Sunday, May 15, 2011

09/05 エジプト革命―中東の民主化モデルに

 民衆のデモによって30年続いた強権体制を倒して3カ月。エジプトは秋に予定される初めての民主的総選挙に向けて熱い政治の季節を迎えている。

 中東情勢では、政府による弾圧が続くリビアやシリアに目を奪われがちだが、中東の将来に大きな影響を与えるエジプトの民主化の行方にも注目したい。

 エジプトでは議会選出まで、軍が全権を掌握している。革命で警察がデモ隊に銃撃し、800人以上の死者を出したために、中立を守った軍が秩序維持を担うことになった。

 革命後の混乱は、カイロでイスラム教徒とキリスト教徒の衝突で死傷者が出るなど続いている。しかし、民主化の実現が軍頼みであることは、異常な事態なのだと、忘れてはならない。

 これまで、市民の政治組織の連合体が要求してきた旧体制の清算や民主化について、軍はおおむね受け入れてきた。

 大統領の任期を2期8年までに制限する憲法改正案が国民投票で承認され、秘密警察は解体された。前体制で任命された軍出身の首相は解任され、文民のシャラフ現首相が任命された。

 ムバラク前大統領に対するデモ隊への武力行使や不正蓄財の疑いでの取り調べも始まった。

 軍が国民の意思を尊重するのは、国民と国際社会の圧力があるためだ。今後も軍の動きに目を光らせる必要がある。

 民主化実現には一日も早い総選挙の実施が必要だが、新しい政党の創設や民主化の啓発には十分な準備期間も必要だ。

 旧政権下で最大野党でありながら、非合法だったイスラム組織のムスリム同胞団が4月末にやっと政党を発足させた。

 民主化デモで中心となった既存の政治勢力に入っていない若者たちが政党をつくる動きもある。若者たちの間では民主化の準備のために、できるだけ時間が欲しいという声がある。

 政治プロセスを急ぐばかりでは、旧政権関係者や軍の人脈、旧野党など既存勢力が政治を独占することになりかねない。

 国際社会はエジプトの政治や社会の状況に応じて、国民が望む形での民主化が実現するよう支援することが求められる。

 エジプトは、アラブ世界で政治、教育・文化、宗教の中心であり、中東和平でも重要な調停役を演じる。この国で民主主義が実現すれば、強権支配や暴力やテロがはびこる中東の民主化モデルとなるはずだ。

 旧政権時代に経済や社会開発を援助した日本は、民主化を助け、新たな政治の担い手と信頼関係を結ぶことが必要だ。

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