米国の自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)が今年、トヨタを抜いて世界販売台数で世界一に復帰する見通しだという。トヨタはリコール問題や震災の影響で減産が続く。それに対しGMは、中国市場などで売れ行きが好調である▲GMといえば09年に破産申請した企業である。株の6割を米政府が取得し事実上国有化された。米国の世論はGM救済をめぐってまっぷたつになった。自由主義の経済原則からは助けるべきではない、という意見も多かった▲GMがまた危機に陥らないという保証はない。しかし、いまのところ、GM救済に踏み切った米オバマ政権の判断は適切だったように見える。経済学的には個別企業を国が救済するのは間違いかもしれないが、政治は結果がすべてだ▲日本でも企業救済に多額の税金を投入したことがあった。90年代後半以降の金融危機。国は大手銀行などに約12兆円の救済資金を投じ大量の銀行株を保有した。その後の景気回復で99%が返済されている。国はその結果、約1兆5000億円の利益を得た▲あの際も多くの批判があった。税金投入にもかかわらず立ち直らなければ、納税者が大きな損をかぶるおそれがあったのだから、批判は当然だ。ただ幸いなことに日本経済はどん底から立ち直った。銀行への公的資金の投入もそれに貢献した▲今度の震災で発生した巨額の原発被害。その補償を東京電力と国がどういう割合で負担するかが問題になっている。どう決着させても国の負担は免れず、GMや銀行問題同様、国民から不人気なものになるだろう。難しいが最善の道を発見しなければならない。
毎日新聞 2011年5月9日 東京朝刊
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