原発事故の深刻度を示すINESの評価は各国の原子力監督官庁が行い、国際原子力機関(IAEA)に報告する。
日本では原子力安全・保安院が担当する。レベル5以上の大きな事故では、大気に放出された放射性物質の量が重要な判断基準となる。
保安院は先月18日、レベル5との暫定評価を発表したが、周辺の放射線量の高さや、世界に広がった放射性物質の拡散量などから、国内外の専門家からは「6以上ではないか」との指摘が相次いでいた。
チェルノブイリ事故では10日間で約520万テラ・ベクレルもの放射性物質が大気に放出された。事故後に福島第一原発から放出された放射性物質の量はチェルノブイリの1割程度だが、世界の原子力事故の中では極端に大きい。レベル5の米スリーマイル島原発事故では、周辺に降下した放射性物質の多くを占めたヨウ素131の量が0・6テラ・ベクレルだった。
しかも、福島第一原発では、海にも多量の放射性物質が流出している。作業が難航しており、数か月、1年と長期化すれば、放出量はさらに増える。
忘れてはならないのは、INESのレベルは単なる数字ではなく、健康と環境への影響の程度を意味していることだ。がんや白血病の発生率、土壌汚染など、注意深く見守っていく必要がある。国際的なイメージにも大きな影響を与えるだろう。(科学部 笹沢教一)
(2011年4月12日 読売新聞)
No comments:
Post a Comment