Friday, July 1, 2011

01/07 編集手帳 - しゃにむに居座りたいほど、首相の椅子とは座り心地の良いものなのだろうか


7月1日付

 初夏、ホトトギスがキョキョキョと鳴く。「てっぺん欠けたか」「特許許可局」…日本人はその声を、さまざまに聞きなしてきた。“新説”を『読売歌壇』より。〈聴きすに特許許可局とは鳴かでドッキョコリタカ独居懲リタカ〉(板坂寿一)◆選者、小池光さんの評に「鳥は変わらず、人の耳が変わる」とある。2年前に掲載された一首だが、発表された2010年国勢調査の集計を見ると、いよいよそう聞こえてきそうである◆一人暮らしの世帯が31・2%と3割を超え、夫婦と子供の世帯(28・7%)を初めて上回った。少子高齢化の落とす影が、また少し濃くなったようである◆子育て支援も一項目に含む「社会保障と税の一体改革」政府・与党案がきのう決まったが、政権の金看板に据えた改革のはずなのに、菅首相は閣内からの反対論を恐れて閣議決定を見送るという。計略のつもりであったにせよ、退陣を表明した首相の求心力とはこんなものだろう◆しゃにむに居座りたいほど、首相の椅子とは座り心地の良いものなのだろうか。やがてせみの声が「ツクヅクオイシイ」と答えてくれそうな気がする。
(2011年7月1日01時22分  読売新聞)

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