Friday, June 10, 2011

28/05 余録:願い事を書いて奉納する絵馬の発祥は…

 願い事を書いて奉納する絵馬の発祥は京都の貴船神社といわれる。鴨川の水源にあり、水をつかさどる神をまつる同神社には歴代天皇が馬を献じて祈願した。日照りで雨を降らせたい時は黒馬を、長雨を止めたい時は白馬か赤馬を奉納したのだ▲さてその霊験ゆえか祈願は度重なり、生きた馬に代えて馬形の板に着色した「板立馬」を奉納するようになったのが絵馬の起源という。降れば土砂降り、降らねば日照り--はツキから見放された人だが、絵馬の白黒で雨の降り方を加減できればどんなにいいだろう▲記録的に早い梅雨入りとなった近畿以西に続き、きのうは関東甲信と東海地方が梅雨入りした。両地方ともやはり昨年より17日早く、関東甲信では60年前の統計開始以来2番目、東海も同じく3番目に早い記録だ。東北地方の梅雨入りもこの調子で早まるのだろうか▲一方、南方海上では台風2号が沖縄から西日本をうかがう動きを見せる。上旬の台風1号に続き、2号も5月中に日本に接近するのは観測史上初だそうだ。梅雨前線を刺激すれば広い範囲で大雨になるおそれがあるという▲こう聞けば、震災後に土砂災害危険箇所の異常が1000カ所以上も見つかった被災地が心配になる。しかも危険箇所に隣接する避難所が約200カ所もあるというから、避難している人々の不安はいかばかりだろう。原発事故現場での大雨の影響も気がかりである▲震災後、東日本では大雨に伴う警報・注意報の基準が引き下げられている。かといって空梅雨になっても困る列島の暮らしだ。白黒何枚もの絵馬による加護が切実にほしい今年の梅雨である。
毎日新聞 2011年5月28日 東京朝刊

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