行動をして頂ければ、前田参与にそうして頂ければと思う」
――沖縄への発言内容を確認はしたのか。
「だから政府に来たのではなくて、旧知の前田参与のところに私的に訪れた。事後的にそのことを知ったので、日本政府として何か申し上げる立場でもないということだ。ただ官邸においでになると、日本政府との関係で何かされたかのような誤解を招くので、その点については前田参与にも慎重に対応して頂きたいと思う」
【二重ローン対策】
――菅首相が5月1日の参院予算委で、大震災による二重ローン対策を検討したいと発言した。その後の検討状況は。
「その時総理がおっしゃったかどうかは確認していないが、私も含めて二重ローンの問題についてはかなり早い段階からの検討テーマ、重要な検討テーマの一つだ。ただなかなか、思いはみんな共有しているが、どういうスキームでどう行えば、適切かつ公平にこうしたことが対応できるのかということについては、関係各省と事実上連携しながらいろんな検討をして頂いている。なかなか壁が厚い状況にある中で、その壁を突破できないか、様々な模索をしている状況だ」
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