Saturday, July 2, 2011

「信頼の政治」作り直す 新しい日本へ 第5部 「震災後」へ動く(5)


 2011/7/2 4:00 
政府の復興構想会議が打ち出した被災地の高台移転。すぐに動きたくてもままならない。「財源の見通しが立たない。測量に関する予算だけでもつけて政府の方針を示してほしい」。宮城県知事の村井嘉浩(50)は、今年度第2次補正予算案での対応を求める。
大災害を前にして機能せぬ国会を、このままにしていいのか
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大災害を前にして機能せぬ国会を、このままにしていいのか
永田町の動きは鈍い。70日の延長国会は退陣時期を明言しない首相、菅直人(64)に野党が反発、1週間以上、滞った。自ら退陣を表明した以上、菅の下で本格的な政策論議は難しい。新首相で再出発する以外ない。
ただ、菅が退陣しても国会が機能する保証はない。参院で野党が多数を持つねじれ国会の状況は変わらないからだ。2007年の参院選後、自公政権末期もねじれていた。選挙のたび大きく振れる民意に、ねじれの常態化を指摘する声もある。無策のままはもう、許されない。
■議論する国会に
強すぎる参院の権限見直しや、参院否決後の衆院再可決ルールの緩和など答えはほぼ出尽くしている。衆参の議決が異なった場合に開く両院協議会の改革など、憲法を改正しなくてもできるものもある。すぐにでも議論を始め、できるものから実行に移すべきだ。
審議日程から地方選挙まで、あらゆる機会で政権を攻撃するのは自民党一党優位だった55年体制の野党のスタイルだ。今は二大政党化が進み、政権交代が起こる。野党時代の振る舞いが与党になると跳ね返ってくる。「議論する国会」は新しい時代の要請でもある。
▼提言
ねじれ国会の打開策、与野党で議論を
「与党は譲歩、野党は節度」の慣行つくる
「ポスト菅」を短命首相にしない努力を
政策研究大学院大学教授の竹中治堅(40)は「まず与党が譲歩する姿勢が大切だ」と言う。マニフェスト(政権公約)に盛った政策であっても与党は野党に歩み寄り、野党は節度ある態度で応じる。震災の復旧・復興を機に信頼関係を積み上げれば、大連立を含めた連立組み替えや閣外協力、政策ごとの部分連合など新しい形も見えてくる。
「ポスト菅」が8月に誕生すれば、5年で6度目の首相交代になる。日本と同じ議院内閣制の英国では、戦後の首相の平均在任期間は約5年。短命政権が続く悪弊を終わらせる努力も欠かせない。
英首相、キャメロン(44)は昨年5月の就任以降、増税や厳しい歳出削減を断行。与党・保守党の支持率は野党と逆転したが「キャメロン降ろし」の声はない。過去の総選挙は平均4年弱に1回だ。キャメロンは下院議員の任期いっぱいの15年まで解散しないと宣言。当面、選挙はない前提で不人気政策を進めている。
■選んだら任せる
日本の国政選挙(衆院選、参院選)は戦後、平均で約1年半に1回。選挙を恐れて政治家はポピュリズム(迎合主義)に走りがちだ。制度改正は難しくても、13年夏の参院選近くまで衆院解散しないのも選択肢だろう。
世論やメディアの意識改革も必要だ。英国でも政治不信は強まっているが、ランカスター大教授のデイビッド・デンバー(66)は「多くの有権者は政権が何か成果を出すには時間が必要だと分かっている」とも指摘する。リーダーを真剣に選び、選んだからには任せる政治文化と言ってもいい。
「ポスト菅」を選ぶ民主党代表選を第一歩にしたい。政治の混迷を招いた党運営や経済政策を徹底して議論し、新首相を次の選挙までしっかり支える姿勢を民主党がまず、示すべきだ。
震災からの復旧・復興、社会保障改革、成長戦略――。直面する課題には痛みが伴う。だが政治がひるまず説得すれば国民と目標を共有できるはずだ。政官民の力を結集して危機を乗り越えよう。その先に「新しい日本」が待っている。=敬称略
(「新しい日本へ」取材班)
=第5部おわり

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