米軍が東日本大震災で自衛隊と連携し、空前の規模の支援活動を実施している。日米同盟を深化させるための重要な一歩と高く評価したい。
米軍の「トモダチ作戦」は、最大2万人を動員し、空港・港や学校などの復旧や救援物資の輸送を行っている。4月1~3日には、自衛隊などと共同で、東北3県沿岸部で行方不明者の集中捜索を実施し、79人の遺体を収容した。
米国は、同盟国の日本の各地に米軍を駐留させているとはいえ、災害時に日本を救援する条約上の義務があるわけではない。
それでも、これだけ大規模な支援を実施しているのは、日米が長年かけて築いてきた信頼関係があってこそだろう。日本は、引き続き米国と緊密に連携し、様々な危機が同時並行で進む「複合事態」を乗り切らねばなるまい。
米軍の活動は、防衛省、在日米軍司令部、仙台市の陸上自衛隊東北方面総監部の3か所で連日行われる自衛隊幹部との綿密な調整作業に基づき、実施されている。
共同訓練や海外での共同活動の経験が、現在の円滑な日米協力を可能にしたと言える。
福島第一原発事故の対応では、日米両国が放射性物質遮断、核燃料処理など複数の作業チームを設置した。放射能の検知識別や被曝
ひばく
者の除染を任務とする米海兵隊の専門部隊も来日している。
米側は当初、日本側の情報提供が不十分との不満を示していた。だが、原子炉を冷却する海水の真水への切り替えは、米側が主張し、はしけ船を提供して実現したもので、連携は深まっている。
米側が原発問題に真剣なのは、同盟国への支援に加え、自らの原発推進政策を堅持するうえで重要との判断がある。日米が、持てる知恵と装備と能力を最大限に活用し、対処する必要がある。
日本にとって、東日本大震災はかつてない大きな試練だ。2001年の米同時テロは米国の世界観を変えたとされるが、「3・11」の衝撃と影響は、その「9・11」をも上回るものだ。
だが、この試練は、日米同盟をより強固にする機会でもある。米同時テロでは、日本が新法を作り、自衛艦をインド洋に派遣したことで、同盟関係が強化された。
大型連休中に予定されていた閣僚級の日米安保協議委員会(2プラス2)は開催が不透明な状況にあるが、極力開くべきだ。今回の経験を将来の日米協力にどうつなげるかを議論したい。それが同盟を新たな段階へ導くだろう。
(2011年4月10日01時07分 読売新聞)
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