Sunday, April 10, 2011

万能薬ではないヨウ素剤、服用タイミングも重要

 安定ヨウ素剤の服用は、避難時に放射性物質にさらされる恐れがある住民を守る予防策だ。

 ヨウ素は甲状腺ホルモンを合成するのに必須の元素で、甲状腺はふだんから体内に取り込んだヨウ素を蓄積している。このため、原発から出た放射性ヨウ素が空気や食べ物などと一緒に体内に入ると、甲状腺内に蓄積して放射線を出し続け、がんになりやすい。

 これを避けるため、放射線を出さないヨウ素を製剤化した安定ヨウ素剤を服用し、あらかじめ甲状腺を安定ヨウ素で満たしておく。その結果、放射性ヨウ素が体内に入り込んでも、甲状腺には蓄積せずに体外に排出されやすい。

 服用の効果を上げるには、服用のタイミングが重要だ。服用後に効果が続く時間は約24時間とされており、早くから服用しても効果はない。放射性ヨウ素が体内に取り込まれた後でも約8時間までなら、服用により甲状腺への取り込み量を40%近く減らせる。

 原子力安全委員会の指針では、服用対象者は40歳未満。40歳以上は被曝ひばくしても、甲状腺がんの発症率は高くならないと報告されているためだ。しかし、国の原子力災害現地対策本部は今回、希望者には40歳以上でも服用を認めた。

 忘れてはいけないのは、安定ヨウ素剤は被曝の万能薬ではないことだ。セシウムなど、ヨウ素以外の放射性物質による体への影響は防げない。ヨウ素過敏症など、服用できない人もいる。吐き気や下痢などの副作用も報告されており、避難時に1回のみ服用することになっている。

 ヨウ素の入ったうがい薬や消毒薬に予防効果があると誤解されているが、効果がないばかりか、飲むと体に有害な成分が含まれている恐れもある。ワカメや昆布にもヨウ素は含まれているが、含有量が一定ではなく、十分な効果は得られない。(吉田昌史、本間雅江)

(2011年3月22日 読売新聞)

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