編集委員 近藤和行
娘の7~8割はパパが大好き――。
こんな調査が出たと知り、ネットで調査概要を取り寄せた。ある団体が6月20日の「父の日」を前に、首都圏の20~30代の娘と40~50代の父、双方約300人を対象にインターネットを通じて実施したという。
内容は、父を「愛している」と答えた娘が77%、「尊敬している」は74%。一方、「娘が私を愛していると思う」と答えた父は50%、「娘が私を尊敬していると思う」は48%。父はやや控えめなところが面白い。
意識のギャップが大きいのは、娘が父を「かっこいい」と見ているかどうかで、娘の50%が「かっこいい」と答えたが、「娘が私をかっこいいと思っている」とした父はわずか17%に過ぎなかった。
意外な結果に喜んで、背景などを知ろうと、その団体に問い合わせたが、反応は「分析はしていない」「理由はよく分からない」ということだった。
返事にも少しがっかりしたが、調査概要をよく見ると、父がプレゼントされてうれしいお酒のトップとして「ウイスキー」が挙げられ、これを機に「ウイスキーにまつわる親子の話」と題したエピソードなども募集するという。露骨なウイスキーのセールス・プロモーション――だとすると興ざめだが、「おやっ」と思わせ、目を引く調査結果だけに失望も大きかった。
社会情勢に関連する最近の調査に、例えば、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」と考える既婚女性の割合が、これまでの低下傾向から一転、増加に転じたというものがあった。また、「生涯、同じ企業で働きたい」と考える新入社員が増え、価値観の「回帰傾向」が強まっているというものもあった。
こうした調査の結果には、たいてい「正社員の長時間労働が増えたり、女性の非正規社員が増えているなどの雇用状況の不安定化がある」とか、「安易なリストラが横行している現実がある」といった簡単な分析がついている。
父の日調査でも、例えば、「40~50代の働き盛りは過重労働やリストラ圧力で過酷な日々を送っている。20~30代の娘は分別もあるので、くたびれた父親への激励の意味も込めて、エールを送ったのではないか」程度のコメントでもあれば信頼性はずいぶん違う。中には、首をひねるような分析もあるが、「分からない」に比べれば、説得力に格段の差が出てくる。
面白いのに「やりっ放し」という、この種の調査が最近、増えているような気がする。
面白い答えを引き出す調査は、テーマ設定や質問の仕方などにセンスが感じられるケースが多いだけにもったいないと思う。世の中には、まじめに長期・詳細な調査や分析をしているのに、面白味に欠けて取り上げてもらえず、悩んでいる団体の担当者も多いのだ。
件(くだん)の調査は、そんな訳でボツとしたが、なぜ娘の多くが父に温かい目を向けているのか。理由がいまでも気になっている。誰かそれを教えてくれませんか。
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