Saturday, July 9, 2011

09/07 やらせメール 原発の再開に水差す失態だ

(7月9日付・読売社説)

 小手先の策を弄して、原子力発電所の運転再開に“追い風”を吹かせようと考えたのなら、思い違いも甚だしい。
 九州電力が、玄海原発の運転再開へ向けて世論を誘導するため、「やらせメール」工作をしていた問題である。
 6月末、佐賀県民への説明会がテレビ放映された際、再開に賛成するメールを投稿するよう、子会社の社員らに要請していた。
 「一国民の立場」で発電再開に共感を得られる意見をまとめ、自宅のパソコンからメール送信するよう指示した。
 一般の住民を装った「やらせメール」を、組織的に送らせようという意図は明白である。
 文面は「お願い」だが、力関係から、子会社などは「命令」に近いと受け取っただろう。
 副社長をはじめ複数の役員が関与していた。会社ぐるみの疑いが濃厚だ。運転再開に対する県民の意見を公平に聞くという説明会の趣旨が踏みにじられた。
 九電の真部利応としお社長は8日、海江田経済産業相に陳謝したが、信頼の回復は容易ではない。
 九電は、事実の解明を急がねばならない。これまで類似の工作をしていないか、徹底した調査も必要だ。社長の進退問題も含め、経営責任を明確にするべきだ。
 さらに問題なのは、九電が当初、事実を隠したことである。
 発覚前の7月4日、九電の原子力発電本部副本部長は、参考人として呼ばれた鹿児島県議会で、やらせメールを「依頼した事実はない」などと全面否定した。
 国会の質疑で取り上げられた6日、真部社長はようやく記者会見を開いた。自身の関与について「ノーコメント」を連発し、「そんなに大きな問題か?」などと語った。説明すべき立場なのに、あまりに不誠実ではないか。
 福島第一原発の事故を受け、原子力の安全を強調してきた電力業界への風当たりは強まっている。九電の不祥事は、原発に対する不信感を一段と増幅させることになりかねない。
 一方で、電力不足は今後、深刻さを増していく。定期検査を終えた原発の運転再開には、地域住民らの理解が欠かせない。電力各社は経営の透明性を高め、信頼を取り戻す努力を重ねてほしい。
 原発では、トラブル隠しや検査データ改ざんなど、情報開示に関する不祥事が多かった。
 いまだに隠蔽体質から抜け切れていないのではないか。改めて総点検すべきである。
(2011年7月9日01時37分  読売新聞)

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