東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発のすべての炉が当面は止まる。菅直人首相による異例の求めを中部電力が受け入れた。
東日本大震災によって東京電力福島第一原発の事故が起き、原子力の安全神話は崩れた。
国内で最も危険といわれてきた原発を止め、安全対策を強めるのは当然の決断と言えよう。
ひとつ気になるのは、首相の要請が防潮堤づくりなどの中長期対策が施されるまで、となっていることだ。地震の揺れそのものに対しては大丈夫なのか、という心配が残る。
中長期対策は、福島第一の事故を受けて、原子力安全・保安院が、津波に対する備えや、それによって起こる電源喪失などへの対策を確実にするために求めた。
中部電の計画では、防潮堤のほか防水扉、非常用の炉心冷却系や電源を充実させる、と説明している。そこには、揺れそのものに対する安全度の確認や補強策は含まれていない。
浜岡原発がこれまで不安視されてきたのは、なによりもプレート境界型の巨大地震である東海地震の揺れに耐えられるか、ということだった。
そのこともあって、中部電は早めに手を打ち、2005年に補強を表明した。ほかの電力会社も追随した。
それでも、06年に改定された新耐震指針による浜岡原発に対する保安院の審議は、まだ終わっていない。
長引く背景には、07年の新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発が想定を大きく超える揺れに見舞われるなど、新しい事態に直面したことがある。
東日本大震災からも、教訓を得る必要がある。
福島第一原発の事故では、津波の高さばかりに目が向いている。だが、原子炉の配管系が津波襲来より前の強い揺れで大きく損傷した可能性がある。そして、揺れの最大加速度だけではなく、その継続時間の長さにも特徴があった。
安全対策で忘れてならないのは、一つのことに目を奪われてはならぬということだ。
福島第一原発は、それまで関心の低かった津波によって予想外の大打撃を受けた。浜岡で、その逆の愚をおかしてはならない。地震の揺れを忘れまい。
日本列島周辺の地震の仕組みや危険度については年々、新しいことがわかってきている。新知識をとり込みながら、原発を動かすか止めるかを決める。
そういう柔軟な原発政策が、いま求められている。
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