........ 部品不足で生産停止も
東日本大震災の発生から1か月近くがたち、日本経済への様々な影響が表面化している。被災地では企業の生産や交通網、小売店の営業などが少しずつ元に戻りつつあるが、処理が長引く原発事故や深刻な電力不足が、今後も経済全体に悪影響を与えるのは確実だ。生産の停滞や消費の冷え込みが続けば、日本の景気が一気に下降局面に向かう恐れもある。
宮城県石巻市の精密部品メーカー、堀尾製作所は地震で生産が止まった。国内従業員は50人ほどで、自動車用のオーディオ部品を大手部品メーカーなどに納めている。中国ではDVDのデジタル情報を読み取る部品を作り、世界シェア(占有率)が2~3割に達する。
石巻の工場は3月24日に生産を再開したが、今月7日に余震が起き、直後から堀尾正彦社長の携帯電話に取引先から相次ぎ電話が入った。同社の動きが幅広いメーカーに波及するからだ。堀尾社長は「今後もフル稼働できる」と説明する。
「早く生産を始めないと他の地域に顧客を奪われる」との危機感から、被災地の企業は復旧を急いでいる。東北経済産業局が8日時点で青森、岩手、宮城、福島の主な製造業百数十社に聞いたところ、約半数が操業を再開した。
大手では、トヨタ自動車が8日、グループのセントラル自動車宮城工場(宮城県大衡村)と関東自動車工業岩手工場(岩手県金ヶ崎町)を今月18日に再稼働すると発表した。日産自動車のいわき工場(福島県いわき市)も18日から操業を再開する。日立製作所の日立事業所(茨城県日立市)も3月末に復旧した。
ただ、生産の再開はまだ手探りだ。
特に約3万点の部品を使う自動車は、一つでも部品が欠けると生産ができなくなる。自動車用半導体(マイコン)で世界シェア4割を握るルネサスエレクトロニクスの主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)の操業が7月まで止まる見込みで、「在庫がなくなれば再び自動車各社の操業が止まる」(業界関係者)とささやかれる。
電機でも、ソニーが原材料や部品の不足で国内や海外工場の一部生産ラインを停止。4月下旬と5月下旬に発売予定だったホームシアターシステムの発売日が未定となった。
部品に加え、首都圏などでは電力も足りない。ブレーキ大手の曙ブレーキ工業は3月中旬、工程が止まれば型に流し込む金属が固まってしまうため、計画停電の対象になった群馬県館林市の鋳物工場を全休にし、代わりに休日に操業した。
東京電力の計画停電はひとまず打ち切られたが、夏場の電力不足はさらに深刻となる見込みで、大企業は25%、中小企業は20%の節電が求められる。
日本自動車工業会は、自動車や鉄鋼、化学などの業界ごとに輪番で工場の停止日を決める「輪番休業」を日本経団連などに提案する方向だ。ただ、業界や企業ごとに電力の利用状況などが異なり、調整は難航必至だ。生産への打撃が広がれば、工場を海外に移す動きが加速する恐れもある。
一方、震災の影響は日本製部品を使う海外企業にも及んでいる。米フォード・モーターは今月4日から1週間、米ケンタッキー州の工場で大型車の生産を止めた。クライスラーも、カナダ・オンタリオ州にある工場とメキシコ工場の2か所で残業を取りやめた。
米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)2」も小型電池や高精細画面用のガラスが日本製とみられ、今後、部品の確保が困難になるとの見方が出ている。
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