菅首相は会見で「私が知った事実関係で情報を表に出さないようにするとか、隠すように言ったことは何一つない」と強調したが、情報公開に関する日本政府の姿勢には批判的な視点が多い。
◇「データ今も過小評価」
米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は「データは現在も過小評価されていないのか。今回のレベル引き上げは、こういった点について新たな疑問を投げかけた」と指摘。韓国のハンギョレ新聞(同)も「日本はチェルノブイリ原発に次ぐ事故と分かっていながら、レベルを低めに発表していたのではないかという疑惑も出ている」と伝えた。
約2300万人という人口規模からは世界でも突出した額となる130億円の義援金が集まった台湾でも、原発事故では日本への不信感が出ている。台湾紙・経済日報は12日の社説で、日本側が周辺国・地域との情報共有に積極的になるよう共同歩調で圧力をかける必要性を説いた。国際原子力機関(IAEA)のあるウィーンでも、外交筋や専門家から「事故は安定に向かっていると聞いてきただけに違和感がある」という声が出た。
一方、シンガポールのテレビ「チャンネル・ニュース・アジア」は、「(レベル5とした)当初の発表は重大性を把握していなかったのではないか」という専門家の見方と同時に、「福島の事故は格納容器内で起きており、チェルノブイリとは異なる」と説明した。
◇レベル7「行き過ぎ」の見方も
チェルノブイリ事故とは違うという指摘は他国でも見られる。
英ガーディアン紙(電子版)は「チェルノブイリ原発事故は、爆発が起きた上、格納容器が無かった。チェルノブイリ事故と同じレベルに引き上げたのは行き過ぎだ」という米サンディエゴ州立大の専門家、ムラリー・ジェネックス氏の見方を紹介。韓国・聯合ニュースもチェルノブイリ事故と違って直接的な死者がまだ出ていないなどと相違点を列挙した。
また、ロシア科学アカデミー・原子力エネルギー安全発展問題研究所のアルチュニャン副所長は12日、ノーボスチ通信に「(レベル引き上げは)専門家が前から知っていた事実を確認したものだ」と話す一方で、「(レベル7の)判断には時間がかかる」と日本の対応に理解を示した。放射性物質による汚染についても、副所長は「レベル引き上げでロシアを脅かすものは何もない」と述べた。
◇「東京は平穏だ」
中国でも中央テレビが「放射性物質の放出量はチェルノブイリの10分の1」と強調しながら、「レベルは上がっても影響は数十キロの範囲に限られる」とする専門家の見方を紹介。原発建設に積極的なインドでは、プラサード駐日大使がインドのテレビ各局に「東京は平穏だ。レベル7になったのは、過去1カ月間の放射性物質排出量からの判断だ」と述べ、国民に冷静な対応を求めた。
ただ、事故収束の見通しが立たないことへの不安感は根強い。韓国・聯合ニュースは、強い余震が続き、放射性物質の放出が止まっていないことから「(チェルノブイリと)どちらが深刻か判断するのは容易ではない」と指摘した。
毎日新聞 2011年4月12日 21時01分
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