Tuesday, May 10, 2011

01/05 編集手帳

5月1日付 

 気持ちのふさぐ投稿、と以前小欄で書いた。福島県から会津ナンバーの車で新潟県に出かけたところ、誰かに「帰れ、来るな」と落書きされたという話である。本紙の『気流』欄(東京版)に載った◆すると1週間後、新潟県の人からの返信が掲載された。「県民として非常に悲しい。おわびしたい気持ちです」。自分たちも中越地震を乗り越えてきた、被災者のつらさはわかるはずなのに、情けない、と。落書きの君に一番読んでほしい投稿である◆放射能の風評被害は人や農漁業産品だけでなく工業品輸出にも及ぶ。政府の迅速正確な情報発信は必須としても、受信する側が誤解や過剰反応で「風」を煽 (あお) ると被害は広がる。落書きのいたずらでさえ類似の偏見を呼ぶ◆一部海外メディアにも、明らかに誇張と思える記事があった。救われたのは元ワシントン・ポスト東京特派員のポール・ブルースタインさんの言葉である◆「この先も鎌倉に住み、米欧メディアに近況を発信して過剰反応を静めたい」「福島県産ホウレンソウが近所の八百屋さんに戻ってくる日が楽しみだ」。一日も早く、その記事が読みたい。

(2011年5月1日01時18分 読売新聞)

No comments:

Post a Comment