5月2日付
菅首相が、政界入りしてじかに接した歴代首相の中で特に範としているのは、中曽根元首相だという。菅首相夫人の伸子さんが、著書でそう明かしている◆東日本大震災後、菅首相が学者を内閣官房参与に次々起用したのも、中曽根「ブレーン政治」を模しているのかもしれない。国鉄分割・民営化など数多くの業績を残した臨時行政調査会(臨調)は、中曽根元首相に近い経済人や学者が主導した◆臨調が機能したのは、霞が関の官僚と二人三脚でプラン作りに努めたからだ。臨調を取り仕切った故・瀬島龍三氏(元伊藤忠商事会長)は、各省庁と下折衝を重ねて実現可能な提言を追求した、と回想録に書き留めている◆「いかに名論卓説だろうと政府の能力の限界を超えていれば単なる意見で終わってしまう」と瀬島氏。官僚を信用せず「セカンドオピニオン」を求めると称して参与を多数抱える首相の姿勢は、中曽根ブレーン政治と似て非なるものだ◆瀬島氏は、忠誠心熱く有能な官僚の存在は「一国の盛衰」に関わるとし、政治に「彼らの活力を振起する」ことも求めている。菅首相に聞かせたい言葉である。
(2011年5月2日01時14分 読売新聞)
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