Saturday, July 2, 2011

02/07 春秋 - 大震災以降、東京にも少しだけ星空が戻ってきた気がする。夜のネオンが減って寂しかったけれど、慣れると暗いのも悪くない


2011/7/2付


旧江戸城本丸跡の庭園に「午砲台」の小さな碑がある。明治から大正にかけて正午にここで号砲を撃ち、時を知らせた。その時刻を決めていたのは当時麻布にあった子午儀である。天頂と南北を結ぶ子午線に沿って天体観測する装置だ。
▼先日、今は東京・三鷹の国立天文台にあるその「レプソルド子午儀」を見学した。ドイツから購入したのは1881年。以来、80年にわたって子午線上を通る惑星や恒星を観測し、「星表」という日本で初の本格的な星のカタログを残した。この長さ約2メートルの子午儀が国立天文台では初の重要文化財に指定された。
▼使用されなくなって以降、職員ですらその存在を忘れていたが、4年前に同天文台の中桐正夫さんが、施設内でほこりまみれの子午儀を発見し、復元した。国立天文台は現在、主に太陽を観測している。三鷹に移転した大正末期には満天の星空だったが、これだけ夜が明るくなれば、通常の天体観測はもう難しい。
▼しかし、あきらめるのは早いかもしれない。大震災以降、東京にも少しだけ星空が戻ってきた気がする。夜のネオンが減って寂しかったけれど、慣れると暗いのも悪くない。欧米の都市に比べて東京の「光害」はひどすぎた。節電の夏が始まってもうすぐ七夕。天の川をこの目で見られる日がいつか来るだろうか。

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