2011年4月5日(火)付
〈その使い方を知るまで、富者の財産をほめてはならぬ〉。人の器量は金の使い方で判断せよという、ソクラテスの言葉である。金持ち金使わずともいうが、例外はいくらもあるらしい▼ソフトバンクの孫正義社長(53)が、大震災の義援金に100億円を出す。経営から退くまで、毎年の役員報酬も全額寄付するそうだ。さすがは資産数千億円とされる経営者、ポケットマネーの桁が違う▼ユニクロを展開する柳井正氏(62)、楽天創業者の三木谷浩史氏(46)も、それぞれ個人で10億円という。消費者への恩返しもあろう。企業イメージは向上するが、そうした打算や商魂を超えた太っ腹を思う▼内外の芸能人やスポーツ界からも浄財が続いている。ゴルフの石川遼選手(19)は「自分にも気合が入る」と、今季の獲得賞金を全部差し出す。実業家と同じく、己の才覚才能で稼いだお金だけに、気持ちも格好もいい。副詞の「ぽんと」は彼らのためにある▼20代、30代も負けていない。ジャニーズ事務所の被災者支援イベントには39万人が参加した。「ちりも積もればの、ちりになれば」。募金の長蛇に加わった女性がテレビで話していた。動員力を生かした、SMAPや嵐ならではの社会貢献だろう▼日本赤十字社などへの義援金は阪神大震災をしのぐ勢いで、もう1千億円を超えたとみられる。ゼロがいくつも並ぶ振り込みから、子どもが握りしめた10円玉まで、「おかね」という響きの何とさわやかなことか。めったにない感覚である。
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