Friday, June 10, 2011

23/05 余録:お隣の韓国では多くの人々が…

 お隣の韓国では多くの人々が、口には出さずとも日本の技術や社会のありようを評価していた。それが、かなり崩れてしまったようだ。福島第1原発の惨状や、もどかしい対応を見れば無理もあるまい▲だが最近、被災者支援を巡る二つの逸話を聞いて、韓国側には以前から別のもどかしさがあったことを知った。まず一流企業の日本支店のケースだ▲07年の新潟県中越沖地震の際、この支店は仮設住宅用の家電製品提供を担当官庁に申し出た。だが財務諸表の提出を求められるなど難航し、断念した。このため今回は独自に韓国からラーメンなどを大量空輸し、取引企業の助けを借りて被災地に届けた▲次は来日したキリスト教会関係者の話だ。こちらは阪神大震災の時、在日同胞への支援計画が役所の壁にぶつかった。今回は日本側の教会の協力で、救援物資満載のトラックを派遣した。目的地に着くと被災者から「もっと奥に、もっと困っている人たちがいる。先にそっちへ」と言われ、感動の涙を流したという▲こうした例が他にどれほどあったかは知らない。ともあれ大震災後の一時期、ソウルの新聞には「しゃくし定規な日本」に苦言を呈する記事が目立った。日本の組織には事細かな規則やマニュアルがあふれている。あまりにも融通が利かない。それで急場の対応が遅いのではないか。そんな指摘である▲融通が利き過ぎて不正が横行するようでは困る。しかし責任逃れを兼ねたしゃくし定規もご免被りたい。おおらかさがしぼんできて、息苦しさも感じられる最近の日本だが、せめて被災者のためには精いっぱいの便宜を図るべきだろう。
毎日新聞 2011年5月23日 東京朝刊

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