Friday, June 10, 2011

17/05 余録:世界各国の国民性をからかう小話の定番に…

 世界各国の国民性をからかう小話の定番に「無人島ジョーク」がある。たとえば男2人と美女1人が無人島にたどり着けばどうなるか。それがスペイン人なら男2人が決闘し、勝者が女に求婚する▲アメリカ人なら女が1人の男と結婚し、すぐ離婚して別の男と再婚する。ドイツ人は1組の男女が結婚して、残りの男が戸籍係になる。フランス人なら男女1組は結婚し、もう1人の男は女と不倫をする。日本人はどちらの男も本社に電話してどうするか指示を仰ぐ▲むろん国民性への偏見や決めつけにもとづく小話だけに、好色扱いされたフランス人の中でも謹厳な人はおもしろくなかろう。だがそんな謹厳なフランス人なら情けなくて天を仰ぐだろう国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事の性的暴行容疑での逮捕だ▲容疑は宿泊先のホテルで女性従業員を強姦(ごうかん)しようとしてケガをさせたというものだ。当人は無実を主張するが、何しろ欧州の財政危機や国際金融危機の収拾においてIMFの陣頭に立ってきたその人である。当面のIMFの対応に空白を生みかねないスキャンダルだ▲さらに大きな政治的波紋が起きたのがフランス政界である。というのもストロスカーン専務理事は来春のフランス大統領選で再選をめざす現職のサルコジ大統領に勝てる野党・社会党の最有力候補と目されていたのだ。野党からは事件は謀略という見方まで出ている▲政治家の私生活の行状に寛容といわれるフランス人だ。だがことは無人島の不倫ではなく、全世界の注視を浴びる国家的要人の性犯罪容疑である。真相解明までは謹厳ならざる人々も落ち着かない。

毎日新聞 2011年5月17日 東京朝刊

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