Friday, June 10, 2011

07/06 余録:「もしドラ」こと「もし高校野球の女子マネージャーが…

 「もしドラ」こと「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」ですっかり有名になった経営学の大御所P・ドラッカーの主著「マネジメント」だ。その一節である▲「アメとムチによるマネジメントはもはや有効ではない。……マネジメントの手に、もはやムチはない。アメさえ人を動かす誘因となりえなくなった」。ドラッカーは現代社会の組織にあって人を強制によって動かすのはマネジメントの名に値しないというのである▲大阪府内の公立学校の教職員に行事の際に君が代を起立して斉唱するよう義務づける条例が先ごろ府議会で成立した。橋下徹知事が代表を務める首長政党が提案した条例で、知事は条例での義務化は「思想良心ではなく、組織マネジメントの問題だ」と説明している▲おりしも学校長の起立斉唱命令を合憲と認めつつ、強制には慎重さを求める補足意見も付した最高裁判決が先ごろあった。国歌や国旗にごく自然に敬意を表するマナーはすでに社会の奥深く浸透しているのに、組織管理を振りかざしての突然の力業はやぼではないか▲府議会では自民党も反対した条例化だった。こと組織マネジメントが問題ならば、条例による一律の強制はむしろその無能を示すものに違いない。ドラッカーがいうマネジメントの課題は「誰もが自らをマネジメントの一員と見なす組織を作り上げる」ことである▲知事は違反者への免職もふくむ処分条例案提出を検討中という。「人が最大の資産」もドラッカーの言葉だ。高校野球の女子マネにマネジメントを学ばねばならぬ教育界にならないよう願う。
毎日新聞 2011年6月7日 東京朝刊

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