Saturday, May 21, 2011

19/05 マイナス成長―変革力育む環境作りを

 東日本大震災が日本経済に与えた痛手はやはり大きかった。今年1~3月期の国内総生産(GDP)は実質で年率3.7%減少し、踊り場に入った昨年10~12月期から2四半期連続のマイナスとなった。

 本来なら日本経済は、米経済の持ち直しを受け、多極化する世界市場に向けて攻勢に出ていたはずだ。その出ばなを震災でくじかれた。

 民間予測では4~6月期もマイナスという。阪神大震災の時には復興需要がスムーズに出てきたが、今回は主に二つの点で事情が異なる。

 まず、東京電力の福島第一原発の事故だ。東電がカバーする首都圏を中心に電力供給の低下により、経済活動への制約が長引くことが避けられない。

 さらに、組み立て型製造業で発達したサプライチェーンと呼ばれる高度に相互依存的な部品供給態勢が、深刻な打撃を被ったことだ。たとえば半導体工場で電子制御用のマイコンがつくれなくなると、それだけで多くの自動車会社の組み立て工場が止まる、という事態だ。

 日本経済が、今後も最高の製品やサービスを世界の様々な市場のニーズと購買力に合わせて提供していくためには、どうしたらいいのか。震災は新たな課題を突きつけた。

 日本が円高を克服して輸出を続けるには、一芸を究めるような高度な製品作りが切り札になる。だが、これは量産効果などを踏まえると製造場所が1カ所に絞られる傾向が強まる。

 震災によるサプライチェーンの分断は、このリスクを顕在化させた。世界の顧客が部品や素材の日本への過度な依存を見直す可能性もある。客離れに至らぬよう、生産拠点の分散などの手を打っていきたい。

 一方、成長戦略としてサービス産業の拡充に期待が集まっている。だが、震災が引き金となった二つの巨大サービス企業のつまずき、すなわち東電の原発事故と、みずほ銀行のシステム障害を考えると、日本の実力を総点検する必要がある。

 独占や寡占に守られた大企業は、私たちが自覚する以上に制度疲労を起こしているのではないか。それが革新や創造の芽を摘んでいないか。とすれば、競争を通じて企業を鍛え直す環境作りが一段と重要になる。

 与謝野馨経済財政相は「日本経済の反発力は十分に強い」と先行きに自信を見せた。だが、自然な反発力に期待するだけでなく、強みと弱みを洗い出し、新たな発想や工夫で未来を切り開く変革力も育みたい。

No comments:

Post a Comment