Friday, July 1, 2011

01/07 余録:「万事良し。財宝に縁あり。商人は利徳倍増。…

 「万事良し。財宝に縁あり。商人は利徳倍増。不信心の輩(やから)は病あるか、口舌ごとあるか、食あたり等あり--」。何かの運勢のようだが、はておみくじか、星占いか……。実はこれ、江戸時代の雑書が記している日曜の吉凶なのである▲平安時代に空海が日本にもたらした七曜は朝廷の暦に記され、大安や仏滅などと同じく日々の吉凶判断に使われた。実用的意味が生じたのは日曜が役人の休日となった明治以降である。曜日そのものはユーラシア大陸の東西で1000年以上の間一日もずれていない▲岡田芳朗さんの「暦のからくり」が紹介する先の書物では、木曜は吉、金曜は凶だが、信心する者は諸事利徳ありというから気にしなくていい。それより、その両日が休日になるという動きの方は暮らしへの影響が大きい▲夏の節電対策として自動車産業が全国一斉導入する土・日曜から木・金曜への休日の振り替えが始まった。電力需要の多い平日に休み、供給に余裕のある土日に操業して電力不足をしのぐ取り組みだ。これで部品メーカーも含む全国約60万人の1週間が様変わりする▲夫婦や子供の休日がばらばらになる家庭には「吉」とはいえぬ節電休日だ。企業城下町では保育所の土日受け入れや交通機関の休日ダイヤの入れ替えも行われる。また休日の混雑が分散する小売業や外食産業は全体の売り上げ増を期待して「吉」の卦(け)を見込んでいる▲裾野の広い自動車産業でのこの七曜異変、吉凶さまざまな余波が多方面に及びそうだ。ただ不測の大規模停電という最悪の凶事を避けるには、七曜伝来以来の試みもこれまた仕方がないというべきか。
毎日新聞 2011年7月1日 東京朝刊

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